Little Black Dress、解放の歌「PLAY GIRL」を語る 異色のドラマと呼応するメッセージ
Little Black Dressから2025年第1弾となるデジタルシングル「PLAY GIRL」が届けられた。
30代女性の“性”をテーマにしたドラマ『マイ・ワンナイト・ルール』(テレビ東京系)主題歌に起用されたこの曲は、遼(Vo)のルーツである80年代邦楽ロックを想起させるアッパーチューン。〈混みあう駅中の化粧室〉でメイクし、自分の気持ちにスイッチを入れる女性たちを描いたこの曲には、「どんな時も、あなたはあなたのままでいい」というメッセージが刻まれている。
「PLAY GIRL」の制作、現在のLittle Black Dressのモードやこの先のビジョンについて、遼自身の言葉で語ってもらった。(森朋之)
“自分に与えていた課題”からの解放 やるべきことに気づいた2024年
――2025年になって1カ月が過ぎましたが、まずは昨年の活動の手ごたえについて聞かせてもらえますか?
遼:怒涛の一年でした。夏にアルバム(2ndアルバム『SYNCHRONICITY POP』)を出して、11月のバースデーライブで移籍を発表して、シングル(『チクショー飛行 / 猫じゃらし』)をリリースしました。そこから次のアルバムに向けて動き始めたし、すごく変化した一年でした。
――環境が変わったことで、遼さんご自身のスタンスにも変化があった?
遼:解放された気がします。これまで縛りがあったというわけではないんですけど、自分で自分にいろいろな課題を課してたところがあったんです。「こういう自分でいなくちゃいけない」「こういうことを考えないといけない」みたいな……小さい頃からそういうタイプだったんですよね。デビューしたあともそうやってコツコツやってきたんですけど、いろんな人との出会いだったり、自分自身の年齢も含めて、「ここらへんでちょっと力を抜いて、自分を解放してもいいのかな」と思えるようになりました。
――自分に与えていた課題って、どんなものなんですか?
遼:Little Black Dress(以下、LBD)のアーティスト像に対する理想があったんですよね。もともとLBDは、アートディレクターの信藤三雄さんと一緒に作り上げてきた像があって、それを崩したくない――その気持ちは、信藤三雄さんがお亡くなりになった今ももちろんあるんです。「自分を解放する」と言っても、LBDの芯はまったく変わってなくて、レトロな感じだったり、昭和歌謡、ブラックという色へのこだわりはずっとあるし、好きでやってることなんです。そのうえで「もっと自由にやっていいんじゃない?」という気持ちが出てきたということでもあって。そのぶん、まわりのスタッフの方は大変かもしれないですけど(笑)。あと、「自分にとっていちばん大事なのは、いい曲を作ることだな」と再認識できたのも大きかったです。
――いちばん大切なのは曲だと。
遼:はい。「これもやらなきゃ」「あれもやらなきゃ」っていろいろ手を出しているうちに、そのあたりがよくわからなくなってしまって。というのも、以前、SNS用の映像を、すごく時間をかけて全部ひとりで作っていた時期があって、それがルーティーンみたいになっていたんですよね。そんな中で、ある日「私って、何をする人だったっけ?」と考えちゃったりする瞬間があったんです。もちろん曲は作っていたんですけど、自分のなかで納得できる生活のバランスにならなくて、いろいろ見つめ直してみたら、「私がやるべきなのは、かっこいい曲を作ることじゃない?」って気付いたんです。移籍したことをきっかけにアドバイスしてくださる方も増えたし、皆さん、すごく力を貸してくれて。今は自分がやるべきことに集中できています。
――素晴らしい。ライブに対する意識やスタンスについてはどうですか?
遼:ここ2、3年はバースデーライブだったり、応援してくださっている方々の前でのライブが多かったので、今後は“初めまして”の皆さんにもいっぱいきていただけるようなライブを増やしていきたいなと思っています。お客さんとの掛け合いはもちろん、バンドメンバーの皆さんとのご縁だったり、一緒に音楽を鳴らして、ああでもない、こうでもないってやっている時間も楽しいですね。移籍第一弾の「チクショー飛行」のアレンジは、バンドメンバーの方々とのやり取りのなかで出来上がっていったんです。それを整えて、初めて自分でアレンジした曲としてリリースさせていただきました。
新曲「PLAY GIRL」リリースに至る運命的なドラマとの出会い
――普段、アレンジはどうやって作ることが多いんですか?
遼:曲によっても全然違うんですが、「こういう雰囲気にしたい」というデモ音源を自分で作って、それをアレンジャーさんに渡して話し合いながら形にすることが多いです。新曲の「PLAY GIRL」はアコギと歌だけのデモをまず作って、それをアレンジャーの笹路正徳さんにお渡しして、そこからは基本的にお任せしました。
――では、「PLAY GIRL」について聞かせてください。この楽曲は以前から存在していたそうですが、作ったのはいつ頃ですか?
遼:3年くらい前ですね。実は、あるきっかけがあって書いた曲で、アレンジも進めていたんです。ただ、自分のなかでは「この曲は今じゃない気がするな」という感じがあって。案の定、この曲は当時リリースされなかったんです。私としてはとても気に入っていたし、「いつか、この曲の力が活かせるタイミングでリリースしたい」と思っていました。今回、自分でもびっくりするくらいぴったりのドラマ(テレ東ほかドラマチューズ『マイ・ワンナイト・ルール』)の主題歌に採用していただいて、すごく運命的だなって感じています。
――ふさわしいタイミングと状況でリリースに至った、と。3年前の「今はこの曲ではない気がする」という遼さんの直感は当たっていたわけですね。
遼:そうなんですかね(笑)。直感といえば、中森明菜さんの「北ウイング」という曲って、もともとは違うタイトルだったそうなんですよ。明菜さんご自身が「『北ウイング』がいいです」とおっしゃったそうで。そのエピソードを知った時も、「やっぱり自分の感覚を信じるのは大切だな」って感じたことを思い出しました。
――さすが、昭和歌謡に詳しいですね!
遼:そういう本ばっかり集めてるんですよ(笑)。あの時代の音楽がずっと好きなので、いろいろと知りたくなっちゃうんですよね。
――「PLAY GIRL」にも80年代の邦楽ロック、歌謡ロックのテイストが色濃く反映されていて。
遼:この曲のアレンジに関しては、先ほどもお話した通り、笹路さんの力が大きいです。メロディやギターのフレーズなどはそのままだし、アコギの弾き語りでデモ音源を作った時点でレトロな世界観があったと思うので、サウンドの方向性も必然的にこうなったのかなと。笹路さんが作ってくださったアレンジを聴いた時も、「めっちゃかっこいい!」って。イントロのシンセのサウンドもすごく素敵だし、華やかさや力強さがあって。もともと曲を書いた時も、アン・ルイスさんのようなかっこいい女性アーティストをイメージしていたので、まさにぴったりで、うれしかったですね。