ブルーノ・マーズはなぜ日本で愛されているのか? 10年ぶりの新作『The Romantic』から紐解く
ブルーノ・マーズと日本のポップミュージックの共通点
2月27日に約10年ぶりとなる待望の最新アルバム『The Romantic』をリリースしたブルーノ・マーズ。先行シングルとして発表された「I Just Might」が全米シングルチャート初登場1位を獲得するなど、発売前から旋風を巻き起こしていたブルーノだが、その熱狂は日本でも同様だ。近年は、伝説的なロックバンドからバイラルヒット中のニューカマーに至るまで、幅広い海外アーティストが来日公演を実施しては大きな話題を生み出すという、ある種の洋楽フィーバー的な状態が続いているが、そのなかでもブルーノの人気は群を抜いている。
今や伝説となった、2024年の東京ドーム7Days公演完全ソールドアウトはもちろん、24年末にリリースされたBLACKPINK・ROSÉとの「APT.」が若年層を中心に大ヒットを記録するなど(Billboard JAPAN総合ソングチャート「Hot 100」では通算5週1位を達成し洋楽史上最速で3億回再生を突破、『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』では「最優秀海外ポップス楽曲賞」に選出された)、その支持の厚さはほかの海外アーティストと比較しても明らかにレベルが違う。こういう書き方をすると奇妙かもしれないが、ほかのアーティストがどうしても本国の熱狂に対するギャップを感じてしまうことが多い一方で、ことブルーノに関してはほとんど差がない、あるいはそれ以上に感じてしまう瞬間も少なくない。
その要因を考えると、ブルーノのスタイルでもある、60年代〜80年代のR&Bやソウル、ディスコ、ファンク、ジャズ、ロックといった伝統的な音楽へのリスペクトに満ちた音楽性が影響していることは想像に難くない。なぜなら、それは多くの側面において、日本のポップミュージックの歴史と重なるものでもあるからだ。
70年代~80年代における山下達郎や大瀧詠一、90年代におけるMISIAや久保田利伸、2000年代の宇多田ヒカルのように、日本のポップスの基準を築いてきたアーティストの多くはそうした海外の音楽を咀嚼して、「これをいかに大衆に向けて表現することができるか?」という問いに向き合ってきた“ポップ研究家”であり、その結果として現代のJ-POPが形成されている。
一方、今でこそステージ上で歌い踊るエンターテイナーという印象の強いブルーノだが、キャリアの初期をソングライター/プロデューサーチームのThe Smeezingtonsの一員として形成していることからも分かるように(K'naan「Wavin' Flag」やCeeLo Green「F**k You」、Flo Rida「Right Round」などの大ヒット曲を手掛けている)、彼のアーティストとしての本質は、伝統的な音楽を参照しながらも、ジャンルに対する好みを超えるほどの間口の広さを誇るハイブリッドなポップスとして仕上げる職人ぶりにある。こうした「スキルに裏打ちされた伝統と大衆性の両立」は、まさにブルーノの音楽が愛されると同時に、国境を超えた日本で愛される理由なのではないだろうか。
最新作で取り込んだ“ラテン”の要素
そうした手腕は、最新作においても見事に発揮されている。前作『24K Magic』で見せた濃厚なファンク色は「I Just Might」に集約させつつ、自身のルーツのひとつでもあるラテンからの影響が全編に投影された『The Romantic』は、まさにブルーノ史上、最もスウィートでロマンティックな作品だ。ラテンといえば、近年はバッド・バニーを筆頭としたレゲトンのイメージが強いが、ここでもブルーノはクラシックな意匠にこだわり、激しいダンスフロアではなく、まるで結婚式を想起させるかのようなエレガントなムードを情感たっぷりに演出している。
アルバムのオープニングを飾る「Risk It All」では、優雅に奏でられるアコースティックギターを基軸とした情熱的なボレロと軽やかなコンガの音色に乗せて、現代ポップが誇る宝石級の歌声を空間いっぱいに響かせる。続くR&Bテイストの「Cha Cha Cha」では、スムースなメロディと巧みに構築されたコーラスワーク、絶妙なタッチのサルサのリズムでリスナーの心と体を心地良く揺らしていく(特にこの曲は、日本のアイドルグループがカバーしても良い感じにハマりそうだ)。楽曲を紐解けば、そこには70年代のラテンに対する深い愛情と、ともすればラテンポップが席巻する今のシーンに対するある種のカウンター的な視点を垣間見ることができるが、そうしたことを考える前に、絶品の歌声とメロディ、本能を揺さぶるしなやかなグルーヴに全身を支配されてしまう。
アリーナを射抜くかのような鮮烈なロックから、スポットライトに照らされる姿が目に浮かぶようなバラードまで見事に歌い上げる幅の広さもしっかりとアピールしており、力強いリズムと鮮やかなカッティングギターが冴え渡る「On My Soul」から、カウベルの軽快な音色と強烈なブレイクダウンのコントラストに唸る「Something Serious」、まるでマイクもろとも燃え尽きるかのような壮絶な歌声が響く「Nothing Left」が続く後半の流れは、ディスコグラフィー全体における屈指のハイライトだ。方向性はまるで異なる3曲だが、やはり伝統的かつ大衆的という絶妙なバランスを保っており、そうした人々を飽きさせない表情の豊かさもまた、多種多様な刺激で満ちた日本の音楽シーンでの支持に繋がっているように感じられる。
歌詞から滲み出る人柄の良さ
また、全編を通して、あらためてブルーノ・マーズの魅力のひとつである「人柄の良さ」が感じられることも忘れてはならない。〈Play a song for this pretty little lady〉(この可愛い娘のために曲をかけてくれ)と真正面から目の前にいる相手を絶賛しながら、〈'Cause when I take you to the floor, ooh, you gotta get down〉(俺がダンスフロアに連れて行ったら 君は全力で踊るしかない)〉とフロアでの主導権を握ってダンスを促す「I Just Might」に象徴されるように、ブルーノはいつだって好みの相手を見逃さないほどに情熱的で、自分の魅力をちゃんと理解していて、それでいて相手へのリスペクトは欠かさないという人物である。
なにせ、アルバムの第一声から〈For just the chance to win your heart/You could set the bar beyond the stars/I'll do anything, anything you ask me to〉(君の心を勝ち取るためなら/星の彼方だって目指せるだろう/君の望むことなら 何だってやる)と歌い上げているくらいだ。今の音楽シーンでここまで直球のメッセージを確かな説得力でもって聴かせてくれるのは、世界広しと言えどもブルーノくらいだろう。本作のリリックはまさにロマンティックが極まっており、こうした「押しはめちゃくちゃ強いが、相手へのリスペクトは惜しまない」という、肉食系と草食系の両方の魅力を併せ持つところもまた、日本人の好みに合っているように感じられる。
まさに“10年ぶりの新作”の看板に恥じない見事な仕上がりの『The Romantic』だが、こうなるとやはり期待してしまうのが、2024年以来となる来日公演だ。もちろん現時点では一切の情報が無い状況だが、恐らく多くのファンは「きっとまた来てくれるはず」と信じているのではないだろうか。ファンの度肝を抜いたドン・キホーテとのコラボCMや東京ドームに鳴り響いたAKB48「ヘビーローテーション」のカバーといった数々の来日エピソードが示すように、ブルーノといえば、日本からの愛情に対して、さまざまなサプライズを織り交ぜながら応え続けてくれた歴史がある。
日本とブルーノ・マーズ、双方の愛情と音楽へのリスペクトに満ちたロマンティックな関係性は、これからも続いていくのだ。
■リリース情報
『The Romantic』
発売中
配信リンク:https://wmj.lnk.to/BM_TR
<ジャパン・リミテッド・CD>
価格:¥3,300(税込)
品番:WPCR-18808
・日本独自ジャケット・アートワーク
・日本盤のみジャケット・ステッカー封入(初回生産分のみ)
・歌詞・対訳付
<ジャパン・リミテッド・LP>
価格:¥6,600(税込)
品番:WPJR-10069
・日本独自ジャケット・アートワーク
・歌詞・対訳付
購入リンク:https://wmj.lnk.to/BM_TR_JP
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