前へ進むことを後押ししてくれた新曲「クロール」の誕生

ーーなるほど、では新曲について聞きます。新体制となったHakubiの1曲目となる「クロール」にはどんな思いを込めましたか？

片桐：まず、メンバーが抜けた現状を歌っている曲ではないんです。ただ、引き寄せられるものはあったのかもしれなくて、この曲が前へ進むことを後押ししてくれたのかもしれません。人前で思いっきり泣いたり、思ったことをそのまま言っちゃうとか、そういう衝動を大人になったからとか自分っぽくないからという理由で抑えているとしんどくなる。自分はそういう衝動を子供の頃から伏せていたほうがいいと思っていた人間なんですけど、それをぶち撒けたい、殻を破りたいと思って「もっと衝動に素直になっていいんじゃない」と思って作った曲です。歌詞だけ見ると人によっては「Hakubiってこんなポジティブなバンドだっけ」と思われるかもしれないんですけど、「これもやってみたらいいんじゃない」っていう自分の心の声が動かしてくれている感じがあります。とにかくもがいて進んでるっていうところが、音源を聴いたり、ライブで観てくれたらさらに伝わるんじゃないかと思います。

ーー2人での曲作りは楽曲にどんな影響がありましたか？

片桐：何より、これからのHakubiをどうしていくかの話し合いが大きかったと思います。「自分たちが思うカッコいい音楽って何だろう」ということを深く話せたので、曲作りをどう進めるかの話になった時に共通認識がある上で取り組めるようになった。その時の気持ちだけで曲を作るんじゃなくて、純粋にバンドとしてその曲の正しい方向を見つけられるようになったと思います。

ーー以前よりもHakubiが思うカッコいいと思うものを純度高く曲にできたという感覚ですか？

片桐：そうですね。ルーツを辿って、自分たちの好きなバンドがリスペクトしているものまで遡って音楽を深めることができたし、今年の目標はもっとHakubiを音楽的にしていきたい、もっともっと音楽を深くしていきたい。今までは“Hakubiらしさ”に縛られていたけど、それを取っ払ってやりたいことをやってみようっていうのがこれからのテーマです。

ーー“クロール”という表現もいいですよね。バタフライでも平泳ぎでもなく、もがいてかき分けていく感じが連想されるいい言葉だと思いました。

片桐：最初に見えていた風景は、人がたくさんいる街中です。街ってふと孤独を感じる場所だと思っていて。同じ人間だし、日本人なら喋りかければきっと仲良くなることもできる。なのに本当に全員他人っていうことに孤独を感じて、すごく悲しくなったことがあったんです。そういう時に「私は孤独だ！」って言ってしまえたらいいなっていう気持ちがこの曲の最初のアイデアで、そこから大きな海を連想して、水をかき分けて進んでいけたらっていう思いが“クロール”という言葉に出たんじゃないかなと思います。

ーーまさにMVでは人をかき分けて進む片桐さんの姿が印象的でした。終盤のシーンは渋谷のスクランブル交差点ですよね。

片桐：監督の花田健吾さんと曲のイメージを話していた時に「渋谷のスクランブル交差点ってめちゃくちゃ人がいっぱいいて叫べないよね」って話をしたら「じゃあ渋谷で撮りましょう」と言ってくれたんです。本当に自分が思い描いていた風景に近い映像を撮っていただけました。

ーーラストで片桐さんが飛び跳ねています。

片桐：私は普段絶対やらないですよ（笑）。でもやってみたかった。そういうことなんだろうなって思います。やりたいことを実際やるかどうかの話じゃなくて「私はやれる」っていう気持ちを持つかどうか。あんなふうに渋谷のど真ん中で飛び跳ねてみたいっていう、そういう一歩を踏み出せる力みたいなものをこの曲に持たせてもらえたし、誰かに渡せたんじゃないかと思います。

ーー実際やってみてどうでした？

片桐：やばかったですね、気持ちよかったです（笑）。この曲を聴いた人にも「何かをやってみよう」という気持ちになってもらえたらと思います。

ーーヤスカワさんはどんな思いで演奏しましたか？

ヤスカワ：僕が思っていたことは、Hakubiってみんなが想像するHakubiと、僕らが思うHakubiで結構違いがあるということで。その差を埋めたいなと思っていたし、既存のイメージを壊してもっと新しいものを提示していく必要があった。その最初が「クロール」という曲です。新体制になったタイミングで、いい出だしにしようと思ってました。

ーー〈死んだように生きてることに〉からはじまる箇所でかなり大胆な展開を見せますが、ここにはどんな思いが表現されていますか？

片桐：Hakubiのこれから進んでいく方向を話していた時に「私たちがやりたいことってもっとオルタナティブな音楽なんだろうな」と思っていたんですが、このDメロの部分はまさにそういった音楽からの影響が表れているセクションだと思います。歌詞も含めて、自分たちの中で必要だった要素です。一番もがいているのが伝わる部分だと思っています。

ーー下っていくギターリフがめちゃくちゃカッコいいです。あとはやっぱりAメロの〈“らしくない”ことをやってみよう〉というフレーズが印象的です。ある意味で今はHakubiを大きく変化させるいいチャンスとも捉えられると思いますが、Hakubiを今後2人でどんなバンドにしていきたいですか？

片桐：私たちのルーツだったり好きなものを掘り下げて、もっと純度の高い、私たちの表現を見出していこう、音楽的表現にしていこうっていうのが今の自分たちのモードです。自分の好きなものをやろう、Hakubiで音楽をやろうっていうのがこれからやりたいことですね。

ーーちなみに2人の音楽的なルーツや好きなものはどんなものですか？

片桐：日本だとART-SCHOOLとかTHE NOVEMBERS、あとはLyu:Lyuが私が一番最初に好きになったバンドです。それからその人たちが聴いていた音楽ってなんだろうと辿っていって、NirvanaやFoo Fighters、90年代のオルタナとかを聴いてきました。「クロール」のギターソロを作っている時に最初はただオクターブ奏法だったんですけど、単音でやってみようと思って作ったソロは「Dinosaur Jr.っぽいね」と言われて、いつの間にか私の血として流れているんだと思ったりしましたね。

ヤスカワ：僕はSigur RósとかThe Killers、あとはRide。最近だとWaterparksとPale Wavesが好きです。

ーーそういった自分たちのやりたいことを追求していくバンドにしていきたい。

ヤスカワ：そうですね。いろいろ思う人はいると思うんですけど、僕らはこれまで届けられていなかったシーンの人たちにもアプローチして認められたいっていうマインドがすごくあって、それを片桐とやっていけたらと思います。

片桐：今バンドをやっていてすごく楽しいんです。もっともっと自分たちにはできることがあるって気づけて、それは“Hakubiらしさ”から自由になれたのが大きいと思っていて。この前初めてライブで台湾に行って、そこで待ってくれている人もたくさんいるってことに気づけたので、日本各地はもちろん、もっとアジアや海外にも行ってみたいと思うようになりましたし、とにかく形にこだわらずにやりたいことをやってみたい。バンドとしての形が変わっても歌詞や歌っていることは変わらないし、サポートを入れた4人体制のライブでもHakubiはちゃんと変わらないで進化しているということは伝えられていると思います。

ーー現在開催中のツアー『Hakubi Tour 2024 “underwater”』は順調ですか？

ヤスカワ：急に発表したからみんなびっくりしてましたね。初日の3週間前に解禁だったから。

片桐：みんなを驚かせてしまったけど、ライブを通して自分たちの進化と変わらないところを証明できているし、とてもいいツアーを回れていると思います。

ーーお客さんの反応はどうでしたか？

ヤスカワ：これまでは手が上がっているかどうかとか、会場が盛り上がっているかで良し悪しが決まるようなノリがあった。でもそれって個人的にはしょうもないなと思っていて。聴かれ方もこちらからは提示せずに、好きなようにやったらええ、むしろ体が揺れてるくらいのほうがいいんじゃない、みたいな、そういう価値観のアップデートもこのツアーで進んでいる気がします。

ーーHakubiのライブも生まれ変わっている最中だと。

片桐：サポートを含めて4人になったことで必然的に音圧も違いますし、私も音に乗って歌えている感じがあります。熱量だけで押すライブではなくて、もちろん熱も大切にしつつ、より音楽を届けられるようになったんじゃないかと思います。もっと行間を与えられるような歌を歌えたらと思っているし、歌で表現できる幅がすごく広がったと思うので、これからのHakubiのライブはいろんな受け取り方をしてもらえるようなものになるんじゃないかと思います。

■リリース情報
新曲「クロール」
2024年11月6日（水）配信リリース
配信：https://lnk.to/hakubi_crawl

■ラジオオンエア情報
FM802『RADIO∞INFINITY』
2024年10月31日（木）24:00～27:00
※Hakubi「クロール」初オンエア
DJ：ハタノユウスケ
番組サイト：https://funky802.com/infinity/
X（旧Twitter）：https://x.com/RI_802

■関連リンク
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