羊文学×和楽器による一夜限りのステージ 高輪の地に新たな文明の灯をともした『開門音楽祭』

 2026年、東京・高輪。かつて日本初の鉄道が開業し、海上に線路を敷設するために「高輪築堤」が築かれたこの地に、「TAKANAWA GATEWAY CITY」が姿を現した。その中枢に誕生した「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」は、「100年先へ文化をつなぐ」をミッションに活動する、文化の実験的ミュージアムである。館名の「MoN」には、新しい自分と出会うための「門」、そして未来を考え創造するための「問(問い)」という二つの意味が込められている。

 この歴史的な開門を祝うべく、5月19日から22日の4日間にわたり開催された『開門音楽祭|KAIMoN Music Festival – Open the MoN –』(企画制作協力:J-WAVE)は、現代音楽と日本の伝統表現が交差する、新しいライブ体験を提示するフェスティバルである。その初日を飾ったのが、世界を舞台に躍進を続ける羊文学である。和楽器編成を迎え、一夜限りのステージを披露した。

 会場となったのは、ステージ全面にLEDを配した最新鋭のシアター空間「Box1000」。音響・照明・映像がリアルタイムに連動する空間は、まさに「視覚化された音」を体現していた。開演とともに浮世絵の映像が流れ、高輪の地が常に発展と発見の入り口であったと語られる。「ここは過去と未来の時を結ぶ、新しい文明の入り口となる。100年先へ文化を繋ぐ、唯一無二の祝祭の門が、今開かれる!開門音楽祭!」とナレーションが響くと、会場は祝祭の空気で満たされた。

 ステージ上手から、和太鼓、津軽三味線、尺八、笙、二十五絃箏の順に、後ろ上段に並び、和楽器の雅な音色に、祭は誘われてゆく。地下会場特有の密閉感もあり、和楽器の乾いた響きが、心地よく耳に届く。

 1曲目「そのとき」のイントロアルペジオを、二十五絃箏が伸びやかに奏でる。塩塚モエカ(Vo/Gt)の声に河西ゆりか(Ba)のコーラスが重なると、海辺へ誘われるような感覚に包まれた。それは、かつて海上に線路が走っていたという高輪の歴史と、音楽が深くリンクした瞬間であった。やがてドラムと和太鼓が重なり合った時の圧倒的な音圧。それでいて、それぞれの楽器の輪郭がしっかりと聴こえる音質の良さ。1曲目にしてすでに、Box1000が素晴らしい会場であることを確信させてくれた。

 続いてバンドのみの演奏にうつり、「マヨイガ」。〈世界を愛してください〉という祈りのような歌声が会場を包んでいく。「Feel」では、観客が一斉にハンズアップ。塩塚の歌声は、力強さのなかにリスナーが自身の感情を投影できるような「余白」があるところが魅力だ。その後、久しぶりの披露となった「ワンダー」のイントロが流れると、会場からは歓喜の空気が溢れ出す。レインボーのライティングにも心踊る。「声」では命の輪廻が描かれ、まさに過去と未来の交差する祝祭に相応しい選曲であった。

塩塚モエカ
河西ゆりか
YUNA

 河西が「今日が開門音楽祭の1日目なんですよ。結構挑戦的なイベントなので、無事迎えられたことを嬉しく思います」と語ると塩塚が「次は私たちの大切な曲です」と紹介し、「mother」へ。上部に細かく整列した照明が、木漏れ日のような光のカーテンを作り出し、幻想的な景色の中、メンバーの笑顔が光った。「OOPARTS」では、〈地球はオーパーツ 100億年の夢〉〈未来はチクタクと チクタクと 迫る〉という歌詞が響き、ここでも過去と未来に思いを馳せる。曲の終盤、照明が激しく点滅する空間の中、和楽器隊が再び姿を現し、「光るとき」へ。アニメ『平家物語』のOPテーマでもあるこの楽曲が、和楽器との共演で鳴り響く光景は実に見事であった。和楽器隊が曲の力を軽やかに引き出し、祝祭感を高めていた。

 続くMCで、「すごいですね、門が開きましたね」と塩塚は感慨深げに語った。「和楽器とのコラボレーションが今日の醍醐味なんですよ」とし、個性豊かな和楽器奏者たちを紹介した。

和太鼓・音間大誠:1960年代以降ドラムセットのように配置されるようになったというコメントに、塩塚は「ロックの盛り上がりの時期かな?」と反応。

津軽三味線・小山豊:激しいリズムと大きな音が特徴。河西は「小山さんと、モエカと私で話し合ってアレンジや曲を決めました」と制作の裏側を明かした。

尺八・瀧北榮山:筒抜けの竹という構造ながら、吹く人の呼吸まで音になる不思議な楽器。河西は「歌を歌うように吹かれていて、情熱やニュアンスが伝わってくる」と称賛した。

笙・大塚惇平:平安貴族の装束で登場。1300年以上前から伝わる楽器であり、「鳳凰の鳴き声、あるいは天から差し込む光を表す音」とコメント。

二十五絃箏・山本亜美:製作35周年を迎えた、通常の倍の糸を持つ楽器。河西は「小学校の時に琴をやったけれど、こんなに大きい琴は見たことがなかった」と驚いた。

 この日は彼らに加え、元CHAIのYUNAもドラムで参加し、万全の布陣でステージを支えた。塩塚は「和楽器とバンドの音がこんなに合うとは。せっかく日本生まれ日本育ちなので、これからもっと色々一緒にできたらいいなと思いました」と、新たな可能性への興奮を語った。

 ラストを飾ったのは、「TAKANAWA GATEWAY CITY」のまちびらきに合わせて制作された「未来地図2025」。和太鼓が楽曲全体を鼓舞し、琴が歌うようにメロディを彩り、三味線が疾走感を加え、尺八が祝祭のファンファーレのように鳴り響く。さらに笙の音が、ある時は列車の汽笛のように、またある時は鳥の歌声のように聴こえ、「この街は、キミの羽根になる」をテーマにした未来体験シアターの映像イメージと重なり合い、深い感動を覚えた。この高輪の街から、これからいくつもの希望が羽ばたいていくのだろう。

 終演後、塩塚は「開門おめでとう!」と門を開けるポーズを決めてステージを後にした。 過去と未来を結び、高輪の地に新たな文明の灯をともした『開門音楽祭』。それは間違いなく、時代に深く刻まれる特別な祝祭であった。

■羊文学リリース情報
New Single「Dogs」(Netflixシリーズ「九条の大罪」主題歌)
配信ページ:https://fcls.lnk.to/Dogs

■羊文学公演情報
『羊文学 TOUR 2026 “すーーーはーーー”』

2026年9月4日(金)新潟・新潟テルサ
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:FOB新潟 025-229-5000 https://www.fobkikaku.co.jp/

2026年9月6日(日)宮城・仙台サンプラザホール
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:ノースロードミュージック 022-256-1000  https://www.north-road.co.jp/

2026年9月11日(金)
京都・ロームシアター京都
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:清水音泉 06-6357-3666  https://www.shimizuonsen.com/

2026年9月13日(日)
愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:ジェイルハウス 052-936-6041  https://www.jailhouse.jp/

2026年9月20日(日)福岡・福岡サンパレス
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:キョードー西日本  0570-09-2424  https://www.kyodo-west.co.jp/

2026年9月21日(月・祝)岡山・岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:YUMEBANCHI(岡山)  086-231-3531  https://www.yumebanchi.jp/

2026年9月26日(土)石川 金沢本多の森 北電ホール
OPEN 17:00 START 18:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:FOB金沢 076-232-2424  https://www.fobkikaku.co.jp/

2026年9月28日(月)大阪・フェスティバルホール
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:清水音泉 06-6357-3666  https://www.shimizuonsen.com/

2026年10月1日(木)北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥7,500
問い合わせ先:SMASH EAST  011-261-5569  https://www.smash-jpn.com/

2026年11月10日(火)東京・国立代々木競技場 第一体育館
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥8,800
問い合わせ先:SMASH  03-3444-6751  https://www.smash-jpn.com/

2026年11月11日(水)東京・国立代々木競技場 第一体育館
OPEN 18:00 START 19:00
指定席 :¥8,800
問い合わせ先:SMASH  03-3444-6751  https://www.smash-jpn.com/

【チケット情報】
チケット代:全席指定:¥7,500(税込)
国立代々木競技場 第一体育館公演チケット代:全席指定:¥8,800(税込)

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