エルスウェア紀行 安納想×映像ディレクター 阿部友紀子 “括れない好き”が生んだ「温度と一部」MV秘話
「終わったところから始まる関係には名前がない」(安納)
――「温度と一部」のMVでは四季の流れが描かれているのが印象的です。
阿部:やっぱりエルスウェア紀行の曲を聴くと思い出がよみがえるんですよね。あの日は暖かかったな、雨が降ってたな、桜が咲いてたな、落ち葉があったなとか、「温度と一部」もそうやって誰かと過ごした時間を思い出させてくれる楽曲だなと思って、今回四季の表現は絶対入れたいなというのが始まりでした。ただ、最初は外でそれを撮ろうとしてたんですけど、季節的に冬なのもあって、結構難しくて。それでスタッフのみなさんといろいろ相談して、白ホリのスタジオで撮影したんですけど、完成したときに、安納さんが「絵本の世界みたい」と言ってくれたのがすごく嬉しくて。記憶は時間とともにどんどん薄れていくけど、心のなかにだけはずっと大切に存在する。スタジオという抽象的な場所で四季を演出したからこそ、脳裏にだけ残っている不確かな、だけど鮮やかな記憶の質感を絵本のように表現できたかなと思います。
――安納さんは仕上がりを見てどう感じましたか?
安納:まだ友紀子さんに伝えられていなかったんですけど、「温度と一部」のMVを作ったことで、「ひかりの国」で消化しきれなかったものが消化できた気がしました。「ひかりの国」は抗えない終わりを書いた曲だったけど、「温度と一部」は終わったところから始まる関係をテーマにしてるところがあるんです。終わったところから始まる関係には名前がないと思っていて、たとえば、さっき話してくれた高校が一緒で、3年間仲が良かったけど、今はもう会っていない人。それは一般的には“友達”であり続けるのかもしれないけど、一度終わってる。離婚したあとのふたりは“恋人”でも“夫婦”でもないし、死んでしまった家族との関係は、ずっと家族ではあっても新しい距離感に明確な名前はなくて。うまく言えないんですけど、「終わったら終わり」みたいな感じになっていると思うんです。
――確かに。
安納:でも、たとえ二度と会えなくても、何かの関係が終わったとしても、そのとき好きだった気持ちや温度は褪せないし、終わらないと思う。あの女の子ふたりにしても、MVのなかのような密に連続する時間を過ごすことはもうないかもしれないけど、“好き”の気持ちはそのまま残り続けるんじゃないかなと思いました。
友紀子さんと「好きってなんだろう?」のアンサーとして、「夢を話してほしい」っていうのがあるよね、みたいな話をしたんです。そう思うとき、相手のことをすごく大事に思ってるよねって。自由に受け取ってもらいたいなかでの個人的な解釈ですけど、「ひかりの国」だとふたりはさよならができないまま会えなくなっていて、「またね」というより「いない」に近い絶望があったかもしれない。でも「温度と一部」ではちゃんと「またね」ができていて、「これは終わらないんだな」と思えました。「ひかりの国」のように一度途切れてしまっても、あのふたりはもう一度お互いの夢をはなし合える関係になれるかも、と思えて。それにすごく救われたなって。
阿部:ありがとうございます。嬉しい。
安納:風が吹くみたいいに四季が巡って、離れていくんだけど、でもそれがただ寂しいだけじゃない。
――「温度と一部」のMVもやはり光の表現が美しいですが、どんなことを意識しましたか?
阿部:私は基本的には自然光が大好きで、そのままの自然な光で、自分の思ういちばん美しい角度から切り取ることを大切にしていて。今回はスタジオでの撮影が多かったので、照明部さんや撮影部さん、いろんなスタッフの人が関わってくれて実現できた光でした。やっぱり春夏秋冬で日の感じはちょっと違うなと思うから、光の柔らかさだったり、色味だったりを、一緒にこだわって作っていけたなと思います。おふたりが演奏しているシーンも、真ん中にモチーフの木があるんですけど、木漏れ日がうしろに反射していたり、床に反射していたり、シーンに合わせていろいろな光を作れました。
安納:これまで4人で作ってきたので、今回現場にたくさんの方がいてくださってびっくりしましたし、友紀子さんがあんなに大きい声を出してるのを初めて見ました(笑)。メジャーでやらせてもらうにあたって、これまで一緒に作ってきた友紀子さんと、また新しい環境で一緒にやらせてもらえたのはすごくありがたかったですし、楽しかったです。
――では最後に、阿部さんから今後のエルスウェア紀行に対して期待することを話していただけますか?
阿部:安納さんとトヨシさんが思う音楽をシンプルにやっていってほしいです。おふたりは人柄は変わらないですけど、音楽自体はどんどん新しくなっているというか、チャレンジをしているし、いろんなことを吸収しながら、考えながら進んでいる姿が本当に素敵だなと思っていて。なので、変わらずに変わり続けてほしいですし、一ファンとしても、これからもエルスウェア紀行の音楽を聴くことをずっと楽しみにしています。
安納:友紀子さんと、はじめの年から「年に1~2本撮れたらいいね」という話をしてきて、それができているので、続けられたらいいなと思います。目指す道みたいなものはあって「何をおいても行くべきだ」と思ってしまう瞬間もあるんですけど、「絶対にここまで行きたい」というよりは、聴いたり足を運んでくれている方も含めて「なるべく遠くまでみんなで行きたい」という感覚があるので、これまで大事だったものをこれからも大事にしていきたいです。
■リリース情報
メジャー1st デジタルEP『ghost walk e.p.』
配信中
配信リンク:https://tf.lnk.to/ghost_walk_ep
<収録内容>
M1. 温度と一部
M2. ghost walk Ⅱ
M3. のびやかに地獄へ
M4. For the Unseen
M5. ベッドサイドリップ
■公演情報
『エルスウェア紀行 単独公演 「夢幻飛行2026」』
日時:2026年9月13日(日) 開場 17:00 / 開演 18:00
会場:EX THEATER ROPPONGI
<チケット>
全席指定:¥6,800(税込)
U-22全席指定:¥5,000(税込)
<販売リンク>
・イープラス
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