HYDEが突き詰めた完全無欠のエンターテインメント 新たな覚醒を遂げた一夜、幕張メッセ公演を振り返る

 ここまでエンタメ性をピックアップしてきたが、何よりも大事なのは「血沸き肉踊るロックンロールライヴ」であること。バンドメンバーが一丸となって放つ弩級のヘヴィネスは、かつてこの幕張メッセで観てきた海外メタルバンドの音圧に負けていない。その中央でグルーヴを操り、スクリームやグロウルを響かせるHYDEの進化も凄まじい。そのエネルギーに煽られ、随所でヘッドバンギングの嵐やサークルピットが発生。「MAD QUALIA」では自らフロアに降り立ったHYDEをダイバーたちが取り囲み、お互いが全力でぶつかり合う光景が広がっていた。

 アルバムのなかでもひときわヘヴィなメタルコアナンバー「SOCIAL VIRUS」では、HYDEがウォール・オブ・デスを指示し、フロアが真っ二つに割れる。極悪なブレイクダウンを経てカオス状態へ。初期はアウェイだったはずの対バンやフェスに挑み続け、少しずつラウドシーンのカルチャーを取り込んできたHYDEにとって、ひとつの到達点と言えるだろう。

 さらに、ライヴ終盤にはサプライズゲストとしてMY FIRST STORYのHiroを招き入れ、「夢幻」でコラボレーション。向かい合って歌うふたりの声には、先輩後輩であるとともに、同じシーンで闘う同志としてのリスペクトが溢れていた。

HYDE×Hiro(MY FIRST STORY)

 Hiroが華を添えたあと、「BELIEVING IN MYSELF」「GLAMOROUS SKY」と畳みかけ、会場はポジティブなパワーに満ちていく。そして、フィナーレを飾ったのは、VAMPSの名曲「SEX BLOOD ROCK N' ROLL」。きらびやかで賑々しいパーティーロックに合わせ、スタンディングエリアも指定席エリアも関係なく、誰もが踊り狂って最後の時を堪能する。ヘヴィにもダークにもアーティスティックにも振り切った濃密なライヴは、観客のシンガロングと笑顔で締め括られたのだった。

 フロア全体を愛おしげに見つめ、「また一緒にはっちゃけよう! 次会うまで、首洗って待ってろよ!」と熱い約束を交わしてステージをあとにしたHYDE。彼の挑戦はまだまだ終わらず、11月は約5年ぶりのワールドツアーが続く。コロナ禍で海外での活動が一時中断していたぶんまで、世界を舞台に『HYDE [INSIDE]』がさらなる覚醒を遂げるのが楽しみでならない。

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