Leola、6年ぶりのアルバムとカフェツアーに込めた想い デビュー10周年に向けて振り返る足跡

 3月に6年ぶりのアルバム『Chamomile』をリリースしたLeolaが、11月16日から来年2月にかけ全国8カ所を巡る初のCAFE LIVE TOUR『Leola CAFE LIVE TOUR 2025-2026 "Little Chamomile"』を開催する。

 2016年にシングル「Rainbow」でデビューして以来、2026年4月27日にデビュー10周年を迎える彼女。デビューして数年後には活動がコロナ禍に飲み込まれ、思うように動くことができずフラストレーションを抱えた時期も多くあった。そんな彼女が今、導き出した答えとは、「踏まれれば踏まれるほど強く育ち、やがて白くて可憐な花をつけるChamomile」のようになること。彼女のツアーに掛ける気持ち、「Chamomile」に込めたもの、そして来年迎える10周年に寄せる思い。ハワイ語で「太陽の歌声」を意味するLeolaという名前、その原点に立ち返った今の彼女の素直な声を聞いた。(榑林史章)

弾き語りライブで感じた手応え

ーー初のCAFE LIVE TOURを企画したきっかけは何だったのですか?

Leola:今回はライブができるカフェやレストランを中心に会場を選び、基本的に着席してもらって聴いてもらうスタイルです。きっかけは、昨年に弾き語りライブをやらせていただいたこと。4月に開催した8周年記念ライブ『Leola 8th Anniversary Live「Chase The Sun」』は、すごく久しぶりのワンマンライブだったのですが、昼と夜の二部構成で夜がバンドでお昼が弾き語りでした。その後も12月に熊本と横浜の2カ所で開催した『Leola OneMan Live 2024 "Chamomile"』で、横浜はバンド、熊本は弾き語りというスタイルだったんです。

ーーその2回の弾き語りライブで、どういった手応えを感じたのですか?

Leola:コロナ禍以降はサポートメンバーに人数をかけられないことも多く、1人で弾き語りをするスタイルでライブ活動をすることが増えていました。最初は「1人は寂しいな」とか「1人で楽曲を全部伝え切れるかな」とか不安なことも多かったのですが、考えてみれば曲を作るときはいつも1人でギターを弾き語りしながらで、ギター1本で歌ったものをアレンジャーさんに送って編曲してもらうことが多いんです。発想の転換でもないけど、弾き語りはその曲が生まれたての状態、私が最初にイメージしたときのものを聴いてもらえるんじゃないかと。1人なので身軽にどこへでも行けますし、せっかく弾き語りをするならミニマムなセットで、お客さんとの距離感や温度感を大事にしたライブをやってみたいと思って、CAFE LIVE TOURを企画しました。距離感をもっと近く感じられるライブにしたいなと思っています。

ーー弾き語りライブがすごく好評だったんですね。

Leola:はい。イベントではなくワンマンで、フルパッケージを1人で、弾き語りでやるのは私にとってすごくチャレンジだったので、好評をいただいて少し自信も付きました。観てくれた身近な音楽仲間からも、「すごく良かったよ」と言ってもらえたし、こういう弾き語りのスタイルも自分の強みの1つにしていけるんじゃないかと思って。

ーーでも弾き語りで、1人でステージに立つのは緊張しますよね。

Leola:緊張はするのはバンドでも同じで、これは弾き語りをやっているアーティストの友だちともたまに話すのですが、バンドでやるときは楽曲の完成度や、迫力が増す分決まりごとも増えるので、当たり前だけど自分一人で勝手なことはできない。それに対して弾き語りの時は一人でステージに立つ代わりに、自由な部分が増えるのでそのときの気分でちょっとアレンジを変えたり、セットリストや、曲のサイズも臨機応変にできて、お客さんに歌ってもらうために演奏を止めたりもできます。そういう自由度の高さに気づいてからは、1人で弾き語りをすることが怖くなくなりました。

ーーバンドとは違った楽しさがあるのですね。

Leola:そうですね。お客さんとのコミュニケーションを、ダイレクトに取れるのが楽しいです。今回のCAFE LIVE TOURはまさしくで、カフェでちょっとお茶を飲んだり軽くご飯を食べたりしながら、私の歌やトークも楽しんでもらって、なかにはビールを飲んでる人がいてもいいし。お客さんにもラフに楽しんでほしいし、私自身もラフにライブを楽しみたいと思っています。そもそもカフェが大好きだし、コーヒーを飲みに来てリラックスしているところで、さらに音楽でもホッとさせてあげたいし、元気をプラスできたらなと思っています。

ーーLeolaさん自身が、過去にCAFE LIVEを観た経験があるのですか?

Leola:海外だとカフェに限らずバーやレストランでも、たまたま入ったらライブをやっているということがよくあって。そういう場に出くわしたら、ついつい聴いちゃいます。数人でアコースティック編成だったり、1人で弾き語りをしている人もいて。お客さんはそれぞれの時間を過ごしていて、私のように興味津々で観ていたり、食事を楽しんでいたり自由なスタイルで聴いているんです。そういうなかでやってるのがすごくカッコ良くて、ステキだなって思っていました。

ーーBillboard LiveやBLUE NOTE TOKYOなどでも食事をしながらライブを楽しむことはできますけど、客席から美味しそうな匂いもしてくるのでしょうね。

Leola:そうですね(笑)。「何食べたの?」って聞いたり、それもMCのネタになります。

活動のベースにある「みんなを飽きさせたくない」の想い

ーーツアーには「Little Chamomile」というタイトルが付いています。3月にリリースしたアルバムも『Chamomile』というタイトルで、昨年12月に横浜と熊本で開催したライブも「Chamomile」でした。

Leola:もともとアルバム『Chamomile』のリリースが決まっていたうえで、昨年12月のライブが決まったので、匂わせじゃないけど(笑)。そのライブではアルバムの新曲をいち早くやろうと決めていたし、ライブを観てくれた人がアルバムを聴いたときに、「ライブでやっていた曲だ!」とか「だから『Chamomile』というライブタイトルだったのか!」といった、驚きや発見があったらいいなと思って。それに単発でライブをやるのではなく、楽しみがずっと持続して行ったらいいなと思っていたんです。1年が終わるごとに活動を区切るのではなく、楽しみがひと続きになっているんだよと伝えたくて。だから昨年末のライブから3月のアルバムへと続いたものが、またさらに今月から来年にかけてつながっていく。去年の年末からすでに来年に向かっていたという感じです。

ーーリリース前の新曲をライブでやって、次に聴けるのはいつだろうとワクワクしながら、次のライブやリリースを待つという楽しみがあるわけですね。

Leola:そうですね。みんなを飽きさせたくないのが1番です。新曲を聴いたら、きっとその先に何か新たな展開があるだろうと期待するじゃないですか。「来年も何かやるんだろうな」というものが年末近くにあると、次の年も楽しみになりますよね。2026年のLeolaの活動が、楽しみになるようなライブにできたらと思っています。

ーーでは、アルバムについてもお話を伺わせてください。アルバムのリリースは約6年ぶりだったそうですが、リリースしていかがでしたか?

Leola:アルバムはおろかCDのリリース自体も6年ぶりだったから、サンプルを手に持った瞬間「おお〜!」って(笑)。今は配信やサブスクがメインだから、CDを聴くためのプレーヤーを持っていない人も多いです。そんななかでCDを手にしたとき、「やっぱりこれだな!」って思いました。ジャケットやブックレットの紙質も吟味して決めたし、盤面の印刷にもこだわった。ブックレットを開いて歌詞カードを読むという行為も、今はあまりしないじゃないですか。そういう聴くだけじゃない、開けたときのワクワクや触ったときの楽しみも、それも含めて音楽の楽しみ方だったなって思い出すことができてすごくうれしかったです。

ーーそういったCDならではの手触りや温かみというのは、Leolaさんの音楽の持つ質感にぴったりですね。

Leola:そう言っていただけるとありがたいです。私はもともと日常のなかで同居できる音楽を奏でたいと思っているし、自然が好きで、広い空とか森のなかとか波の音とか、そういうものにもマッチするような音楽を作りたいと思っています。今回のツアーの会場となるカフェには、食器のカチャカチャした音やコーヒーを飲む音、雑踏の音なんかも混じっていて、そういうなかでも私の音楽がマッチしたらいいなと思っています。

気構えずに“さらっと”できた「Chamomile」

ーーアルバム『Chamomile』を聴いて、例えばコロナ禍のことであったり何か辛い経験をして、時間が経過したことでそれを受け止められるようになったことや、振り返られるようになった今、といったものを感じました。

Leola:まさにそんな想いが込められています。アルバム収録曲のなかにはコロナ禍に作った曲もあって、「My Other Side」という曲なのですが、当時はフラストレーションが溜まりに溜まっていたなかで作った、“怒り”がモチーフとなった曲なんです。怒りって、今までの自分の音楽スタイルでは表現してこなかったものなのですが、このときはこういう曲も書いてみようと思って、3年くらい前に作りました。アルバムのリリースにあたって作り貯めていたデモのなかにこの曲を見つけて、当時のことも今は客観的に見られるようになったし、そのときの思いも消化できている今なら、ちゃんと伝えられるんじゃないかと思って収録しようと思いました。

ーー今の時代いろいろなものを抱えている人に響きそうです。

Leola:そうですかね。反骨精神みたいなものを歌っているんですけど(笑)。

ーーアルバムタイトルの『Chamomile』は、どういう気持ちで付けたのですか?

Leola:去年のライブの前、アルバムのリリースが決まって、まずこのタイトルを付けました。1曲目に「Chamomile」という曲も入っているのですが、これはもともと歌なしのイントロみたいな感じを想定していたんですけど、『Chamomile』というアルバムタイトルを付けて、こういうアルバムにしたいなというイメージが浮かんだら、歌詞も一緒にできちゃったんです。それでスタッフに聴いてもらったら「いいじゃん!」と言ってもらったので、このアルバム全体を表するような曲として完成させました。

ーー曲の尺が短いのは、イントロのつもりで作っていたからなのですね。

Leola:そうなんです。導入として、サラッと聴いてもらえたらと思っていたので。

ーーでも、「できちゃった」というのはすごいですね。

Leola:いやいや、こんなことは本当に稀で、いつもは「う〜ん」って唸りながらひねり出しているので。

ーー構えて作らなかったのが良かったんでしょう。

Leola:そうかもしれません。すごく素直に書けました。

ーーそのときはどうして素直になれたのか、Leolaさんのなかでどういうことが消化されたんですか?

Leola:『Chamomile』には「あなたを癒やす」という花言葉があって、それはカモミールティーを飲んでホッとするみたいに想像通りのものだと思うんですけど、実はそれだけではなく「逆境に耐える」という花言葉もあるんです。もっとよく調べると、踏まれれば踏まれるほど強くなる花だとも書いてあって。それを見て、今ここまでコツコツやってきて、いろんなことを言われたし、キレイに咲けているかわからないけど、踏まれたからこそ書ける曲とか、歌えること伝えられることがあるなと思って、それで『Chamomile』というタイトルに決めたんです。それを自分のことに重ねたとき、デビューして最初の5年間くらい、ただニコニコしてハッピーなところだけを見せてきて、とにかくポジティブなところだけ見せたいと思ってやっていました。でも本当のポジティブというのは、ネガティブを知ってこそだと思うんです。世のポジティブに見える人や人の痛みがわかったりする人は、苦しさを知っているから、なにをどうすればプラスに持って行けるというマインドセットを持っていると思って。もちろんもっと苦しんでいる人もいると思うけど、少しでもいいから私もそういう部分を見せて、私だっていつでもハッピーなわけじゃないよって言ってもいいんじゃないかと思ったんです。私も普通にみんなと同じように泣いたりするし、挫折しそうになることもあるし、それでも何とかやっている。そういう姿を見せたいと思った気持ちが、アルバムの新録曲の一つひとつに表れていると思います。

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