夜々「もう愛せない自分は捨てよう」 新しい“夜々”の解放、アルバム『0:00』と12の物語
昨年1月、川谷絵音が編曲で参加した「Lonely Night」でデビューしたシンガーソングライター・夜々が、それから一年あまり、ついに1stアルバムを完成させた。『0:00』と題されたアルバムには、これまでの配信シングルに参加していた面々に加え、Night Tempoやandropなど、豪華なクリエイターが参加。しかも、豪華なだけでなく、それぞれのセンスや才能を遺憾なく発揮して、夜々の音楽の世界を一気に押し広げるようなバラエティ豊かなアルバムを作り上げている。ひとことで言えば、一曲聴くごとに新しい夜々に出会えるような、発見と驚きに満ちた作品に仕上がっているのだ。そんなアルバムを貫くのは、迷いながら走り続けた一年のなかでたどり着いた、夜々のアイデンティティ。聴けば聴くほどジャンルや音楽性で定義することが難しくなるようなアルバムだが、でも、この12曲は間違いなく「これが夜々だ」と言っている。4月には初のワンマンライブ『夜々 1st ONE-MAN LIVE "Time For Unlimited"』も決定。夜々の新章が、ここから幕を開ける。(小川智宏)
私の人生のなかでいちばんの、後悔がない、最高のアルバムができた
――半年ぶりのインタビューになります。最近調子はどうですか?
夜々:調子はいいです。もう、心も体も健康!
――素晴らしいです(笑)。ついに1stアルバムが完成しました。これまで配信シングルとして出してきた曲たちもありますけど、こうしてまとまった時に、新しい夜々に出会えるような作品になったな、と。
夜々:ありがとうございます。もちろん私のアルバムではあるんですけど、本当に全部が好きで。このアルバムのマスタリングであらためて全曲を聴いて「ほかの人がこの曲たちを歌っていたら『羨ましい』と思っちゃうくらいかも」って思いました。私の人生のなかでいちばんの、後悔がない、最高のアルバムができたなと思っております。
――どんな部分で「最高だな」って思えました?
夜々:この12曲、結構テイストが違うんですけど、間違いなく言えるのは、私が好きな曲だということなんです。それに加えて、とても素敵な方々が携わってくださって、最高の12曲の物語ができました。アルバムを通していろんな魔法の世界に連れて行ってあげたいなと思っていたものが、この『0:00』にすべて詰まっています。言葉が合っているかわからないんですけど、夢が叶ったな、って。私、今まで人生のなかで「こういうジャンルが好きだ」って言えるようなものがあんまりなくて。いろんな楽曲が好きだからこそ、いろんな影響を受けて、このアルバムができたなって思います。「夜々といえばバラードだよね」「夜々といえばジャジーな曲だよね」「夜々といえばアップテンポだよね」みたいな縛りがないからこそ、今回のこの12曲が生まれたのかなって思うんです。本当に私の人生を代表してできたものが、このアルバムになったなと思います。
――これまで出してきた配信の曲たちももちろんそうだけど、このアルバムの12曲は本当に幅が広くて。それはおもしろさでもあるけど、逆に言うとそれをひとつにまとめるっていうことの難しさもあったんじゃないですか?
夜々:それこそ……前回取材していただいた時は、私がいちばん右往左往していた時期だったんですけど――。
――右往左往していた時期?
夜々:実は3曲目の「I Hope」くらいまでは、自分のなかのジャンルが定まっていなくて、揺らいでいたんです。でも、そんな彷徨った時期を経て、自分のやりたい音楽をやっていいんだと思えた年でもありました。
――そこで揺らいでいたんですね。
夜々:リリースする曲ごとにジャンルが違っていて、「本当にこれでいいのかな?」とか「聴いてくれる人はこれが好きなのかな?」っていう迷いがありました。誰かにどう思われるかが怖かったんです。でも、4曲目の「Let go」からアルバムの制作を含めて、「自分の“好き”を発信していいんだ」っていう決心みたいなものが確立できました。一曲一曲が本当に難産でしたし、かっこいいアーティストの方たちから刺激を受けて、いい筋肉痛をもらった一年だったからこそ、生まれたアルバムなのかなって思います。
――「これでいいんだ」って思えるようになったのはどうしてだと思いますか?
夜々:自分のなかで大きかったきっかけは、「Let go」です。これは、「Lonely Night」と同じ時期に作った楽曲をブラッシュアップした曲で、ドラマの主題歌も担当させていただけた曲なんですが、「偽りの自分を手放して、ありのままの自分を愛していきたい」っていうメッセージを込めて書きました。編曲をキツネリさんにやっていただいたんですけど、夜々のなかでもいちばんビートが効いてる楽曲になっています。私自身、こういうビート系の曲が大好きだから、夜々として出せることが嬉しくて、そこで「あ、これ私のやりたいことだ」って思って。そこから解き放たれました。
――その気分のままアルバムに突き進んでいった?
夜々:そうですね。
――1曲目の「0:00」は〈もっと自由に唄って命を焦がして〉とあるとおり、まさにそういう気持ちが出た曲になっていると思うんです。これがタイトル曲になったのはどうして?
夜々:まず、どういうアルバムにしたいのかなっていうのを考えたんです。“夜々”っていう名前もそうなんですけど、私が自分と向き合ったり、自分の心に素直になれる、自分の心を抱きしめられる時間というのが夜なんです。それにリンクするものを作りたいと思いました。時計の針が重なる一日の終わりと新しい一日の始まりを描きたいな、って。その序章みたいな歌を作りたくて「0:00」を書きました。そこから「もしかしたら、これがアルバムタイトルなのかも」と思って、アルバムも『0:00』という名前にしました。
――真夜中の0:00って、人によってはいろいろな意味を感じられる時間だと思うんです。寂しさを感じたりする人もいると思うんだけど、夜々さんの場合はそれを自分らしくいられる瞬間としてとらえているんですね。
夜々:そうですね。「0:00」っていう1曲目での、夜々としての理想像は……なんか魔法使いになりたくて。この12曲を聴いてるあいだは、幻想の世界に誘いたいなと思って作った曲で。「ついてきて!」という気持ちが反映されている曲だと思います。
――そういう気持ちは、音楽を始めた時からあったものですか?
夜々:こんなに強くはなかったです。去年の一年間を経て、できあがったのかなって思います。
――これ、夜々としての1stアルバムじゃないですか。
夜々:はい。
――だから、普通は「これが私なんだ」っていう、アイデンティティを訴えるみたいなものになりそうじゃないですか。「これが夜々です、わかってください」という。でも、このアルバムはそうじゃない。「これも夜々です。あ、これも夜々です。全部夜々なんです!」みたいなアルバムになったっていうのがおもしろいなと思ったんですよ。
夜々:私ひとりじゃ絶対にできなかったし、“夜々”という人生を歩んできたからこそ気づいた気持ちもあります。一曲ごとに、その時の私がすごく反映されているアルバムだなと思うので、本当に夜々になったからこそできた作品だなと思います。それはもう携わってくださった方々のおかげです。