カメレオン・ライム・ウーピーパイが本当にやりたいこと――『Whoop It Up』で遂げた進化を語る
「自分には好きなことしかできないな」みたいな覚悟が決まっちゃってる
――「So-so Life」はあらためての宣言じゃないけど、「これがやりたいんだ」「こういうことが言いたいんだ」「私はこういう人なんだ」ということをストレートに伝えるものになった感じがしますよね。
Chi-:まさに。アルバム作った時の気持ちが出ていると思います。
――今回のアルバムって、もちろんいろいろなコラボレーションがあったりするし、いろんなフックやアイデアも詰め込まれているんですけど、派手すぎないというか、無理にアッパーになりすぎていないというのが新鮮で。テンポ感も全体的に落ち着いているし、グルーヴがちゃんとあるようなテイストで統一されていますよね。
Chi-:それは狙っていたというより、勝手にそうなっていきました。もちろん“踊れる曲”というのはあるけど、それだけじゃなくて内側から熱くなる感じというか。
――みんなで一緒に踊れる、楽しく踊れるっていうことはずっとキーワードではあり続けてると思うんですけど、そこの定義も変わってきたのかなって。
Chi-:たしかに今回に関しては、みんなで踊って騒ごうというのももちろんそうなんですけど、それプラス、まわりとかは関係なく、一人ひとりが心の底から熱くなれるものになればいいなと思って。アルバムのアートワークも――頭から手が出てるやつがそうなんですけど――ライブとかで「イエーイ!」みたいな感じも楽しいんですけど、そうやって盛り上がろうと思わなくても頭の形が変わっちゃって手が出ちゃう、みたいな。そうやって勝手に踊り出しちゃう感じを意識しました。
――そうやって一人ひとりが熱く盛り上がっていくことで、実際は“So-so”なライフでもちゃんと生きていけるというか、楽しんでいけるよ、ということですよね。
Chi-:はい。深く刺さればいいなと思いました。
――だから今回のアルバム、すごく変な言い方なんですけど、生活に馴染むような感じがしたんですよ。日々生きていくなかで、すごくフィットするような感覚がある。前はもっと非日常というか、日常からぶっ飛んでいくようなエネルギーがあったし、それがすごくいいところだったと思うんですけども、もっと聴く人に寄り添っていくというか。
Chi-:そうですね。たぶん聴く人というよりも、自分に寄り添っていったのかな。でも、そこを経て、またぶっ飛んだ感じもやりたいなと思っているので、いい感じになってきた気がします。
――「So-so Life」の歌詞を書いている時はどんなことを考えていましたか?
Chi-:「なんか音楽つまらないなあ」とちょっと思った時もあったんですけど、結局見方次第でどうにでもなるということをあらためて思ったんですよね。こうやって音楽をやれているのも、よく考えたらめちゃくちゃ恵まれていることだし、自分が勝手に始めた話なので、それを自分が「つまんない」とか思ってるのはもったいないな、って。そういう気持ちを書きました。私には考えすぎる癖があるんですけど、そのなかで考えてみても、とりあえず続けるということはアリだなと思えて。やっていけばいい方向に転がっていく時もあるし。
――なるほど。一見ヤケクソみたいにも見えるけど――。
Chi-:ああ、そうですね。それもあります(笑)。いいようにも言えるけど、半分諦めてるというか。気持ちの半分は、「いろいろ考えても自分には好きなことしかできないな」みたいな覚悟が決まっちゃってる。それはすごく出てるなと思いますね。
――そこがすごく正直なところだなと思うんです。たとえば、「今はつまらない日常だけど、いつかきっとよくなるよ」みたいなことは言わないわけじゃないですか。むしろ、「ずっとこういう日常が続いていくだろうけど、それも楽しめたもん勝ちだよね」みたいな感じ。
Chi-:はい。そう思いましたね。「結局、一生こんな気持ちなんだろうな」っていう。前の自分からしたらすごい楽しいはずなのに、「ああ……」とか思ってしまって。でも、それもまた見方を変えたらめちゃくちゃ面白くなったり。状況じゃなくて自分の気持ち次第なのかなって思います。
――そうやって曲を作っていくなかで、Whoopiesとはどんなコミュニケーションを取っていたんですか?
Chi-:Whoopiesとは本当に毎日作業部屋で作業していて、そのなかでふたりは常に変わらず、毎朝8時くらいから夜7時、8時とかまで、ずーっと曲を作っていて。そこが本当に化け物っぽい(笑)。でも、ふたりともそれを楽しんでやっているんですよね。なのに、私はいろいろ思っちゃったり、それをWhoopiesに言っちゃったりして。「なんかうまくいかないな」と思った時でもふたりは楽しそうに楽曲作ったり踊ったりして、それを見ていて「やっぱり楽しんだもん勝ちだよな」と思いました。
――Chi-さんにとって、ふたりがそばにいるというのは大きかったんでしょうね。
Chi-:そうですね。常に作ってるのがすごいなと思う。そう決めているというか。でも、今回はそこに私もどんどん入っていくようになっていったんです。前は遠隔的にやっている感覚もあったんですけど、今回は本当に一緒に作った感覚。作りながら「こういうほうがよくない?」と言えるのが楽しかったんですよ。作業部屋に行く回数が増えたし、曲ができる最初から一緒に聴いて、話をして。今また新しい曲も作り出しているんですけど、それも楽しんでいます。
――なるほど。今回のアルバムを聴いていてもうひとつ思ったのは、サウンドと歌詞の距離が近いというか、歌詞で言おうとしていることとサウンドの温度感やニュアンスみたいなのが、よりハマっている感じがするんです。それはもしかしたら、今みたいな作り方をしたからなのかもしれない。
Chi-:そうだと思います。
――ドラマのエンディングテーマになった「Secret March」とかも、「トルコ行進曲」で始まる感じと歌詞の世界観がすごく合っていて。これまでのカメレオン・ライム・ウーピーパイにはなかったタイプの曲ですよね。
Chi-:チームの人たちと一緒にごはんを食べながら、どういう曲作るか話し合う会があったんです。レンタルスペースみたいな部屋を借りて、ピザを食べたり、たこ焼きを作ったりしながら、みんなでホームパーティーみたいなことをしているなかで「こういう曲はどう?」「こんな曲は?」とかやって。それがありがたかったんです。堅苦しく会議室でやっていたらいろいろ思い詰めちゃっていたと思うけど、楽しんでパーティーみたいな感じで話していたから。そこで「サンプリングやってみてもいいんじゃない?」という話が出てきて作っていったのが「Secret March」なんです。やっぱり楽しみながらやるのはめっちゃ大事だなって思いました。