go!go!vanillas「フォーリン」が巧妙に描く男女の“思い違い” 人生の機微を鮮やかに鳴らすサウンドアプローチを解剖
go!go!vanillas(以下、バニラズ)が前作『SCARY MONSTERS EP』から約8カ月ぶりとなるニューデジタルシングル「フォーリン」を5月13日にリリースした。4月29日に行われた『go!go!vanillas SCARY MONSTERS TOUR 2025-2026』ファイナルの名古屋公演で初披露された同曲は、昨年からスタートした全国ホール11公演と、今年のアリーナ3公演に及ぶ自己最大規模のツアーの過程で得た実感が確実に反映されている。特に鍵盤やホーン隊を擁した“バニラズ9”で展開したアリーナ編は、曲の彩りを超えて、鍵盤やホーンリフが立体的に曲そのものの世界観を現出するダイナミズムがあり、明らかにこの「フォーリン」の着想に活かされている。
“二つの視点”が絡み合う「フォーリン」の仕掛け
生身の人間が時に同じ目標に向かって疾走し、時にはぶつかり合い、また抱擁するような演奏のダイナミズムが「フォーリン」の骨組みを決定しているとしたら、歌われている内容はどうか。ご存知の通り、バニラズは「ツインズ」「12:25」「サクラサク」などの日常系、「ラッキースター」のような一目惚れ、「Do You Wanna」「アダムとイヴ」などの刹那や禁断の愛など、数多くのラブソングを送り出してきた。今回の「フォーリン」もラブソングではあるけれど、男性と女性の気持ちの温度差が描かれている。
女性に〈顔も見たくない〉と冷たくあしらわれるほど、〈意固地なんてのは子供の頃からの本能〉などと開き直る。それだけなら何かをきっかけに仲直りもあり得そうだが、相互理解が難しそうだと思える決定打は、2人が見ている空の色が正反対であることが判明するくだりだ。男性は〈2人でいる魔法を/解かないでご覧 見渡す限り青い空だ〉と楽観しているのに、女性にとっては〈1人で見る夢を 覚まさないで/ご覧 見渡す限り黒い空だ〉と、拒否というよりこれは人生観の大いなる相違では? という描写が出現する。このあたりは同曲のデジタルリリースに伴うプリセーブ特典の牧達弥(Vo/Gt)のオーディオライナーノーツの中で、歌詞のヒントになったドラマについて語られているので、このサブテキストを得た人は社会的とも言える男女間の視点の差異に納得したと思う。ネタバラシは避けるが、男は男らしく、女は女らしくという、今もどこかに残る家父長的な男女の役割に、異議を呈する物語が一つの背景にあるとも解釈できるのでは? と言っておこう。
またタイトルをカタカナの“フォーリン”にすることで、幸せな“Fall in”も、理解されない落ち込みの“Falling”も包摂できる二面性を持たせることに成功している。とはいえ、2人の物語はアンハッピーエンドなのか? といわれるとそれもわからない。ラストに第三者視点で2人の行く末を案じ、〈まだ 間に合うはず〉とくくる展開は、まるで映画を鑑賞し終えた私たちが何を思い、どう動くか? と考える余地を残してくれる。加えて、この男性と女性のセリフと内心が交互に登場する手法は、近いところでは主人公と悪魔が会話する「クロスロオオオード」にも見られるもので、映画や演劇のように聴き手の脳内に映像として立ち上がる効果も牧の得意技と言えるだろう。
感情のすれ違いを際立たせる趣向を凝らしたアレンジ
歌詞のテーマと不可分に基本的にはハッピーでありつつ、賑やかなアレンジがメンタルをジェットコースター級にぶん回す。前出のホーンと鍵盤は全編に登場。歌サビ始まりの背景では、伸びやかに跳躍するホーンが幸福感をともに歌うニュアンス。2サビ前には「平安」でも聴けた花火のSEが、ちょっとおめでたい男のフィロソフィをコミカルに演出している。2Aでは、転がる鍵盤が人生の機微的なスパイスの機能を果たし、いよいよラスサビで女性視点が登場すると、そこまでは少しつんのめりつつも軽快なブレイクビーツで進んできたビートに稲妻めいたロールが加わって、明らかに怒りのテンションへ変化する。この間もホーンリフは継続して生々しい人間の息吹を送り込み続け、そのことがシンプルな構造の曲を、ハラハラドキドキのスペクタルにビルドアップしている。ホーン隊はアリーナライブにも参加した山田丈造(Tp)、曽我部泰紀(Sax)に加え、山田の先輩である後藤篤(Tb)の三管。今回、山田がアレンジに参加していることもホーンの重要性だけでなく、有機的なアレンジに必要不可欠だったのだろう。ほかに鍵盤では、Takumadrops(Key)も参加。ジャジーなエンディングまで、総勢8人でライブさながらに前進する展開は音楽で表現する群像劇のようでもある。
MVは「SHAKE」「平安」「Leyline」に続いて今原電気が監督を務め、シンボリックな“ハート”のキャラクターの挙動や、赤い部屋、赤い糸がコミカルかつ切ない“読後感”を生み出していて、こちらもぜひ楽しんでほしい。
ツアーの先に見出した新たなサウンド感、そしてラブソングの新章。ロックバンドのスタンスを軽やかに更新するバニラズに今後も期待が止まらない。
■リリース情報
go!go!vanillas「フォーリン」
5月13日(水)配信リリース
配信リンク:https://lnk.to/ggv_FallinFalling
go!go!vanillas「フォーリン」特設サイト
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