シンガーソングライター・Gakuに初インタビュー 悲しみという感情に寄り添う、自分と誰かを救える歌
Gakuが、新曲「Blue」をデジタルリリースした。
歌うことが好きだった少年が、一人のシンガーソングライターとして目覚めたのは、ある辛い経験をもとに作った「偽り」という楽曲がきっかけだった。以降、自らの“悲しみ”を歌にすることで、誰かのことを救えたらーーそんな願いを歌声に込めながら、人々にそっと寄り添う楽曲を届けるようになったという。
新曲「Blue」でもテーマとなったのは、心の痛みや葛藤。そのような心情と向き合うようになったきっかけや最新曲に関するエピソード、今後目指すシンガー像など、話を聞いた。(編集部)
「19年間、自分を犠牲にしてきたのか」“悲しみ”から生まれる楽曲たち
――小さい頃から音楽が身近にあったそうですね。
Gaku:お父さんが音楽好きで、家にドラムとギターとベースがありました。初めてギターを触ったのは3歳くらいの頃。お父さんに弾き語りを教わって。
――すごい。そんなに小さな頃から。
Gaku:歌も好きで、家にあるカラオケでよく歌ってましたね。本格的に音楽を始めたのは、18歳の頃でした。当時高校生だったのですが、ちょうどコロナ禍で、文化祭や体育祭、修学旅行などの行事が全部潰れてしまったんです。ずっと家にいたので、ギターの練習を始めて。それがきっかけで「音楽の専門学校に進学したい」と思うようになって、音楽の道へどんどん進んでいきました。
――専門学校進学後、どんなことを感じましたか?
Gaku: 中学・高校時代に友達とカラオケに行った時、上手いと言ってもらえることが多かったんですよ。その時は嬉しいと思っていたけど、専門学校の授業でいろいろな技術を学んでいくうちに「上手い」は褒め言葉じゃないなと思うようになって。ピッチが正確な人は、専門学校にいくらでもいる。なので、ただ上手いだけじゃなくて人を感動させられるような歌を歌いたいなと思うようになりました。「自分にしか出せない歌声ってどんなものだろう?」と考えながら過ごしていましたね。それは今もずっと考えていることです。
――永遠の課題というか。
Gaku:そうですね。完成することは多分ないんだろうなと思っています。ただ、自分にしかないものは少しずつ見えてきていて。僕、声がデカいんですよ。「マイクいらないね」と言われるくらい。だけど音量は大きいのに切なく聞こえるので、切なさとパワフルさが自分の強みなのかなと思ってます。僕はブルーノ・マーズの歌い方を参考にしているんですけど、そもそも身体の作りが違うから、真似することはやっぱりできなくて。「俺だったらこうするな」という感じで、今は探求しまくってます。そういう探求自体がずっと楽しいし、表現力が広がったら、歌うのがもっと楽しくなるのかなと思いますね。
――音楽の趣味や楽曲制作についても教えてください。
Gaku:小さい頃は主に洋楽、ジャスティン・ビーバーとかをめちゃめちゃ聴いてました。お父さんの影響で、長渕剛さんやTHE BLUE HEARTS、矢沢永吉さんも好きになりましたね。中学の時はボカロをめちゃくちゃ聴いていて、オタクと呼ばれていたくらいでした。自分で曲を作るようになってからは、話題の新曲は全部チェックするようにしています。なので、けっこう幅広く聴いていると思います。楽曲制作を始めたばかりの時期は、僕自身、あまり引き出しが多くなかったので、他の曲から「このリズムいいな」「このコードいいな」というふうにきっかけをもらいつつ、自分の手で広げていくことが多かったです。作曲に関しては洋楽から影響をかなり受けていて、コードを4つしか使っていない曲も多いです。洋楽的なコード進行の上に日本のポップスのメロディが乗っているのが、Gakuの楽曲のオリジナリティになってるのかなと思います。
――歌詞についてはどうでしょう?
Gaku:最初は歌詞を書くのがとても苦手で、メロディは山ほどできるのに歌詞ができないという状態が長く続いていました。だけど、19歳の時に作った「偽り」という曲がきっかけで、自分は「悲しい」「苦しい」と思っている時ほど歌詞をスラスラ書けるんだなと気づきました。
――今年4月に1stシングルとしてリリースした楽曲ですね。
Gaku:はい。僕は元々イエスマンで、自分の感情を押し殺してでも、人に優しくしてしまうところがあったんです。次男だから、兄と妹の仲介をしたり、我慢をしたりすることも多くて。「みんなにハッピーな気持ちでいてほしい」という気持ちから「人のために」という生き方が染みついてました。だけど、こんな生き方ってもったいないなと思うようになって。「俺、19年間、自分を犠牲にしてきたのか」とすごく悲しくなって、「偽り」はその悲しみがきっかけでできた曲。19年間の蓄積が曲になって一気に出た感覚がありました。
――「偽り」では〈あと少しだけ 自由が欲しいんだ〉と歌っています。
Gaku:まさに「俺は自由になるんだ」「これからは誰のためでもなく、自分のために生きる」と思いながら作った曲でした。実際「偽り」を作って以降は、自分のやりたいこと中心で生きられている実感があります。完成後の手応えも大きかったです。それまでもオリジナル曲は作っていたんですけど、どこか腑に落ちていなかったんですよ。専門学校の先生からも「絵が見えてこない」と言われていたし。だけど授業で「偽り」を披露したら、先生が「何を歌いたいのか、すごく伝わってきた」と言いながら泣いてくれた。その時「俺の音楽にも人を感動させられる力があるんだな」と思うことができました。「だったら、Gakuにはこんなことができるはず」「こんなことをやりたい」という感じで、世界が一気に広がりましたね。
悲しみという感情に〈BLUE〉と名付けた理由
――そして9月24日に新曲「Blue」がリリースされました。いただいた資料に「悲しい出来事に直面した日に書き下ろされたバラード」と書いてありましたが。
Gaku:具体的に何があったのかは言えないんですけど……自分の無力さを実感する出来事だったんです。元々ポジティブな性格だから、基本的に「なんとかなるっしょ」精神で生きてきたし、実際になんとかなることも多かったんですけど、その時は自分の力じゃどうしても解決できなくて。「なんにもできないじゃん」「全部投げ出してやろうかな」と落ち込んでいた時に、「いや、この気持ちを曲にしよう」と思いながら、すぐに曲を書き始めました。
――悲しみという感情を〈BLUE〉と名付けて、〈僕を蝕む〉存在だと定義しつつ、〈今日は一緒に寄り添って〉と歌っていますね。
Gaku:僕は一人で悲しんでいる時、「誰かそばにいてくれたら」と思うんです。でも悲しんでいる姿を人にあんまり見せられないから、結局一人ぼっち。そんな時にそばにいてくれるのは、悲しみというこの感情だけだなっていう……だから〈BLUE〉と名付けて、〈一緒に寄り添って〉と歌っているんです。つまり、一人を紛らわせるために曲を書いているということですね。
――Gakuさんは夜になると、つい考え事をしてしまうタイプなんでしょうか?
Gaku:いや、そんなことはなくて。基本すやすや寝てます(笑)。だけど「Blue」のきっかけになった出来事とか、何かの拍子に、自分という人間の底に蓄積している何かにぶつかって、一気にこう、「うわー!」となってしまうことがあるんです。それが曲になっているんですけど、ここまで衝動的に曲を書いたのは「Blue」が初めてでした。
――それほど悲しみが深かったんでしょうね。
Gaku:そうだと思います。さっき、他の曲からインスピレーションを受けて作ることが多いという話をしましたけど、「Blue」は何も参考にせず、ボイスメモアプリを立ち上げて、ギターを弾いているうちに、コードもメロディも歌詞も降ってきました。その体験が、僕にとっては新しくて。「これ、ちゃんと曲として成立してるのかな?」と思いつつ、「いや、このコード、メロディ、歌詞がいいんだ」という確信が……「これだ」と思えるものがバチッと出てくるような感覚がありましたね。
――以前は書くのが苦手だったという歌詞も、確信を持って書けたんですね。
Gaku:はい。〈今夜だけでも僕を/世界の主役にしてくれ〉というフレーズがありますけど……僕の部屋は天井に窓があって。窓から差し込む月の光を見て「俺を照らしてくれるスポットライトみたいだな」と思ったんです。スポットライトと言っても「俺がこの世界の主役だ! マジで気持ちいい!」という感じではなく、「今、とんでもなく悲しくて落ちているこの俺を、せめて世界の主役にしてくれよ」「みんな見てくれ」みたいな。
――ボーカルレコーディングはいかがでしたか?
Gaku: 「偽り」の時は、歌にまだ迷いがあったんですよ。オリジナル曲を歌うのは、カバー曲を歌うよりもやっぱり難しい。カバー曲には“正解”があるので、曲を聴き込んでいるうちに、「こういう歌い方をすれば上手く聴こえるな」「この曲にはこういう発声が合ってる」というものが徐々に見えてくるんです。だけどオリジナル曲は、そうはいかない。レコーディングの日になってもまだ答えが見つからず、「どう歌ったらいいんだろう?」と考えながら歌っていました。だけど「Blue」のレコーディングを通じて、「これが俺の歌い方だ」と言えるものが見つかった気がします。それ以降は、レコーディングの時にさまよいながら歌うことがなくなりました。
――曲作りでもボーカルレコーディングでも、自分自身が「これだ」と思えるものをしっかり表現できたと。ご自身にとって大きな転換点になったのでは?
Gaku:そうですね。それにライブで「Blue」を歌った時に、涙を流している方がいたのが印象に残っていて。「この曲を作れてよかったな」と強く思っています。
――Gakuさんの中にある「自由になりたい」という気持ちに、音楽は答えを与えてくれていますか?
Gaku:曲を書いて、歌を歌うことによって、どんどん自由になれている感覚があります。それは音楽を始めた18歳の頃からずっと感じていることですね。
――今後、どのような歌を歌っていきたいですか?
Gaku:自分を救える歌を書いて、それが誰かを救える歌にもなってくれたらいいなと思います。僕、もしも悲しんでいる人がいたら、その人を助けたいんですよ。恥ずかしい話、歌詞を書きながら「きついな」と思ったり、泣いてしまったりすることもあります。だけどいざ完成して、曲を聴いた人が感動したり喜んだりしてくれているのを見ると、「よかったな」と思える。……そう考えると、「人のために」という気持ちが結局染みついているんだなって話になるけど、音楽をやることは自分の感情の発散にもなっているから、きっとWin-Winなはず。
――あの頃とは違って、自分を押し殺していないわけですからね。
Gaku:そうそう。「今、悲しんでいるあなたに向けて歌っていますよ」と音楽を通じて伝えられたらと思います。あと、僕はライブが好きだから、来てくれるみんなが楽しめる曲も書きたい。「家でチルしたいな」と思った時に聴けるような曲も作りたい。やりたいことがたくさんあります! たくさん曲を書いて、たくさん届けたいです。
――ミュージシャンとして叶えたい夢はありますか?
Gaku:日本武道館でお父さんと共演すること。自分で武道館ライブを開けるようになって、ゲストとしてお父さんに出てもらって、一緒に歌いたいです。
――お父様から受けた影響はやはり大きいですか?
Gaku: そうですね。音楽はもちろん「文武両道」の精神とか、本当にいろいろなことを教わって今の自分があるので。僕が一番尊敬している人なので、早くデッカい恩返しがしたいです。
■リリース情報
4th Digital Single『Blue』
2025年9月24日(水)リリース
https://lnk.to/Blue_Gaku
3nd Digital Single『偽り~Nostalgie ver.~』
2025年8月20(水)リリース
https://lnk.to/itsuwari_Nostalgie_ver_Gaku
2nd Digital Single『切夏歌』
2025年7月11日(金)リリース
https://lnk.to/setsugekka
1st Digital Single『偽り』
2025年4月5日(土)リリース
https://orcd.co/gaku_itsuwari