岩田剛典がMATEを“Paradise”へと誘う LDHパフォーマー初ソロアリーナツアー初日を観た

 わかってんだろう? 止まれないよ……。いたずらに騒ぎ立てる必要はないと理解しつつ、これを“歴史的瞬間”と突拍子もなく断言したくなる。

 2010年、三代目 J SOUL BROTHERSとしてパフォーマーデビューして以来、俳優活動でも人気を誇る岩田剛典が、2021年、デビュー10周年を経てソロプロジェクト「Be My guest」を始動させた。同年9月15日リリースのソロデビューシングル曲「korekara」で、文字通りの“これから”へ向けてMATE(三代目JSBファンの呼称)の想像をかきたてた頃がすでに遠い過去のよう。2022年には初ツアー『Takanori Iwata LIVE TOUR 2022 “THE CHOCOLATE BOX”』(以下、『“THE CHOCOLATE BOX”』)で全国のホールを回ったが、ソロ2度目となる今回のツアー『Takanori Iwata LIVE TOUR 2024 “ARTLESS”』は、LDHのパフォーマーとしては史上初のソロでのアリーナツアー。ソロデビューからわずか2年半足らず。ダンサーがパフォーマーと呼称されるようになり、ダンスミュージックの歴史上で紛れもなくエポックメイキングな存在となったEXILE以降における、新たな偉業にまでつなげてしまったというわけだ。

 勢いが止まれないよと感じながら、でもちょっと待ってくれ。この偉業に対して、何より本人がどう考えているのかが大切。3月23日に宮城で開幕した初日公演前、メディア向けに行われた囲み取材で岩田は、“史上初”という称号について、「あまりそう思ってない」と謙遜していた。「結果的にそうなった。タイミングとして、僕が一人目だった」のだと。「伝えたいことがある」という岩田にとっては、ごく自然な流れだったのだろう。2010年のデビュー時にはまだ「夢の夢」「夢ですらない」ことが、今、「夢が叶う瞬間」となった。これはやっぱり本人しかわからない実感だろうけれど、ライブの数時間前にも関わらず、すっきりと軽妙な表情に見える岩田の中ではその実、胸踊る、静かなる緊張を湛えていたように僕は感じた。

 自身のスケッチブックを具現化したセットを建て込んだこの夢の檜舞台、一体どうやって幕を開けたか。コンセプチュアルなオープニング映像でまず客席を圧倒する演出は、爆裂的なライブステージングをシグネチャーとする三代目JSBゆかりのマナーだろう。セットリストの1曲目に据えられたのは、3月6日にリリースされたばかりの2ndアルバム『ARTLESS』からのリード曲にして、1曲目の「Paradise」だった。アルバム作品を携えたライブの醍醐味は、レコーディングで作り込まれた楽曲が、リスナーとの共通認識としてどの程度再現されるかにある。スタジオで吹き込まれた音と実際のライブステージで作られる音はもちろん別物だから。その点、ライブでパフォーマンスすることが大前提である岩田のステージングは想像を遥かに超えてくる。熱心なリスナーであるMATEを「『ARTLESS』という、まだ見ぬ、土地、場所」(※1)としての「楽園」へ誘うことを意図して書かれている「Paradise」が、セットリストの中で第1曲目に采配されることで、楽園の扉をくぐった先の景色がすぐに見えてきた。

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