夜々「もう愛せない自分は捨てよう」 新しい“夜々”の解放、アルバム『0:00』と12の物語
みんなから魂もらって、パワーアップしていく……『少年ジャンプ』みたいな感じ(笑)
――実際参加しているアレンジャーさんとかサウンドプロデューサーさんとかトラックメーカーさんとか、かなり濃いメンツじゃないですか。その濃い人たちと渡り合いながら作っていく経験というのはどういうものですか?
夜々:どんな言葉が適しているかわからないですけど、いい栄養素をもらって、いい筋肉ができたかな、って。最初は川谷絵音さんから始まって、もうその時点から緊張で吐きそうだったんですけど(笑)。
――そうだよね、いきなりだもんね。
夜々:それはもう本当に(笑)。「I Hope」くらいまでは「こんなド新人に申し訳ない」って思ってたいんです。「力量不足で、なんか申し訳ないな」っていう気持ちが大きくて。でも、「Let Go」以降、「いや、この環境ってめちゃくちゃありがたいことだから全部吸収しなきゃ!」って気づけて。「自信をなくしちゃダメだ」「よし、進もう」って思えるようになりました。みんなから魂もらって、どんどんパワーアップしていく……『少年ジャンプ』みたいな感じです(笑)。
――たしかに贅沢だと思うんですよ、これだけの人たちが参加して。でも、そこと、それぞれの曲で夜々が堂々と渡り合ってるというか、それぞれの人の世界観とか生み出すムードに対して、ちゃんと自分をさらけ出して乗っかっていくことができるようになったんだなあ、と思いました。
夜々:それこそデビューの時とかは、インタビューもそうですし、ライブやテレビ出演、一つひとつに対してすごくネガティブというか。自信ないし、震えるし、緊張するし、MCもひとりでやらなきゃいけないし、っておどおどしていたんです。でも、最近は忘れかけていた「音楽って楽しいんだ」という気持ちをあらためて感じるようになって。そこからやっと、「音楽っていいな、楽しいな」「もっと純粋になりたいな」「もっといいパフォーマンスしたいな」って思えるようになりました。
――うんうん。アルバムを聴いていると、その音楽を楽しんでいる感じが間違いなく伝わってくるんですよ。「こういう心の開き方をする人なんだな」っていうのを、初めて発見させてもらったなって。
夜々:よかったです。
――これまで出してきた曲を振り返って、歌詞を見たりした時に、自分でもその移り変わりみたいなのは感じますか?
夜々:自分では、あまり変わっていない気もするんですけどね。その時の私の心情が反映されてるので、あらためて聴いたら「I Hope」の時はすごく靴擦れしていたなと思いますし、ちょっと恋して浮かれて生まれた「Gravity」の時はふわふわしてたなとか、自分の思い出が反映されてるとは思います。
――ああ、たしかに「Gravity」はふわふわしてる(笑)。
夜々:5ミリぐらいずっと浮いてました(笑)。浮かれ期。
――だからこういうね、幸せで浮かれている感じを書くのも新鮮じゃないですか。
夜々:そうですね。本当にその日、その時の私の1ページ1ページが全部反映されて、12曲の物語が生まれたんだなって思います。
――もちろん曲ごとに主人公がいて、それぞれ置かれている状況は違うわけなんですけど、でも人間って一年中同じなわけじゃないですからね。
夜々:本当にそうですよね。
――そういうのが正直に曲になってる感じがしますよね。浮かれてる時は浮かれてるし、病んでる時は病んでるし。
夜々:そうなんです。ありのままが出ています。
――そのなかで、たとえば「I Hope」の時にいしわたりさんと一緒に歌詞を作って、歌詞との向き合い方を教わって。
夜々:とても勉強になった時間ですね。
――そういう経験っていうのは一つひとつ、その後の曲に活きている感じはする?
夜々:はい。そうやっていただいたものも含め、私のなかの私らしさをやっぱり大事にしなきゃいけないなと思っています。今回、「0:00」はshallmのliaちゃんと一緒に作詞させてもらったり、「Nonsense」ではNight Tempoさんと一緒に楽曲を作ったりしたんですけど、そこでもちゃんと自分の意見を伝えられるようになったと思います。
――それこそ「Nonsense」なんて、歌詞も芦田菜名子さんが書いていて、夜々さんは参加していないじゃないですか。
夜々:菜名子ちゃん、本当に大好きなんです。
――でも、夜々さんは自分で歌詞を書いて自分で歌うっていうスタイルを今までずっと貫いてきたわけですけど、今回はコライトをしたり、チームで曲を作ったり、人に歌詞を書いてもらったりということにも挑戦していて。その違いは自分のなかではどう感じました?
夜々:今までの私だったら「全部私がやらなきゃ」って思って、勝手にタスクに追われて焦っていました。でも、そういう時期を乗り越えて、「あ、誰かに頼ってもいいんだ」って思えるようになって。それはマネージャーさんだったり、チームとの話し合いを経て気づけた部分ですね。今回菜名子ちゃんに歌詞をお願いしたのも、彼女の音楽がすごく好きだったからこそ、「この楽曲は菜名子ちゃんの世界観で歌ってみたい!」って思ったからなんです。「I Hope」の経験があったから、「私が歌詞を書かないから私の曲じゃない」ということではないなと思えましたし、大好きな菜名子ちゃんと作品が作れて嬉しかったです。
――それ、すごいなと思ったんですよ。「Coffee」もコライトの形になっているじゃないですか。今は分業やチームで曲を作るというのは当たり前だけど、でも、夜々はシンガーソングライターなわけで。そこを手放せたというか、解放できたというのは結構大きな変化なんじゃないかなと。
夜々:ずっと「私がやらなきゃ!」って思っていました(笑)。でも、追い込まれていた時に寄り添ってくれたマネージャーさんやチームがいてくれたから、「誰かにお願いしてもいいんだ」とか「『この人の書く歌詞大好きだからお願いしたい』って言っていいんだ」って思えるようになりました。そしたら、ちょっと心が軽くなったというか。私、天才型じゃないので、本当に毎回かなり苦戦しながら作ってるんですけど、誰かに携わってもらったり、一緒に楽曲作ったりするのって楽しいなと思えたんです。
――曲の作り方も変わりましたか?
夜々:今までは、ひたすらスタジオにこもって弾き語りで作っていたんですけど、「Coffee」はフリービートを聴きながら、自分でメロディラインを作るというやり方をしたんですよ。私、ピアノは弾けないんですけど、まずメロディが浮かぶタイプで。伴奏(ビート)を聴きながらメロディを作るのも楽しいなって気づきました。
――そうなると、やっぱり歌も変わりますよね。それこそ「Nonsense」なんて、自分の言葉ではない歌詞をシンガーとして歌うっていう立場なわけじゃないですか。そうなると、自分で書いた歌詞を自分で歌うのとはまた心持ちが違うと思うんですけど、その楽しさはどうでした?
夜々:すごく新鮮で。菜名子ちゃんになった気分になりました。菜名子ちゃんの要素をいただいて“夜々”になってる、みたいな感じなんです。何回言っているかわからないですけど、本当にいい刺激でした。
――それを「いい刺激だ」と思えるようになったというのが、夜々の変化ということでしょうね。
夜々:本当にそうですね。最近は、人間もいつ死ぬかわからないから、「もう愛せない自分は捨てよう」と思っています。「人生味わって生きていこう」「悲しい、嬉しい、悔しい、いろんな感情があるからこそ人生って楽しいんだ」って……また悟りました。