稲垣吾郎と香取慎吾 互いのステージに駆けつけ、活躍を喜ぶ――静かに灯り続ける“しんごろ”の絆

 稲垣吾郎が舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を完走した。7月から10月までの3カ月間、魔法界のスーパースターであるハリー・ポッターとして生き抜いた稲垣。その姿を、誰よりも楽しんだのは香取慎吾だったのかもしれない。

 10月31日、香取は自身のX(旧Twitter)を更新。「ハリーポッターの事ぜんっぜん知らない僕だけど すごくすごくすっごく 面白かった」(※1)と投稿し、稲垣演じるハリーを思わせる丸メガネをかけた自身の写真を添えた。稲垣のポスターを前に“慎吾・ポッター”になりきったような姿には、数々のパロディキャラクターを演じてきた香取らしい遊び心があふれていた。

 多忙なスケジュールの合間を縫い、稲垣の最終公演までになんとか都合をつけたのだろう。そこには、これまで稲垣から受け取ってきた愛情への感謝も込められていたように思えた。

香取の晴れ舞台には、いつも駆けつけていた稲垣

 さかのぼれば、稲垣は香取のソロ活動に対して、静かにエールを送り続けてきた。2021年4月、東京・明治座で開催された香取の初ソロステージ『さくら咲く 歴史ある明治座で 20200101 にわにわわいわい 香取慎吾四月特別公演』に、稲垣は駆けつけた。翌日、香取はInstagramを更新し、「昨日の昼公演 #吾郎ちゃん が観に来てくれた 涙が出る 嬉し涙かな 僕がステージで歌っている。そのステージを吾郎ちゃんが観に来てくれた。こんな時がくるとは」(※2)と感激をつづっていたのが印象的だった。

 2023年、香取のアリーナツアー『Black Rabbit』では、ちょっとしたハプニングも。初日に稲垣が来場したものの、香取はそのことをすっかり忘れてしまい、MCでも触れないまま公演が終了。それにもかかわらず、稲垣は翌日の本番前に香取へ電話をかけ、「あの曲で泣けたよ」「本当に素晴らしいショーだった」と感想を伝えたという。そんなエピソードを、翌日の公演のMCで語る香取の笑顔が、今も記憶に残っている。

 稲垣は音楽ライブのみならず、香取が寺山修司を演じた主演舞台『テラヤマキャバレー』もしっかり観劇。自身のラジオ『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)で、ファンミーティングの合間に寺山修司のドキュメンタリーを観て役作りに励んでいた香取の様子を明かすなど、彼の努力を静かに見守っていたことが窺えた。

 一方の香取も、そんな稲垣にならうように、『多重露光』や『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』など、稲垣の主演舞台を観劇してきた。ふたりがあまりに自然に行うので一見“当たり前”に思えるが、忙しい日々のなかで相手の活躍を喜び、実際に足を運ぶというのは決して簡単なことではない。互いが互いの表現を見つめ、言葉にしすぎないまま支え合う関係性は、長い年月のなかで育まれた信頼そのものだ。

香取が楽しんだのは、稲垣の新たな挑戦に滲んだ人間味!?

 ところが今回、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』の稽古期間中に開催された香取のコンサート『SHINGO KATORI 1st LIVE TOUR Circus Funk 2025』に、稲垣が足を運べないという“異例の事態”が発生した。6月、東京公演初日には草彅剛が観覧に訪れたことから、2日目には「次は稲垣がくるのでは」と多くのNAKAMA(ファン)が予想。しかし香取は、「今日は……きていません!」と、期待に膨らんだ客席に向かって明るく報告。続けて、「(稽古で)忙しくて“イラチ”(イライラしてる)なんだって」と笑いを誘った。それほどまでに、『ハリー・ポッターと呪いの子』という作品が、これまでの舞台とは一線を画すものであることを感じさせた。

 実際に観劇してみると、その思いは確信へと変わった。本作は、もはや演劇の枠を超えた“イリュージョンショー”。魔法界を舞台に、モノが宙に浮かび、火花が散り、時を遡る装置・タイムターナーが作動すると舞台全体が歪むような錯覚を覚える。休憩を挟んだ約3時間40分の上演時間に、何十年もの時の流れが凝縮されており、セリフもまるで1.5倍速で再生しているような密度の濃さ。魔法の呪文が飛び交うなか、キャストの集中力と表現力が試される舞台だったと思う。舞台経験豊富な稲垣にとっても、新たな挑戦だったに違いない。

 それでも、稲垣のハリー・ポッターはまさに適役だったと言える。幼い頃からアイドルとして脚光を浴びてきた稲垣が、ハリー・ポッターとして街で声をかけられた際に見せる自然な対応。それは、まさしく稲垣吾郎とハリーが共鳴する瞬間で、思わず頬が緩むのを抑えきれなかった。

 また、息子との関係に悩む親としての姿は、手のかかる植物や気まぐれな愛猫たちに翻弄されるプライベートの稲垣を連想させた。上演前のインタビューで「タイムターナーを使って過去に行けるとしたら?」と問われ、「20代の頃に飼っていた猫に会いに行きたい」「改めてちゃんと彼女たちに会って、可愛がりたい」(※3)と語っていた稲垣。それは、多忙で家を空けることが多かった当時を思い返しての言葉だという。そんな言葉にも、彼の“素”の優しさと誠実さが透けて見えた。

 ひょっとしたら「ハリーポッターの事ぜんっぜん知らない僕だけど すごくすごくすっごく 面白かった」という香取も、この舞台を通じて浮き彫りになった稲垣の人間味を楽しんだのではないだろうか。同時に、「こんなに大変な舞台だから自分のコンサートにもこられなかったのか」と納得しながら――。

 新しい地図を広げてからは、香取と草彅の“しんつよ”コンビに注目が集まることが多く、稲垣は「ふたりの関係に入り込めない領域がある」と冗談まじりに話すこともしばしば。だが、『ハリー・ポッターと呪いの子』という壮大な舞台の裏では、稲垣と香取の“しんごろ”コンビのあいだにある静かな絆が、ひっそりと灯り続けていた。

 30年以上の時を超えた、魔法のような奇跡的な関係性。もし、いつか機会があれば、そんな“しんごろ”の芝居がぶつかり合う舞台も観てみたいものだ。

※1:https://x.com/ktrsngofficial/status/1984256500773294161
※2:https://www.instagram.com/p/CN0YnjzBemb
※3:https://www.kateigaho.com/article/detail/179275

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