ボカロシーンの先駆者を徹底解剖 第2回(後編):はるまきごはんが向き合う初音ミクの存在、そして見据える未来
はるまきごはんの願い「シーン側が人を選ぶような場所にならなければいいな」
ーー最後に、最近注目しているボカロPや楽曲について教えてください。
はるまきごはん:今年2月の『The VOCALOID Collection』(『ボカコレ』)で知ったǢǪさんは、遺伝子レベルで入り込んでくる音というか、初めて聴いた気がしないような懐かしさと新しさを感じました。幻想的で神秘的な曲を書く方なんですけど、「isomers」という曲が好きです。海茶さんの「なんとか鉄道の夕」という曲も今めちゃくちゃ聴いていますね。MVがドット絵なのもあって、レトロなゲームを彷彿させる雰囲気で。切なさにコミカルな部分を含ませるセンスが好きで、「なんとか鉄道の夕」は見た瞬間に心を奪われました。
あと、いえぬさんの「アマドイドリップ feat.初音ミク × 鏡音リン」。「オーバーコード」という曲が『プロセカ』(『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』)に入ったり、注目されている方なんですけど、いえぬさんは絵柄とか曲調も含めて心の奥のほうまでちゃんと入ってくる感じがするんですよね。表層的な技術ではなくて、ちゃんと心のなかまで入ってきてくれる感じが好きです。それに、今挙げたこの3人は、映像まで自分で作れる方々で。
ーー面白いですね。やっぱり共感するところがあるんでしょうか。
はるまきごはん:特に意識せずに聴いていたんですけど、あらためて考えてみたら「3人とも映像も作ってるじゃん!」って(笑)。無意識的にそういう人たちの作品に惹かれているのかもしれない。でも、最近は両方を自分でやる方が増えている気がします。
ーー『ボカコレ』や、新しい方々の曲もしっかりチェックされているんですか。
はるまきごはん:『ボカコレ』は毎回聴き手として参加していて、最近はそこで新しいボカロPに出会うことが多いですね。YouTubeの関連動画に出てきた曲を聴いたり、ニコニコ動画のランキングで聴いたりもしますけど、『ボカコレ』で楽曲との出会い方が大きく変わったと思います。
ーーボカロ文化のこれからに期待していることはありますか。
はるまきごはん:僕はクリエイティブな好奇心から始めて、音楽やアニメーションを作って、「次はこれを作りたい」の連続でここまできたので。これからも自分のような作り方をする人たちが受け入れられるシーンであってくれたらいいなと思っています。
たまに、「ボカロシーンはメジャーシーンを目指すアマチュアがいる場所」というような解釈をする人もいると思うんですけど……もちろんそういう人もいるだろうけど、ここで何かを作るのが楽しくて、居心地好いと思ってる人たちから始まったシーンだと思うんですよ。だから、その両方がいる懐の深さをずっと残したままであり続けてほしいというのが自分の願いですね。どちらかだけにはなってほしくないし、シーン側が人を選ぶような場所にならなければいいなと。
ーーご自身としても「まだまだやりたいことある」とおっしゃっていましたが、今新たに興味を持っていることがあるんですか?
はるまきごはん:新たにと言いますか、今やっと自分の技術が、次に自分がやりたいことを作れるくらいになってきたような感覚があるんです。アニメーションも最近やっとうまく作れるようになってきた感覚があるし、ここまで作れるようになったならこれも作れるかも、って。やりたいことに対して技術が追いついていないからできない、ということが結構多かったんですよね。ここからさらに自分が作りたいものに向かっていきたいと思っています。
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