ガラクタが捉える、現代を生きる若者たちの心の機微 10~20代中心に支持を広げる2024年注目バンド

 名古屋発の4ピースバンド・ガラクタが、2nd EP『ハートの隙間埋めるのは、僕の歌でありますように』を3月20日に配信リリースした。

ガラクタ – ラブレター(Official Music Video)

 ガラクタは、はる(Vo/Gt)、こた(Gt)、ひろと(Ba)、ちゅうじょう(Dr)の4人組バンド。結成は2022年。活動開始とほぼ同時期に初の楽曲「ラブレター」を発表すると、Eggsのウィークリーチャートで1位を獲得した。新しいインディーズバンドを常に探しているリスナーにいち早く発見され、バイラルヒットした形だ。その後、同年9月に1stデジタルシングルとして配信リリースされた同曲や、ライブ会場や一部店舗で販売しているデモCDもヒット。この頃の彼らは、部活の先輩や友達の助けを借りながら活動していたそうで、高校に通いつつDIYでバンド活動する中で、楽曲が全国に広がっていっているのを肌で感じ、驚いていたという(※1)。

ガラクタ – アイラブユーが足りないの(Official Music Video)

 いい流れはその後も続き、2023年3月リリースの2ndデジタルシングル「アイラブユーが足りないの」は、インフルエンサーや一般ユーザーの動画投稿がきっかけとなり広く波及。TikTokでのUGC投稿数、ストリーミング配信サービスでの楽曲の再生数、YouTubeでのMVの再生数などが加速度的に高まり、Spotifyのバイラルトップ50にチャートインした。「アイラブユーが足りないの」は、相手を思うがゆえのもどかしい気持ちをキャッチーなメロディに乗せて歌った楽曲。〈生存確認用 ストーリー更新 見るなら早く 返信ちょうだいよ〉といったSNSに絡めた等身大の表現に、メンバーと同世代の10~20代のリスナーが共感を寄せているようだ。2023年9月に3rdデジタルシングル「貴方依存症」がリリースされた際、歌詞検索サイト・歌ネットの注目度ランキング3位にランクインしていたのも、歌詞の内容に着目しているリスナーが多い証拠だろう。

 また、「アイラブユーが足りないの」リリース後には、Spotifyの月間リスナー数も急増するなど、楽曲のみならずバンド自体にも注目が集まっている。2023年5月に新栄RADSEVENで開催したリリースイベントをはじめ、自身主催のライブチケットはソールドアウト続きで、生で楽曲を聴くためにライブハウスにやってくるファンが増えているとのこと。メディアからも注目されており、今年1月には、LINE MUSICによる次世代アーティストをパワープッシュするプログラム「NEXT SPIKES」に選出された。

 そしてこのたび、2nd EP『ハートの隙間埋めるのは、僕の歌でありますように』が発表された。自主制作の1st EP『届いてくれると願ってる』以来、約10カ月ぶりのEP。はるのソフトでやさしい歌声と、弾き語り由来のフォーキーで温かみのある曲調は健在だが、前作よりもバンドサウンドの存在感が増しており、前作からのバンドの成長が窺える。また、これまでは好きな人の言動をSNS越しに伺いつつ、どこか振り回されている人の心情を歌うのみで、明確な結論を歌っていない曲も多かったが、今作では“ならば、どのように生きればいいのか”というところにまで言及している曲もある。

 1曲目は「一生片想い」。曲中で繰り返される〈一生片想いでいいや〉というフレーズから感じられるのは、想いを伝えたところで上手くいかないだろうという諦め。主人公はそんな自分を〈逃げてばかりの僕です〉と称し、〈傷つくのは勘弁〉と本音を漏らしている。サビのラストには〈「君が好き、死ぬまで一緒にいよう!」〉と鍵括弧付きの歌詞もあるが、それは夢の中での出来事。つまりこの曲の歌詞は全て主人公の心の声で、実際に起きた出来事の描写はない。

ガラクタ – 相変わらず、愛変わらず(Official Music Video)

 2曲目は「相変わらず、愛変わらず」。“男性は別れから約1カ月に後悔し始める”という一般論と、女性と男性の間に生じる後悔の時差にスポットを当てたミディアムナンバーだ。歌詞は男性目線で、相手への想いを断ち切れずにいるようだが、〈あとの祭り〉〈もう返らない、もう変えられない〉と残酷な現実を自覚している。その上で〈いつかまた出会えますように〉、〈ハートの隙間埋めるのは僕の歌でありますように〉と歌っている。

 告白する勇気がない人の歌「一生片想い」も、終わってしまった恋の歌「相変わらず、愛変わらず」も一人語りだ。J-POPでは“恋が走り出す”という表現がよくあるが、この2曲で描かれている恋は走り出す気配がない。ラブストーリーは君と僕という二者の存在があって初めて成立するものだと考えれば、君が欠落している時点で、スタートラインにすら立てていないということになるだろう。しかし、ガラクタはそういった恋をなかったことにはしない。“走り出せない恋”を歌うことで、臆病でも、情けなくても、今あなたが秘めている恋心自体がそもそも素晴らしいのだと伝えてくれている。

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