新世代インディーガールズ Pacifica、来日公演前にインタビュー SNSを通じて世界中にファンを広げる2人の絆
アルゼンチン出身のインディーロックデュオ、Pacifica(パシフィカ)。SNSを通じて知り合ったイネス・アダムとマルティナ・ニンツェルは、お互いにThe Strokesの大ファン。意気投合した2人はバンドを結成する。2023年に1stアルバム『Freak Scene』を発表。アルゼンチンのロックフェス『Lollapalooza Argentina』に出演。Måneskinのライブで前座を任されるなど、アルゼンチンのインディーロックの新星として注目を浴びるなか、2025年10月に2ndアルバム『In Your Face!』を発表。12月に行われた初来日ツアーは、東京、大阪の3公演が全てソールドアウトした。InstagramやYouTubeなどSNSを通じて世界中にファンを広げる2人は、新世代のインディーガールズ。日本公演の初日、ライブを控えた2人に話を聞いた。(村尾泰郎)
The StrokesのライブをNYに観に行ったことが転機に
ーーおふたりとも日本は初めてだとか。日本の印象はいかがですか?
マルティナ・ニンツェル(以下、マルティナ):街は大きくて賑やかだけど、日本の人たちは静かですね。ブエノスアイレスではみんな大声で叫ぶように話すから、街にいる人たちが日本の半分ほどでも日本より騒々しいんです(笑)。あと、みんなファッションを冒険していて、着こなしとか髪型とかすごく素敵だと思います。
ーー2人は日本のファッション雑誌『FRUiTS』が好きだとか。原宿系のファッションに興味があるのでしょうか。
マルティナ:私たちはいつもオリジナルなスタイルを探していて、Pinterestをよく見ているんです。それで気に入った画像をチェックしていくと『FRUiTS』の画像が多い。だから『FRUiTS』を追いかけているというより、『FRUiTS』が自分たちを見つけてくれているような感じ。『FRUiTS』が原宿と関係あるというのも今初めて知りました。
ーーファッションに関しては、何か意識していることはありますか?
マルティナ:1stアルバムを作っている時は音楽に夢中になりすぎてしまって、ファッションや自分たちのスタイルについて考える余裕がありませんでした。だからステージに立つ時も、ジーンズとシャツというシンプルな普段着でした。でも、2ndアルバムを作る頃には、ファッションも自分たちを表現する重要な手段だと思うようになったんです。今はそれぞれのキャラクターに合ったファッションを考えて、いろんなスタイルに挑戦しているところです。
ーーそこでPinterestが活躍しているわけですね。2人の出会いについて伺いたいのですが、インターネットを通じて知り合ったそうですね。
マルティナ:当時、私は高校を卒業したばかりでベースを弾き始めていたんです。The Strokes(以下、ストロークス)が大好きなので、ストロークスのカバーをしていました。その頃、イネスがストロークスの楽曲をカバーしている動画をネットにあげてバイラルしていたんです。私がイネスのその動画をシェアしたら、イネスがフォローしてくれて。それで私がイネスをフォローしたんです。そのうち、共通の知り合いが「お互いフォローしているんだったら一緒に何かやれば?」と声をかけてくれて。それはいい考えかも、と思って一緒にやるようになりました。
イネス・アダム(以下、イネス):私は小さな頃から音楽が大好きで、音楽教室に通ったりしていました。でも、音楽はあくまで趣味のひとつという感じでした。マルティナと会って初めて本格的にバンドを始めたんです。最初はストロークスのカバーをやってYouTubeにあげたりしていたんですけど、インスタである人に「カバーばかりやっているとカバーバンドになっちゃうよ」と言われたんです。そして、同じタイミングで別の人から「あなたたちのオリジナルの曲が聴きたい」と言ってもらえたこともあって、本格的に自分たちの曲を作るようになったんです。
ーーストロークスが2人を結びつけたわけですが、ストロークスのどんなところに惹かれますか?
イネス;ひとことで言うのは難しいけど、メロディも良いし、ギターサウンドも最高。歌詞が抽象的なんですけど、それがジュリアン(・カサブランカス)のボーカルにピッタリ。アレンジも素晴らしくて、すべてにおいてエモーショナルなんです。
マルティナ:ドラムもいいし、本当に最高! やっぱり、10代の頃に聴いたというのが大きいんじゃないかと思います。思春期の頃って感情的になったり、いろんなことを考える時期なので、そこで好きになった音楽はすごく身近に感じられて忘れられない存在になるんです。
ーーニューヨークまで2人でストロークスのライブを観に行ったそうですね。その時にイネスは仕事を辞めたとか。
イネス:最初は有給休暇を取ってNYに行こうと思っていたんですけど、その頃、新しい仕事を始めたばかりでまだ有給がとれなかったんです。でも、マルティナがチケットを2枚手に入れていたので、「これは行くしかない!」と思いました。仕事はまた帰ってきてから探せばいいし。
マルティナ:でも、2人ともお金がなかったので、インスタのコミュニティに「お願い! 助けて!!」って声をかけたら、クラウドファウンディング的なアプリを通じて、みんながカンパしてくれたんです。それでNYまで行くことができました。
ーーそして、ニューヨークでギグをやった時にレーベルからスカウトされたそうですね。
イネス:びっくりしました。スカウトされるなんて思ってもみなかったので。
マルティナ:最初は嘘だと思っていたんです。そんなことありえないから。でも、レーベルの人が熱心に話をしてくれて、それで「本当なんだ!」って。
ーーすぐに決心はつきました?
マルティナ:最初は怖かったです。全然自信はなかったし、イネスとは知り合ったばかりで、一緒にやれるかどうかもわからなかった。そこで背中を押してくれたのは家族でした。もし失敗しても、5年後に学校に戻るなり、仕事を探すなりすればいい。でも、5年後に「あの時、デビューしておけば良かった」と思っても、もうチャンスはない。だから挑戦してみればって。
「インディーシーンよりネットの方が仲間が多い」活動に欠かせないSNSの存在
ーー1stアルバム『Freak Scene』は半年で作り上げたそうですね。レコーディングの経験がまったくなかった2人にとっては、大変なことだったのでは?
マルティナ:そうですね。初めての経験だったので学ぶことが多かったです。曲を作ったらおしまい、と思っていたら、そこからアレンジを考えて、レコーディングをしてないといけない。曲作りに費やしたのと同じくらいプロダクションに時間をかけるということを知ったりして、すごく勉強になりました。
ーー新作『In Your Face!』は、前作よりも経験を積んだことで、より自分たちを出すことができました?
マルティナ:成長したいまの自分らしさがすごく出ていると思います。1stの時は、まだお互いのことがわかってないこともあって、私が思いついたアイデアを録音してイネスに送って、それにイネスが手を加えて私に送り返す、というやり方でした。今回は常に同じ空間にいて、一緒に曲を作り上げることを意識していました。その方が自然な流れで、集中して曲を作ることができました。
イネス:曲を作るときに気をつけたのは「インテンション(意思)」です。一つひとつのことを意識的にやる。そうすることで自分たちの意思表現をしようと思ったんです。そして、曲を通じて自分たちを正直にさらけ出そうと思っていました。
ーーアルバムのなかに「Indie Boyz」という曲がありますが、これはインディーロックが好きな男の子たちのこと?
マルティナ:1カ月半ほどLAで過ごしていた時期があったんです。夜になると遊びに出ていたんですけど、バーに行くと“Indie Boyz”がいたんです。どういう男の子たちかというと、インディーロックをやっている人たち。でも、ちょっと嘘っぽいというか。
イネス:例えば、バーで出会った自称プロデューサーは「楽器も全部弾ける」って言うんですけど、「どんな音楽が好きなの?」「どんなバンドを手掛けたの?」といろいろ話を聞くと、実は全然音楽のことなんて知らなくて、格好つけてるだけだったんです。そういう人がLAにはあまりにも多くて、それをネタにしました。
ーー日本では考えられませんが、LAにはインディーロックシーンが根づいているからこそ、そういう自称「Indie Boyz」がいるんでしょうね。アルゼンチンのインディーロックシーンはどんな感じですか?
イネス:アルゼンチンにもロックが根づいていて、インディーシーンも活気があります。特にコロナが明けてから新しいバンドがどんどん出てきているんです。でも、私たちはインディーシーンからはちょっと離れていて、インターネットの方が身近な存在なんです。仲が良いバンドはインターネットで知り合ったし、インディーシーンよりネットの方が仲間が多いんです。
ーー2人が出会ったのも、ニューヨークに行くことができたのもネットのおかげですもんね。
マルティナ:SNSにはすごくお世話になっていて、インスタやYouTubeが情報の発信源になっているし。今回、来日したのもSNSのおかげなんです。最近、日本からのコメントが増えてきて、「日本で何か起こっているのかな?」と思ってエージェントに連絡して、「日本でライブができないかな?」と相談したんです。それで日本公演が決まって、最初は1日だけの公演だったのが数日で売れ切れて、追加公演と大阪公演が決まったんです。SNSにはすごく助けられています。
2人の絆は今がいちばん強い
ーーネットで知り合ってから、音楽活動を続けてきて相手のこともわかってきたと思います。いま相手に対してどんな想いを抱いていますか?
イネス:マルティナはやる気がすごくあって、常に私の背中を押してくれます。新しいところ、今までとは全然違うところに連れて行ってくれるんです。出会った時も、彼女と一緒だったら何か面白いこと、新しいことが起きるかもって思えたし、それを信じることができました。結果そうだったし、彼女には感謝しています。
マルティナ:私にとってイネスはお姉ちゃんみたいな存在です。年上ということもあって、私を見守ってくれているところもあるし、せっかちな私に辛抱強く物事に向き合う大切さを教えてくれます。そして何よりも、彼女がクリエイティブであることに刺激を受けるんです。私は自分に才能があるなんて思ったこともないけれど、イネスと一緒に何かを作ることが大きな喜びになっています。
ーー2人とも対照的なところがありながらも、お互いに補い合っているんですね。
マルティナ:はい! 最初の頃は不安もあったけど、2人の絆は今がいちばん強いと思います。
■リリース情報
Pacifica(パシフィカ)
ニューアルバム『In Your Face!』配信中
配信リンク:https://ffm.to/pacifica-iyf
レーベル:TAG Music
ALBUM TRACKLIST:
1. What You Doing
2. Fixer Upper
3. Indie Boyz
4. Just No Fun
5. Don’t Blame Me
6. Mine
7. Let Me Have This
8. Corridor
9. Show Your Credentials
10. In Your Face
11. For Us
12. Wasted A Drunk
13. Soltame!
■関連リンク
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