『攻殻機動隊』、伝統工芸、エイフェックス・ツイン……TechonoByobuが文化を越境して繋ぐアート 弘石雅和×佐藤大対談
“アニメグッズ”では終わらない“本物感”へのこだわり
——今回のテクノ屏風第2弾では、原作コミックの素子とフチコマをあしらった「魂魄」と、押井守監督の劇場版『攻殻機動隊』のキービジュアルをあしらった「義体」に、それぞれ洋金箔と錫箔を使った計4種類が用意されています。
弘石:「Electronic Fan Girl」の時は「いつかあのジャケットでアート作品を」という思いがずっとあって、もし屏風にするんだったらこうだ、というイメージがすでに固まっていたんです。でも今回に関しては、いろんなご縁があって、全部で4種類作ることになって。実際に屏風にするにあたってどんな絵がいいのか、それこそ大ちゃんに「こんなのはどうですか?」と聞いてみたり。
佐藤:といっても、僕がサジェスチョンしたというよりは『攻殻機動隊』のファンだったらどんなものが欲しいのか、そこを第一に考え、話を聞いていた感じでしたね。それこそオタクとして(笑)、こっちの方がいいかも? とか。
弘石:実際、今回の「魂魄」と「義体」以外にもいろんなパターンで試行錯誤しています。とはいえ屏風って、真ん中に折り目があるものなので、絵柄を左右のどちらかに寄せなければいけないっていう制約があるんですね。それを踏まえたうえでデザインしてみたら、バシッとハマったのがこの2つだったんですよね。
——あと今回は屏風のほかに、アナログレコードサイズのHACモジュールという新しいシリーズが4種類発売されます。
弘石:前回の「Electronic Fan Girl」を出した後、いろんなリアクションをいただいたんです。それこそ「中学生の時からYMOが好きです」「YMOを30年聴き続けています」みたいな熱いリアクションをいただいたんですけど、その一方で「私が今住んでいる環境では、屏風は置けないんです」という人もやっぱりいらっしゃったんですね。で、そうした要望にも応えようと思ってつくったのが、このHACモジュールのシリーズで。
佐藤:ただHACモジュールで「笑い男マーク(ラッフィング・マン)」を使う、という話を聞いたときに、それは大丈夫なの? とは思ったんですよね。「笑い男マーク」をデザインしたポール・ニコルソン(イギリス出身のデザイナー/アーティスト。ジョーイ・ベルトラムやLOCASTらのレコードジャケットを手がけたほか、ファッションデザイナーとしても活躍)はエイフェックス・ツインのマークを手がけたデザイナーですけど、もともと僕の知り合いで。彼は当時、PROTOTYPE21っていう洋服のブランドもやっていて、そこの服が大好きだったんですよ。で、(服の)タグに住所が書いてあったから、ロンドンに行ったときにそこに遊びに行ったことがあって。
弘石:そんなことがあったんだ!
佐藤:そうそう。ピンポーンって(笑)。ポールはめちゃくちゃアニメが好きで、その縁で『カウボーイ・ビバップ』のリミックス・アルバム(『COWBOY BEBOP remixies "music for freelance"』)のときに、ジャケットデザインをお願いしたりしてたんです。
——あれもポールのデザインなんですね。
佐藤:そういうつながりがもともとあって。で、僕が脚本で参加した『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の時に、「笑い男マーク」をどうするかって話をしていたときに、神山(健治)監督が僕のパソコンに貼ってあったエイフェックス・ツインのロゴシールを見て、「こういう感じがいい」と。じゃあ、ちょっと聞いてみますよって言って、ポールにメールしたら「『攻殻機動隊』は大好き!」って、二つ返事で決まったんですよね。
弘石:じつはその話を、すでに大ちゃんから聞いてたんだよね。で、今回HACモジュールの「模倣」のデザインを担当してくれたWEIRDCOREは——最近のエイフェックス・ツインはもちろん、ArcaとかRadioheadのMVを作ったクリエイターですけど、彼とは以前、ロンドンに住んでいた頃からの知り合いなんです。それこそ彼がクラブでVJをやってるところに遊びに行って、一緒にビールを飲んだりする間柄で。彼も『攻殻機動隊』が好きだって話を聞いていたから、もうこれはWEIRDCOREに頼むしかないな、って。
佐藤:それを聞いて、じゃあ全然大丈夫じゃん、っていう(笑)。
——余計な心配をしていたわけですね(笑)。
佐藤 例えば、YMOはいいんですよ。あのファーストアルバムのジャケットが屏風になれば、それは十分アートだと思うんだけど、マンガやアニメの絵をポンっと乗せるだけだと、それはアニメグッズになっちゃうよ、と。そこをすごく心配していたんです。しかもそこそこ高級なアニメグッズがたくさんある今の状況において、そこと差別化を図るとすれば、士郎さんなり押井さん、川井(憲次)さんなりの「本物感」が必要だと。
——「魂魄」には士郎さんが、「義体」には押井さんがアーティストとしてクレジットされてますね。あと「義体」の方には、川井さんが書かれた歌詞も入っています。
佐藤:それと同じように、HACモジュールの「模倣」には、ポールとWEIRDCOREがクレジットされると聞いて、それなら十分に「本物」だろうと思ったんですね。……って今、話しながら思い出したんですけど、「Super Mario Land」の時も、似たような心配をしてた記憶がある(笑)。
弘石:たしかに(笑)。
佐藤:「宮本(茂)さんに話をしないとダメなんだ!」みたいな。
弘石:MVも、マリオの着ぐるみとラッパーがメリーゴーラウンドの前で歌ってるっていうMVで、偽物っぽかったんだよね。これ、本当に任天堂に許可を取ってるの? みたいな。
佐藤:それを日本で出すとなったら、ちゃんと本物にしないとダメだって主張して(笑)。しかも当時、弘石さんはアルファレコードにいたんだけど、アルファレコードには「G.M.O.レーベル(1986年にアルファレコード内に設立されたゲーム音楽専門レーベル。任天堂作品を扱った「ファミコン・ミュージック」や「ナムコ・ゲーム・ミュージック」「コナミ・ゲーム・ミュージック」など、メーカー別にゲームのサウンドトラックを収録したアルバムを多数世に送り出した)」っていう——それこそ細野(晴臣)さんの『SUPER XEVIOUS』を出した伝説的なレーベルがあって。そこから出せば行ける! っていう。
弘石:当時、GMOレーベルは休眠状態になってて、アルファレコードの社員も存在を知らなかったんですよ。だから「使っていいですか?」って聞いたら「いいんじゃない」って、誰も気にしてない。でも僕たちにとってはそこが大事だったんです。今回の『攻殻機動隊』にしても同じで。
佐藤:やっぱり、ポールとWEIRDCOREのふたりが並ぶって、エイフェックス・ツインのファンとしてはめちゃくちゃ熱い(笑)。しかもやってるのが『攻殻機動隊』っていうところがまた、イギリスのデザインチーム史的にも震えるところなんです。
弘石:それで言うと、今回もうひとつ新しい試みとして、屏風にAR技術を対応させていて。これは「攻殻機動隊展」の会場だけの仕掛けなんですけど、屏風をスマホを通して見ると「魂魄」の方は桜の花びらが散って、「義体」はサイバー空間に入るような、そういう仕掛けがしてあるんです。で、このARの技術を手がけたのがKALKULというチームで。彼らは、エイフェックス・ツインの最新12インチでも、ジャケットを開くとエイフェックス・ツインのサイバー空間に入れるような、そういうARを作っていて。だから今回、彼らに頼もうというところもあったんです。要するに、軸は音楽にあるんですよ、と。
——先ほど、会場で完成品をご覧いただいたんですが、佐藤さんは実際に見てみて、いかがでしたか?
佐藤:やっぱり大きさってすごいな、と思いました。打ち合わせ自体はずっとリモートだったので、「こんな感じになります」っていうのもすべてモニター越しだったんです。だから完成品を見た時の圧というか、受ける印象は圧倒的でしたね。これはもうアニメグッズじゃないな、というか。それがまず第一印象としてありました。しかも実際に現物を見ると、ちょっとセル画っぽいツルンとした質感があって。昔、東映アニメーションで売ってたアニメのセル画を思い出したというか、セルの厚塗りみたいな雰囲気があって、それも面白かった。
弘石:大ちゃんがそう感じたのは、たぶん今回の屏風に「カサネグラフィカ(UVインクを重ねて印刷することで、視覚だけでなく、実際に触って厚みを感じることができる技法)」というプリント技法を使ってるからかもしれない。京都にサンエムカラー(1985年に設立された京都の印刷会社。展覧会の図録や写真集の印刷のほか、絵画や古文書の複製、アーティストとの共同制作にも積極的に取り組み、美術印刷のために開発した「燦・エクセル・アート」では京都中小企業優秀技術賞を受賞した)という老舗の印刷会社さんがあるんですけど、そこが開発した技術で、インクを何層にも重ねることで、立体的な質感を表現しているんです。だからよく見ると、出てるところが出ていて厚みがある。数値的には、一番厚いところで普通の印刷の1600倍厚いらしくて。だから、ちょっとそういうふうに見えるのかもしれない。
佐藤:結果的に、すごく物質感があるものに仕上がっていて。それはやっぱり、展示している本物を、実際に見てもらった方がわかってもらえるかなと思いました。ほかにも角度によって字や紋様が浮かんで見えたり、ぜひデザインも楽しんでほしいですし。パソコンや携帯のモニターで見るだけじゃない楽しさを体験してもらえたらいいなと思います。
弘石:ちょうど「攻殻機動隊展」が4月5日まで開催されていて、そこで世界先行発売をしています。会場では、さきほどお話ししたAR技術も体験できますし、展覧会を楽しむと同時にテクノ屏風も見ていただければと思います。
■イベント情報
『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』<開催終了>
会期:2026年1月30日(金)〜4月5日(日)
会場:TOKYO NODE GALLERY A/B/C(虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45F)
住所:東京都港区虎ノ門2-6-2
主催:攻殻機動隊展Ghost and the Shell製作委員会(株式会社講談社、森ビル株式会社、KDDI株式会社、株式会社プロダクション・アイジー、株式会社パルコ)
公式サイト:https://www.tokyonode.jp/sp/exhibition-ghostintheshell/
◾️TechnoByobu『TB-02 : The Ghost in the Shell』商品情報
https://technobyobu.jp/
『The Ghost in the Shell 魂魄(Konpaku)』
商品番号:TB-02-KP
アーティスト:士郎 正宗
『Ghost in the Shell 義体(Gitai)』
商品番号:TB-02-GT
アーティスト:押井 守
発売日:2026年1月30日(金)
価格:1,100,000円(税込)
サイズ:五尺二曲(縦:約1500mm × 横:約1400mm)
重量:約4kg
材質:洋金箔(大箔散らし)紙、錫箔(平押し)紙の2種
エディション:完全生産限定版(シリアルナンバー入り)
◾️HAC module『The Ghost in the Shell』シリーズ 商品情報
https://technobyobu.jp/hac/
・『The Ghost in the Shell 鼓動 Kodo』
作品番号:HAC-01-GISーKD
アーティスト:士郎 正宗
・『The Ghost in the Shell 電脳 Denno』
作品番号:HAC-02-GIS-DN
アーティスト:士郎 正宗
・『Ghost in the Shell STAND ALONE COMPLEX 模倣 Moho』
作品番号:HAC-03-GIS-MH
アーティスト:Paul Nicholson / WEIRDCORE
<作品概要(HAC-01-GISーKD、HAC-02-GIS-DN、HAC-03-GIS-MH共通)>
発売日:2026年1月30日
サイズ:縦:300mm × 横:300mm
重量:約395g
材質:錫箔(平押し)紙
価格:132,000円(税込)
・『Ghost in the Shell STAND ALONE COMPLEX EX 模倣 Moho Extra』
作品番号:HAC-03-GIS-MHーEX、HAC-03-GIS-MHーEX2
アーティスト:Paul Nicholson / WEIRDCORE
<作品概要(HAC-03-GIS-MHーEX、HAC-03-GIS-MHーEX2)>
発売日:2026年1月30日
サイズ:縦 400mm × 横 1200mm
重量:約1.4kg
材質:
・通常版(EX):錫箔(大箔散らし)
・特別仕様版 (EX2):錫箔(平押し)
真贋判定:MiWAKERU®(NFCタグによるデジタル認証)
販売数量:
・通常版 (EX):Edition 8
・特別仕様版 (EX2):Edition 8(受注制作)
価格:
・通常版(EX):550,000円(税込)
・特別仕様版(EX2):660,000円(税込)
※特別仕様版(EX2)は受注制作となります。