「ボーカルレコーディング映像」はアイドルYouTubeの定番に？　メンバーの職人技を覗けるコンテンツの魅力

　ダンスボーカルグループがYouTubeチャンネルを持つことが珍しくない昨今、新しい定番となるコンテンツが「ボーカルレコーディング映像」だ。これはメンバーがレコーディングする様子を収めた映像で、レコーディング映像だからこそ見られる高い歌唱力に好評が集まっている。

　ME:Iは、9月7日に公式YouTubeチャンネルにて、メンバーがレコーディングに臨む姿を収めた映像「'Hi-Five' Recording Behind」を公開。

　「Hi-Five」は、Billboard JAPAN 総合ソング・チャート「JAPAN Hot 100」で自身初の首位を獲得した8月25日発売の2ndシングル『Hi-Five』のタイトル曲。11月8日現在57万回以上再生されている同映像には、ディレクターとのコミュニケーションの中で、11人のメンバーが歌やラップの表現を素早く的確に磨き上げていく姿が収められている。

　例えば、RANは歌詞の〈キラリ 光 君の瞳 Be-be-beam〉という部分で、ディレクターに「イ音で終わる言葉にアクセントをつける」「ラップを2回やってみて、体感したリズムを歌に活かす」という言葉をかけられ、その後すぐに歌のニュアンスを的確に修正。それまでは若干平坦にも聴こえていた歌い方を、ポップで元気さの感じられる歌い方へと変更した。MIUもサビの〈これまで感じたことない Energy〉の部分を、ディレクターの指示に従い、サラッと滑っていくような歌い方から、手でリズムやアクセントを捉えながら歌うことで、独特なアクセントのついた現在の歌い方に修正。他メンバーもRANやMIUと同様に歌やラップを即座に調整する姿が見られ、楽曲の制作過程の一部を窺い知れる、非常に興味深い映像となっている。

　こうしたレコーディング風景の一部を切り取った映像の公開は、日本において、すでにハロー！プロジェクト（以下、ハロプロ）が実践していた。ハロプロは、およそ11年前より『アプカミ』というYouTubeチャンネルを開設。アップフロントグループに所属する各アーティストのライブリハーサルやイベントの裏側等を取材し、ステージや音源が作られる過程を1つのコンテンツとしてファンに提供し続けてきた。このチャンネルの中で、時々ME:I同様に各グループのレコーディング映像が公開されているのである。

　ハロプロのレコーディング映像は、バックステージで活躍、奮闘する“推しメン”の姿を見られる貴重な機会だと感じているファンも多いのではないだろうか。ハロプロといえば、活動を重ねる中で成長するメンバーの姿をリアルタイムに目撃できるのも、各グループを応援する醍醐味の1つ。レコーディング映像は、そうしたメンバーの成長を如実に示してくれる場所なのである。例えば、2023年5月にモーニング娘。'23へと加入した弓桁朱琴。彼女が挑んだ「Wake-up Call～目覚めるとき～」のレコーディングでは、非常に緊張した様子を見せながらも、体全体でリズムをしっかりと刻みながら、ディレクターの指示を的確に理解して歌い方を調整していた。その姿にグループの明るい未来を垣間見ることができたように思う。

　あるいは、歌唱力に定評のあるメンバーが、名物ディレクターとのコミュニケーションの中で歌唱表現を一段と磨き上げていく様も非常におもしろいものである。ハロプロではよく、シャ乱Qのメンバーであるたいせいがディレクターとしてレコーディング映像に登場する。例えば、Juice=Juiceの段原瑠々がたいせいと行ったレコーディングでは、たいせいが歌詞の世界観を一段深めた解釈を提示するたびに、段原が歌い方を微調整していく。その姿はまさに圧巻。世界観を一歩踏み込んで理解するだけで歌声がこんなにも変わるものなのかと、驚きながら視聴したファンも多かったのではないだろうか。

　このようにレコーディング映像は、応援するメンバーやグループ全体の成長を推し測ることができ、各メンバーの歌唱力の高さ、表現力の豊かさを堪能できる、魅力的なコンテンツなのである。