ストリーミング＝ロングヒットにとどまらないミセスの“無双状態”

　リカレントルール導入においては、すでに適用対象の曲がTikTok等で再ブレイクしたとしても減算処理適用のために上昇しにくいなどのデメリットが発生する可能性も考えられる。ただ個人的には、今回のリカレントルール導入を特定のアーティストへのチャート対策という誤った見方で捉えられることの方が懸念される。

　というのも、今回のリカレントルール導入に際し、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴（Vo/Gt）による見解（※4）に注目が集まったのだ。

　Billboard JAPANの上半期チャートでは主要3つのチャートすべてをMrs. GREEN APPLEが制する可能性が高く、また最新のソングチャートにおいて52週以上ランクインした曲の実に3分の1が彼らの作品ゆえ、リカレントルールの影響は免れないだろう。

　リカレントルールはチャートの新陳代謝が目的のため、その適用に伴い新作がこれまで以上に高い位置に登場しやすくなることは間違いない。しかしながら、ロングヒットすればリカレントルールがいずれ適用されるとして、やはりストリーミングで人気を集めることが重要なのは今後も変わらない。

　Mrs. GREEN APPLEのチャート動向、そして人気の背景を追いかけると、『MUSIC AWARDS JAPAN』受賞に象徴されるような作品の質の高さ、リリースの多さのみならず、リリース時のマーケティング施策の徹底、記録達成時のSNSでの発信、そしてバラエティ番組や映画など音楽番組にとどまらないメディア露出などにより、注目度が高まった際にその増幅を図るという手法に長けているといえる。そして、そのことがストリーミングの強さにもつながっている。

　その増幅については、筆者ブログでグラフ化して示している（※5／「2022年以降大ヒット曲におけるビルボードジャパンソングチャート 累計ポイント推移」参照）。ストリーミング5億回再生を早い段階で記録したMrs. GREEN APPLE「ライラック」を含む4曲のソングチャートにおける累計ポイント推移を示したものだが、「ライラック」が“逆くの字型”になっていることが分かる。年末年始のテレビ露出および施策の徹底を経て、「ライラック」が再度ブーストしているのだ。

　ストリーミングはロングヒットしやすい一方で、緩やかに後退する性質がある。ゆえに“逆くの字型”は珍しく、Mrs. GREEN APPLEによる施策の賜物、そして人気のさらなる上昇に至ったことの証明といえるだろう。彼らの無双状態にはきちんとした理由があるということは、知っておく必要がある。ルール変更後もそのような動向が可視化されていくことを願いたい。

　Billboard JAPANはリカレントルールを下半期初週のチャートから適用する。ソングチャートは6月4日、アルバムチャートは翌5日に発表されるが、Billboard JAPANは減算処理の具体的な計算方法を明示していないため、チャートがどう動くかは蓋を開けてみなければ分からない。下半期初週のチャートに注目だ。

※1：https://www.billboard-japan.com/chart_insight/detail?kind=h100&date=2025-06-02&sort=chart&main=215248#rank_or_point=rank&week_or_date=week&show_week=30
※2：https://www.billboard-japan.com/chart_insight/detail?kind=albums&date=2025-06-02&sort=chart&main=203036#rank_or_point=rank&week_or_date=week&show_week=30
※3：https://x.com/Billboard_JAPAN/status/1400023446063517698
※4：https://x.com/MotokiOhmoriMGA/status/1929437137767903659
※5：https://www.imaoto.com/entry/2025/05/11/070000