2025年の音楽トピックスをオリコンランキングから振り返る “多様化するヒット”を可視化するために必要なこと
アーティストや曲のすごさを数値で表現できるのがオリコンの強み
――TikTokやYouTubeとの連携についても教えてください。
小島:TikTokに関しては、我々が日本で初めて、週間楽曲チャートの公式パートナーになっていまして、「週間TikTok音楽チャート」をオリコンニュースで発表しています。これはTikTokのユーザーが作った動画で使われた楽曲で、実際に対価を払って聴いた曲ではないので、合算ランキングには含まれていません。ただ、バズることによって、ストリーミングに反映されてくることはあると思います。
――YouTubeについてはいかがでしょうか?
小島:YouTubeの音楽チャートもオリコンニュースで公開しています。YouTubeの中にも「YouTube Charts」というサイトがあって、「急上昇」「ミュージックビデオ」「曲」「アーティスト」「YouTubeショートの楽曲」のランキングをそれぞれ見ることができますが、オリコンでは「曲」のランキングを毎週公開させていただいています。
――フィジカルの面では、今もファンダムによるCD大量購入への対応は続けているのでしょうか?(※)
小島:アーティスト参加型の販売施策イベントについて購入者1人あたり3枚が上限というカウントの仕方は続けています。おひとりで何百枚、何千枚買うという話もいまだにありますので、それをヒットと言っていいのか、という議論は今もあるところです。
――今も全国のCDショップから直接データを集めているのでしょうか?
小島:各店舗から直接全部データをいただいています。お店もそうですし、ストリーミングもデジタルも、配信サービス各社から直接データをいただいて集計しています。客観性を持った数値として、直接データをもらって我々が集計して公開するということが、精度につながっているんじゃないかと思います。今後も続けていきたいと考えています。
――オリコンがランキングで大切にしていることは何でしょうか?
小島:冒頭にもお話ししたように、やはりいろんなランキングを見ないと現代のヒットは表せないですよね。「これを見ればヒットです」というのは難しい時代になっていると思います。オリコンでは、合算、CD、ダウンロード、ストリーミングの独自ランキングを毎週公開し、YouTubeとTikTokのランキングもあります。さらにストリーミング急上昇ランキングで、ストリーミングの動きもつかんでいくことで、多角的にヒットを表現できているのではないかと思っています。
――そうしたオリコンのデータベースは非常に価値がありますね。私個人も、オリコンが提供している「you大樹」に加入しています。
小島:ありがとうございます! 我々が大事にしているのは、客観的公平な立場からファクトを情報化することなんです。オリコンのCDランキングでは出荷数ではなく、実際に売れた売上枚数を1枚単位で集計してきました。その精緻なデータが必要不可欠だと思っています。それはデジタルもストリーミングも同様で、実際にユーザーが対価を払って消費行動を起こした数値を、ほぼすべてのプラットフォーマー、お店や配信事業者から直接データを提供いただいて集計しています。
信頼性が高い情報を、広く社会に提供してきたというのが軸としてあります。50年以上、継続してランキングを公開してきているので、昭和、平成、令和のヒットの変遷を表現することもできる。順位だけではなく、数字ですべてを積みあげてきているので、歴代の記録、アーティストや曲のすごさを数値で表現できるというのが特徴のひとつだと思います。今後も継続して日本のヒットを多角的に表現することで、さらなるヒットや市場の拡大に貢献できればと思っています。
※:https://www.oricon.jp/files/2017/09/2017090801.pdf