Creepy Nutsの“リベンジ”、千葉雄喜の“結局地元”……数々のドラマを生んだ『THE HOPE 2024』レポート

Kohjiya、終盤スロットに連続出演ーーBIM&IOらに認められる実力者の風格

 自身のアクトを翌22日に控えながら、18時以降のスロットで立て続けに出演。また同時間帯には、全5組のラッパーが登場したのだが、うちCreepy Nuts、Jin Dogg、千葉雄喜は客演を招かず。残り2組であるBIM、IOの双方からステージに迎えられた、唯一のラッパーがいる。今年の“ラップスタア”であり、“ネットをざわつかすプロ”ーーKohjiyaだ。

Kohjiya(撮影=yusuke_kitamura)

 まずはBIMのステージ終盤、最新曲「DNA (feat. Kohjiya & PUNPEE)」にて登場。サプライズ出演したPUNPEEとともに、いわば“完全体”での披露となり、高らかにフックを歌い上げる。『ラップスタア 2024』でこそ、クールなラップを聴かせてくれたKohjiyaだが、Tio「Cloud 9 (feat. Kohjiya)」など、現在の知名度を得る以前にはポップな楽曲にも参加しており、そちら路線でのフックもお手のもの。「DNA」という楽曲、そしてKohjiyaの開放感あるフロウは、BIMの登場前からフロアが期待していたものだったのではないだろうか。

BIM(撮影=Daiki Miura)

 続いて、IOの出番では、自身の名を広く知らしめた「Racin’ feat. Kohjiya」で姿を表すと、まさかのセット下手に腰を落とす。もはや自身のステージのように堂々と。「あ、もはや座っちゃうんだ」と筆者はそう思ってしまった。そして、IOに劣らぬ風格で静かに息を呑まされる。彼が一時期、SNSの紹介文としていた、リル・ウェイン「6 Foot 7 Foot」の有名なラインからの引用“Real G's move in silence”とは、このことだったのかもしれない。

IO(撮影=yusuke_kitamura)

 そのほか、この日の前半にはSALUのステージにも登場していたほか、翌日も自身のアクトを終えてすぐ、Kaneee、Yvng Patraとともに「Champions」を歌唱したかと思えば、Bonberoによって「Naked Eyes」で再び召喚。これにはBonberoからも「さっきも出ていたよね?」という旨のツッコミが入っていた。かつてのJP THE WAVY、Watsonのように、これからの未来にはKohjiyaがいる。彼の引っ張りだこな様子からは、この時代におけるシーンの最前線を見据えることができた(とはいえ、先に名前を挙げたラッパーは、どちらもいまだ引っ張りだこなわけだが)。

千葉雄喜「チーム友達」は現代の“ヒップホップ一本締め” 貫かれる“結局地元”なスタンス

 2024年、最も注目を集めたラッパーと言っても、過言ではないだろう。千葉雄喜が、ヘッドライナーとして登場。〈チーム友達〉ーーもはや、家族や友人の声よりも耳にしたこのフレーズで、フェスのトリを轟音で締め括った。

 本人の登場と同時に、ステージには数えるのを諦めたくなるほど、多数の“友達”が。ある者は、頭にラバーカップを装着していたり、またある者は、SupremeとMartine Roseがリリースしたばかりのゲームシャツを着用していたり。その大多数が本当に誰なのかわからないのだが、ステージ上に謎のムーブメントが巻き起こっていることだけはよくわかる。

 曲中、「“契り”足りないんですけど!?」と、件のフレーズでDJに待ったを掛けたかと思えば、頭からやり直すときには、前述の群衆にずかずかと歩いて紛れ込み、また出てきたかと思えば「iPhone振って!」と叫ぶ。あまりに自由すぎるし、もはや千葉の姿が見えない。

 冷静に考えて、つい先日に公開された新曲「Jameson Ginger」を含めても、まだ持ち曲が3曲しかない千葉。しかも、うち1曲は、あのミーガン・ザ・スタリオンとのコラボ曲「Mamushi (feat. Yuki Chiba)」だし、この日も結局、「チーム友達」の1曲のみでステージから消えていった。が、なぜ彼のステージにほかにはない魅力を感じてしまうのか?

 その答えのひとつに、ステージに無数の人を上げるヒップホップ精神ーー言い換えれば、“結局地元”のスタンスがあるのではないだろうか。我々が見せつけられたのは、いわゆる“地元ノリ”の究極形態。そして〈チーム友達〉は、そんなノリに一本締めをするかのように、誰もが共鳴したくなる言葉として機能している。乱暴な言い方だが、KOHHでも、千葉雄喜でもどちらでもよい。結局、いつまで経っても彼には勝てない。そう思わされながら、この日の会場を後にした。

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