欅坂46「サイレントマジョリティー」発売から10年 今もなお色褪せないメッセージ、社会現象化した楽曲の功績

 欅坂46のデビューシングル『サイレントマジョリティー』のリリースから4月6日で10年を迎えた。

欅坂46 『サイレントマジョリティー』

 表題曲「サイレントマジョリティー」は2016年のアイドルシーンにおいて、紛れもなくひとつの転換点となった楽曲だった。それは単に、乃木坂46に続く坂道シリーズの新グループによるデビュー曲だったからではない。フォークソング的な手触りを持つメロディライン、隊列行動を思わせる鋭利なダンス、そして当時の若い世代が抱えていた閉塞感や息苦しさをすくい上げるような歌詞。そのすべてが高いレベルで結びつき、アイドルソングの枠組みそのものを押し広げた一曲だったからだ。

 当時学生だった筆者もまた、「サイレントマジョリティー」が世に出たときの衝撃をよく覚えている。アイドルのデビュー曲には、グループの方向性や魅力をわかりやすく示し、広く存在を印象づける役割がある。その点で「サイレントマジョリティー」が異色だったのは、親しみやすさや華やかさではなく、強いメッセージと張り詰めた緊張感によってグループの輪郭を打ち出したことだ。

 楽曲として大きかったのは、メッセージ性の強い歌詞と、ポップスとしての聴きやすさが高い次元で両立していたことにある。社会への問いかけを含んだ歌詞は、ともすれば堅く、説教臭く響いてしまうこともある。しかし、「サイレントマジョリティー」は、アコースティックギターを基調としたシンプルな音像で言葉をまっすぐ届けながら、〈大人たちに支配されるな〉〈君は君らしく生きて行く自由があるんだ〉のような強いメッセージを打ち出し、当時の若い世代が抱えていた息苦しさや反発心に寄り添っていた。同時に多くの人に届くキャッチーさを備えていたことが、この曲を際立たせていたのである。

 さらに、「サイレントマジョリティー」を語るうえで欠かせないのが、ダンスとフォーメーションの強さである。揃った動きの美しさはもちろんだが、それ以上に、集団で動くことによる緊張感や息苦しさまでも表現していた点が大きい。振付は単なる見せ場ではなく、楽曲のテーマを身体で伝える役割を果たしていた。だからこそ、この曲のパフォーマンスは唯一無二のものとして受け止められたのだろう。その後、アイドルシーンでは振付やフォーメーションを作品の一部として語る視点がより広がっていったが、その流れを加速させた一曲としても「サイレントマジョリティー」の存在は大きかった。

 後続のアイドル楽曲への影響という意味でも、「サイレントマジョリティー」が残したものは大きかった。アイドルソングといえば、明るさや親しみやすさが重視されるイメージが強い。だが、この曲や欅坂46のスタンスはそうした王道とは異なるアプローチでも、多くの人に届くことを示した。重さのあるテーマや鋭いメッセージ、シリアスな集団表現を持ちながら、それでもポップソングとして広く受け入れられたのである。

 「サイレントマジョリティー」が今も特別な一曲として残り続けているのは、欅坂46というグループの方向性を鮮烈に示すと同時に、その時代の閉塞感や反発心までもすくい上げてみせたからだ。その強さがあったからこそ、この曲は単なるデビュー曲にとどまらず、2010年代のアイドルシーンを語るうえで欠かせない作品になった。ひとつのグループの始まりであると同時に、アイドルソングの可能性を大きく広げた一曲だったのである。

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