リアルサウンド連載「From Editors」第72回：『夏目友人帳 漆』PVの「夏目」と吉森信さんの劇伴で涙

　「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

　第72回は、無事『愛の不時着』を完走した田中が担当します。ダン、幸せであれ！

『夏目友人帳』が帰ってくる

　日付を見て、9月半ばかあ、もうすぐ夏も終わりですね、と書き出そうとしたのですが、とんでもなく残暑。毎朝汗をかきながら歩いていることを思い出してうんざりしてしまいました。四季の中で秋が一番好きなんですが、もう秋ってないよね、って話を毎年しています。四季から五季へ、5〜7月を「初夏・盛夏」8〜9月が「猛暑」とするとかなんとか。「猛暑」、耐えられません。

　と、そんなところでまもなく秋アニメが始まるということでYouTubeでPV情報を探していたときに目に止まったのが『夏目友人帳』新シーズンの本PV！　やったー！　嬉々として開いたのですが……ということで、タイトルの通りです。ずるいですね。皆さん同じことを思っているかと思いますし、たくさんコメントもありましたが、冒頭のメロディとみんなが「夏目」と順々に呼んでいくところでだいぶグッときてしまいまして、思わず涙腺がゆるゆるに。

　さて、この時点でだいぶエモーショナルな気持ちにひたひたに浸かってしまいまして、久々に観たいな〜とNetflixで『夏目』と検索してみると。なんと全シーズンある！　さすが！　ということで第一話を再生。喜多修平さんの「一斉の声」（OP）が流れた途端懐かしさでわー！　とひっくり返り、思わず一時停止してしまいました。不意に懐かしアニソンを食らったときのあるあるですね。そして「夏目観よう！」と思った瞬間から“夏い”気持ちに振り切ってしまっているので、冒頭の蝉の声だけでも「あ〜これだよね〜いいな〜」なんて思いながら観て、久々に夏目とニャンコ先生に会えて嬉しくなり、流れるように差し込んできた中孝介さんの「夏夕空」（ED）で降参です。「懐かしい」が詰まりすぎてる。

　『夏目友人帳は』2008年から10年以上にわたってアニメ化され続けている作品で、前作の第6期にあたる『夏目友人帳 陸』から約7年。劇場版などはありましたが、アニメ放送からは7年、そんなに経ったのかあ。わたしがこの作品を好きな大きな理由が、音楽です。作品のノスタルジックな雰囲気とストーリー、そしてその世界観を支えている劇伴が大好きです。本作の劇伴を手がけているのは吉森信さん。懐かしさが染み渡って、涼しい風が通り抜けるような心地よさを感じるというか。本当に優しい音楽で、余白を感じるゆっくりとした落ち着いた空気感がたまらないんですよね。柔らかな光が差し込む森だったり、夕焼けに染まる空だったり、静かな日常が描かれるその瞬間に溶け込んで、一瞬でそのシーンが特別なものになる。冒頭で蝉の鳴き声の話をしましたが、作中のヒグラシの鳴き声も沁みちゃいます（シーズンごとに作中の季節は揃えられていますが、やはり第一期のイメージが当時の思い出と結びついてるからか個人的には「夏」のイメージが強いです）。

　夏目と妖たちとの交流は、どこか儚くて幻想的で、心に深く残る温かさがある。そしてその後ろには、吉森さんの優しい音楽が流れてるんですよね。10月から始まる新シリーズも、7年ぶりのスタートということでファンの皆さんの期待はぐんぐんが高まっているところ。私もとてもうきうきしています。それに、PVで聴くことができる新たな主題歌も、すごく素敵で……OPが柏木ひなたさん、EDが近藤利樹さん。アニメ放送時に聴けるのをとっても楽しみにしています。正直本PV内の近藤さんの「こまりわらい」でだいぶ心がゆさゆさと揺さぶられています。率直に、早く聴きたい！！！　今から待ちきれません。