高中正義は鮮やかに時代を塗り替えるーー国境を超え響く“全肯定のエネルギー”、世界中を熱狂させる力を説く

 今、世界を熱狂させているギタリスト・高中正義が、3月31日のイギリス・ロンドン公演を皮切りに、アメリカ・ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルス、オーストラリア・シドニー、メルボルン、ニュージーランド・オークランドを巡る念願のワールドツアー『高中正義 SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2026』を開催中だ。チケットは全公演ソールドアウト。そのワールドツアーに旅立つ一週間前の3月22日に、東京・NHKホールで『高中正義 TAKANAKA SUPER WORLD LIVE 2026 ”Guitar Breeze -出発前夜”』を行なった。

 まさに壮行ライブ的な意味合いを持つステージだったが、あの夜のNHKホールは単なる壮行会ではなかった。アンコールの幕が下りても、観客のスタンディングオベーションは鳴り止まず、日本のインストゥルメンタルミュージックが、世界標準のポップアートとして完成されていることを、我々ファンが改めて突きつけられた歴史的一夜だったのだ。

NHKホールを南国の楽園に変えた“高中節”の引力

 熱烈なTAKANAKAコールに迎えられ、トレードマークとなった赤いスーツにサングラス、オールバックのヘアスタイルで決めた高中が登場。客席のかつてのギターキッズたちが夢中で聴いた、2ndアルバム『TAKANAKA』(1977年)のジャケット写真のままだ。

 オープニングナンバーは、もはや説明不要の代表曲「BLUE LAGOON」。一音目が放たれた瞬間、ホールの壁が消失し、目の前に果てしない水平線が広がったかのような錯覚に陥る。どこまでもメロディアス。“歌のないシティポップ”として世界中の音楽ファンを熱狂させている“高中節”の代名詞だ。客席からは最初から総立ちで、「ヘイ!」という掛け声も飛び、一曲目からインストゥルメンタルのライブとは思えない熱量で全員が楽しんでいた。だが、一番楽しんでいたのは高中自身だったかもしれない。ベスト的なセットリストでフェンダー・ストラトキャスターを手にステージを動き回りながら弾き、客席を煽る。斉藤ノヴ(Per)、岡沢章(Ba)、宮崎まさひろ(Dr)、井上薫(Key)、髙本りな(Key)、コーラスのAMAZONS(大滝裕子・斉藤久美)のおなじみの鉄壁のバンドの演奏と高中のギターが、ともに“楽園のグルーヴ”を作り上げる。

『高中正義 SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2026』O2 Academy Brixton

 この日は海外からのファンの姿も目立ったが、高橋幸宏が作詞を手がけた「Oh! Tengo Suerte」「トーキョーレギー」と、人気曲を惜しげもなく次々と披露していく。カルロス・サンタナの「哀愁のヨーロッパ」のカバーでは、あのおなじみのフレーズを弾くと大歓声が上がり、むせび泣くようなギターが切なさを連れてくる。そのギターは時に激しく、心地よさと“わびさび”を感じさせてくれる唯一無二の表現者だ。

 満員の客席を見渡し、笑顔で「来週の今日、ロンドンに旅立ちます。僕にとっては冒険の旅という感じで『インディ・ジョーンズ』を思い出します」と『インディ・ジョーンズ』のおなじみのテーマと『スーパーマリオブラザーズ』のテーマを楽しそうに弾くと、大きな拍手が贈られる。サディスティック・ミカ・バンド以来、半世紀ぶりにロンドンへ帰還する自身を鼓舞し、客席はそれを祝福する。

『高中正義 SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2026』O2 Academy Brixton

 「PALM STREET」では客席との掛け合いを楽しみ、ノリノリの「TAJ MAHAL」でもペンライトが揺れる客席の大合唱とギターがハモる。高中作品の中でも特にロックの薫りがする「THUNDER STORM」では、ギターもバンドも迫力ある壮大な音像を作り上げていた。サンバのリズムが心地いい「READY TO FLY」での速弾きはさらに冴えを見せる。ライブはこの時のサウンドへと進化しつつも、高中の音は高中のままだ。本編ラストは「黒船 (嘉永六年六月四日)」。円熟味を帯びながらも瑞々しさと荒々しさを湛えるこのギターの音色が、今、世界を熱狂させているのだと実感した。

 アンコールの「Jumping Take Off」ではサーフボード型のギターを携えて登場し、弾きまくる。そして映画『スマッシング・マシーン』に自身の曲が起用されていることをアナウンスし、ラストは「ファンの方からの贈り物」というニュー・ヤマハSGを手に、名曲「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」を披露。雄大なメロディをじっくりと聴かせるギターで表現し、タッピングやボトルネックなど多彩な奏法でも聴かせた。 いよいよワールドツアーに旅立つ高中とバンドを、会場の全員で見送った。

『高中正義 SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2026』O2 Academy Brixton

 それにしても、なぜ73歳のギタリストが世界中を熱狂させているのか。なぜ彼のギターは、国境も世代も軽々と飛び越え、人々の心を揺さぶるのか——。

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