Creepy Nutsの“リベンジ”、千葉雄喜の“結局地元”……数々のドラマを生んだ『THE HOPE 2024』レポート

数々のドラマを生んだ『THE HOPE 2024』

 国内最大級のヒップホップフェス『THE HOPE 2024』が9月21日と22日、東京・お台場THE HOPE特設会場にて開催された。

 2022年に始動し、通算3回目を迎えた今回は、同フェス史上初となる2days公演に挑戦。両日合計で、アーティスト58組、DJ29組が出演した。そのうち本稿では、21日の初日公演のなかでも、18時以降の終盤スロットより、ヒップホップフェスでは“異色”に思われがちなCreepy Nuts、若手のホープながら10年選手の実力派であるKohjiya、そしてヘッドライナーに据えられた千葉雄喜の3組によるステージの模様を振り返っていきたい。

Creepy Nuts、“前回のリベンジ”達成? 64小節のアカペラはシーンに対する“問いかけ”に

 予防線を張る気はないのだが、筆者の所感として、Creepy Nutsとヒップホップフェスは、“混ぜるな危険”だと思い込んでいた。というのも、彼らが前回、同種のフェスに参加した今年6月開催の『STARZ』でのこと。その舞台で「Bling-Bang-Bang-Born」歌唱中、無駄な自意識が邪魔してか、なかなかシンガロングをしないフロアに向けて、R-指定が「歌えるくせに!」とけしかけて煽る姿は、SNSにてリスナーのあいだで拡散されていた通り。いわゆる“ポップス”や“メジャー枠”といった偏見的な印象が、演者とフロア双方の心を掻き乱していた気がするのだ。だからこそ、今回のステージも正直、そこまで盛り上がらないと勝手に踏んでいた。

 が、大誤算。彼らの出番前、筆者のいたステージ前方のPLATINUM AREAは、明らかに客数が増えた。しかも、本人たちが登場して最初にしたことが、ラップやDJプレイを披露するでもなく、そこそこ長尺でのMC。「フェス終盤、疲れているならいい。だが、もし元気がありながらも、“Creepy Nutsでアガるのはダサい”という自意識が邪魔しているなら、迷わず手を挙げてもらいたい」というメッセージだった。20分弱という短い持ち時間の貴重な数分を使って、しっかりと足場を固めていくという表現が正しいだろうか。

 そこから「合法的トビ方ノススメ」を披露。2010年代、多くのリスナーがこの楽曲を入り口に、ヒップホップの世界に飛び込んだことだろう。〈砕いて裂いて巻いて/焚いて吸って吐いても〉のフレーズは全被せ状態だったし、普通に“みんなが歌える曲”だった。

 そのまま、R-指定のビートに対する音ハメ、DJ松永のスクラッチに気持ちよくされたところで、次の楽曲へ。フックに登場するフレーズで、“名前は聞いたことある”と、この楽曲を思い出した人もいるのでは。真紅と黒の照明を点滅させ、視覚でも魅せるアクトとして「ビリケン」を届ける。曲中、「いいぞ」や「そのまま!」といった煽りを、誇張抜きで8小節おきくらいに挟んでくる。緊張感を途切れさせない雰囲気が、びしびしと伝わってきて仕方がない。

『THE HOPE 2024』(撮影=Daiki Miura)
Creepy Nuts(撮影=Daiki Miura)

 さらに「Bling-Bang-Bang-Born」では、開始間もなく大歓声が。客層の違いか、はたまた別の要因か。見かけで考えるのも偏見だが、筆者の横では腕にびっしりとタトゥーを入れた男子が、この曲を笑顔で歌っていたし、モニターに映る顔もなにやら楽しそう。リベンジ成功。R-指定もあのときと異なり、“歌えるじゃん……”と逆に呆気に取られたのでは。

 最後は、DJ松永がそっとステージを去り、R-指定のみで「生業」をラップ。しかもアカペラで、64小節すべてを、である。丸投げのような形となり恐縮だが、このパフォーマンスとリリックの内容については、すでにSNSで議論が落ち着いているため、あえて深くは触れないでおこう。だが、彼らがヒップホップシーンに対してどう考えているのか。Creepy Nutsの置かれた難しいポジションも含めて、あらゆる意義での問いかけがなされたステージだったと、筆者は思っている。

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