水平線が希望のバンドである理由 出会いの旅で見つけた新しい自分たち=「ロケンロー」、東京初ワンマンレポ

 田嶋太一(Vo/Gt)、安東瑞登(Vo/Gt)というふたりのボーカル/ソングライターを軸に、UKロック由来のしなやかなギターサウンド、ふと口ずさみたくなるメロディ、4人の声が重なった時のあたたかな余韻を重ねながら、水平線は自分たちのロックンロールを鳴らしてきた。5月8日。この日は、彼らにとって東京での初ワンマン。2026年2月にリリースしたEP『希望の匂い』を携えて渋谷WWWに立った4人は、ここまで歩いてきた喜びと、まだ先へ行きたい悔しさを、そのまま音に変えていた。

 1曲目は「颱」。大げさに煽るような始まりではなかったが、音が鳴った瞬間、会場の空気は一気に引き締まった。続く「フライトレスマン」では、田嶋が「よろしくー!」と声を上げ、「行こうぜ渋谷!」とフロアを煽る。初の東京ワンマンに立つ高揚が、そのひとことに乗っていた。水平線のライブは、爆音で押し切るというより、歌と演奏の熱をじわじわと広げていくタイプだ。曲が進むにつれて、空間は少しずつ熱を帯びていった。

田嶋太一(Vo/Gt)

 「たまらないね!」では、曲が始まると「お手を拝借!」とクラップを促す。腰を揺らしながら歌うふたりの姿に導かれるように、フロアにも手拍子が広がっていく。軽やかでキャッチーなメロディに乗せて、会場の空気が少しずつほぐれていく。楽しくて、少し照れくさくて、でも歌の奥にはふっと胸に残る切なさがある。そんな水平線らしいポップネスが、序盤からWWWを包み込んでいた。

安東瑞登(Vo/Gt)

 最初のMCで安東は、「『旅するロックンロールツアー』の東京公演にお越しいただき、本当にありがとうございます」と挨拶し、「『知らん曲やな』って思っても、新しい曲に出会ってくれたっていうのが僕たちは本当に嬉しい」と語った。知らない曲があってもいい。その人なりの、それぞれの出会い方を肯定する言葉だ。そこから鳴らされた「エンドレスサマー」は、王道のギターロックとしてまっすぐに広がっていく。重厚なドラムから始まった「SUPERSTAR'82」で会場の重心を下げると、「selfish!」では安東の晴れやかなボーカルがフロアを軽く揺らした。

水野龍之介(Ba/Cho)

 中盤の「三月」では、会場の空気が少し静まった。ミディアムバラードならではの余白のなかで、歌と言葉が近い距離で届いてくる。「レディ・バード」ではアコースティックギターの音色がやわらかく響き、「マジックアワー」では安東の歌声が会場を包み込んだ。派手な仕掛けで見せるのではなく、曲ごとに少しずつ景色を変えていく。その自然な流れが、水平線のライブの心地好さでもある。「Downtown」では、水野龍之介(Ba/Cho)のベースラインの気持ちよさに導かれるように、フロアも手を上げて応えた。

川島無限(Dr/Cho)

 後半のMCで、田嶋は6年前に初めて東京でライブをした時のことを振り返った。まだ右も左もわからなかった頃、京都から下北沢THREEのイベントに出演したこと。お客さんは少なかったものの、東京へ行くこと自体が新鮮で、「バンド人生始まったか」と胸を高鳴らせていたこと。そこから地道に続けてきた先に、WWWでのワンマンがある。「ほんまに嬉しいです」――。静かに噛みしめるようなその言葉が、ここまでの時間を何よりも物語っていた。

 そのうえで、田嶋は「ソールドさせたかった」と正直に口にした。ソールドアウトがすべてではない。それでも届かなかったことを、自分たちの今の実力として受け止める。喜びのなかに悔しさがある。感謝のなかに、「まだ先へ行きたい」という欲がある。そして、「今のこの瞬間の俺らを観にきてくれてるお客さんに、俺らは今できるすべてをこのステージで表現したい」と言い切った。きれいごとではない。胸の奥に残った悔しさまで、そのままステージに持ち込む不器用な誠実さが、水平線のロックンロールを一段と切実なものにしていた。

 その言葉を受けて鳴らされた「鋼の太陽」では、田嶋の力強いボーカルがまっすぐに響いた。「Throwback」を挟み、「ロールオーヴァー」では高らかにロックンロールを歌い上げる。どこか懐かしさのある音でありながら、決して古びては聴こえない。4人が今の温度で鳴らしているからこそ、水平線のロックンロールとしてまっすぐ届いていた。

 「三日月」では、安東が「皆さんの声を聞かせてください」と呼びかける。その言葉をきっかけに、フロアから発せられる声が重なっていった。4人のコーラスワークに、観客の声まで加わり、それぞれの胸のなかにあったものが少しずつこぼれていくような感覚だった。

 最後の曲を前に、田嶋は去年の夏に突然父親を亡くしたこと。一方で、バンドとしては少しずつ大きな舞台にも立てるようになってきたこと。複雑な感情が入り混じった一年を振り返り、年末に素直な気持ちを書いた曲だと口にした。「それぞれの景色を浮かべながら聴いてもらえたら」――そう語って始まった「忘年」は、この夜の感情を静かに引き受けるように響いた。喪失も、前進も、出会いも、別れも、全部が同じ歌のなかにあった。

 アンコールでは、新曲「ロケンロー」を披露した。吐き出すような歌い方と、田嶋と安東のツインボーカルの掛け合いがぶつかり合い、終盤の会場にもう一度火をつける。初の東京ワンマンを噛みしめるだけで終わらず、すでに次の曲、次のライブへ向かっているバンドの勢いがそこにはあった。そして、最後は「トーチソング」。激しく燃やし尽くすのではなく、ここまで鳴らしてきた熱を客席へそっと手渡すように、あたたかな音が会場へ広がっていく。東京での初ワンマンは、達成感と余韻、そしてまだ続いていく旅の気配を残して幕を閉じた。

 ひとつの到達を迎えた水平線。この日17曲を通して見えてきたのは、田嶋と安東という2人のボーカル/ソングライターを軸に、バンドとしての表現をさらに広げている現在地だった。『旅するロックンロールツアー』というタイトルの通り、水平線の旅はここからさらに続いていくのだ。

水平線 - ロケンロー (Official Music Video)

■リリース情報
Digital Single『ロケンロー』
5月20日(水)配信

配信URL:https://suiheisen.lnk.to/rocknroll

水平線 オフィシャルサイト:https://suiheisen.fanpla.jp/
X:https://x.com/suisuisuiheisen
Instagram:https://www.instagram.com/suisuisuiheisen/
YouTube:https://www.youtube.com/@suisuisuiheisen
TikTok:https://www.tiktok.com/@suisuisuiheisen

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