『SMTOWN』東京ドームで10万人が目撃した祭典 東方神起からRIIZEまで総勢55名が躍動

 『SMTOWN』では、公演する国に応じた楽曲のカバーも定番だ。SUPER JUNIORのYESUNGが披露したOfficial髭男dismの「Pretender」では、アンバーに染まるペンライトが上質なエッジボイスが効いた彼の歌声を穏やかに照らす。〈「君は綺麗だ」〉の歌詞を〈「E.L.F 綺麗だ」〉に替えて歌っていた姿には、会場や生配信で観ていたE.L.F(SUPER JUNIORのファンの呼称)の胸にも熱いものが感じられたのではないだろうか。

 あいみょんの「空の青さを知る人よ」では、Red VelvetのWENDYとaespaのWINTERという、各世代/グループを代表する歌姫のコラボステージが実現。天然物のように透き通るユニゾンが聴衆の耳を奪うなか、WENDYのパートをWINTERが口ずさんだり、最後には肩を寄せギャルピースを披露したり、楽しげでお茶目な姿も。この歌声を披露するにはドームという会場の規模には収まりきらないと感じるほど、もっと多くの人の耳に届くことを願うようなステージだった。

 ファンをざわつかせたのは、東方神起のCHANGMIN、SUPER JUNIORのKYUHYUN、RIIZEのSHOTAROによるYOASOBI「アイドル」のコラボステージだ。ベテランアイドルであるCHANGMIN、KYUHYUNがありのままの“アイドル”を描いたこの楽曲を歌う光景は言わずもがな、SHOTAROが歌った〈完璧じゃない君じゃ許せない〉〈誰よりも強い君以外は認めない〉というラップパートの歌詞を、常に自分自身にストイックな彼の姿を重ねて聴いた人も少なくなかっただろう。

CHANGMIN × KYUHYUN × SHOTARO

 2023年には豊富な最新作の数々で不動の音楽性の高さを再認識させたSM ENTERTAINMENTだが、2024年も序盤から新作が目白押しだ。そのひとつが、NCTメンバーのソロ作品のリリースである。

TAEYONG × JENO × HENDERY × YANGYANG × GISELLE

 NCT 127のTAEYONGは、昨年リリースしたデビューミニアルバムのタイトル曲「샤랄라 (SHALALA)」に加え、2月26日にリリース予定の2ndミニアルバムタイトル曲「TAP」を初パフォーマンス。センターステージに登場するや否やビリビリとドームの天井を揺らした悲鳴は、「TY in the house!」の合図で「イ・テヨン!」コールに切り替わる。ステージを一瞬にして掌握するカリスマ性を持つ彼が、まるで東京ドームでソロコンサートをしているような熱気と盛り上がりのまま披露した「TAP」では、最後に「声ちょうだいー!」と日本語で歓声を誘った。彼について言及するならば、今や『SMTOWN』の定番曲である、NCTのTAEYONG、JENO、HENDERY、YANGYANGとaespaのGISELLEによる「ZOO」や、NCT U “始まりの5人”が再集結した昨年リリースの「Baggy Jeans」など、タイムリミットが迫ったTAEYONGの兵役前ラストとなることも予測されるコラボステージに、想いを馳せずにはいられない。

NCT U

 さらにもうひとり、2月13日にNCTから2人目のソロデビューを果たしたのが、WayVのTENだ。シアーな衣装を纏った彼がリード曲「Nightwalker」を踊り出した瞬間、ドームは異世界の空気に包まれる。軟体動物のように動く身体は、「人間には成し得ない」と観る人が頭を抱えるほどのしなやかさだ。呼吸も忘れて惹きつけられるのは、元来の美しさだけにものを言わせるのではなく、歌やダンスという表現を極限まで高め、他者の追随を許さないほどに大成した彼だからこそ放つものがあるからだろう。高貴な猫のようにステージに寝そべりこちらを見つめる表情は、TENというアーティストを観る者の記憶に強く印象づけた。

TEN

 強烈で明るく親しみやすい魅力とクラシカルで柔らかな魅力の両面を併せ持つRed Velvetは、2022年にリリースした日本語曲「WILDSIDE」でその歌唱力を惜しみなく披露。ハイトーンが特徴的な楽曲をしっかりと歌い上げた。昨年のアリーナ公演以来、久しぶりの日本公演となることを受け、JOYは「『SMTOWN』という大きなライブで『WILDSIDE』を披露できて嬉しかったです」と笑顔でコメント。次の曲を紹介するにあたって、メンバーに振られて照れながらワンフレーズ歌う姿が、なんともかわいらしい。さらに、昨年リリースされた3rdフルアルバムタイトル曲「Chill Kill」では、メロディアスでありながらも少し不気味さも滲ませるサウンドで世界観へ引き込んでいく。クラシカルで上品な衣装にチェンジした後半には、「Feel My Rhythm」で爽やかな風を吹かせ、味わうほどに増すRed Velvetの魅力を再確認することができた。

Red Velvet

 SUPER JUNIORは、スタンド上方の壁までをジリジリと揺らす低爆音で登場。「쏘리 쏘리 (SORRY, SORRY)」では「Hey!」「Ho!」の掛け声に大きく揺れるペンライトや、HEECHULの「SUPER JUNIOR〜!」の声が、後半戦に突入した会場にさらなるガソリンを投下していた。MCでは、LEETEUKが「今日も(昨日の1日目公演と)同じように、僕たちに与えられた時間は3分です」と、進行上たった数分でMCを終えなければいけないミッションを告知。単独公演では30分弱もの時間をMCに費やす彼らが生み出した奥の手が、なんと「3分間各自が話したいことを勝手に話す」という、ある種の強硬手段だ。しかし、この日はKYUHYUNが所属している事務所・Antennaの社長が来ており、「東京と大阪でソロコンサートがあります!」と告知をし、メンバーは最年少に「ひとりだけずるい!」と言いつつも、“タイムオーバー”を勧告。さらには、SUPER JUNIOR-D&Eとしても活動するDONGHAEとEUNHYUKも、「全国ツアー!」と告知しながら叫び回る。このカオスなMCで観客を楽しませるのも、SUPER JUNIORの魅力だ。後半には大人の色気を感じさせるスーツ姿で「Black Suit」を披露し、ベテランの底なしの実力を感じさせた。

SUPER JUNIOR

 『SMTOWN』を締め括ったのは、“K-POPの帝王”こと東方神起だ。「Down」「Rebel」「呪文 -MIROTIC-」と圧巻のパフォーマンスを披露した彼らは、「素敵な先輩とかっこいい後輩たちと一緒に(ステージに)立てて嬉しいです」と話し、新たに10代のメンバーを迎え入れて、新たな顔ぶれで臨んだ今回のステージに特別な感情を抱いている様子だった。

東方神起

 総勢55名で駆け抜け、あっという間のエンディングを迎えた『SMTOWN』。今回もフィナーレを飾る「Hope from KWANGYA」では世代を超えた交流が目を引くなか、NCT 127のライブでスカウトされる以前からの憧れだという先輩・DOYOUNGとともに手を繋いで花道を歩くNCT WISHのRYOと、そんな彼を優しさに満ちた瞳で見つめるDOYOUNGの姿もカメラにしっかりと捉えられていた。

 今回の『SMTOWN』の幕を閉じたのは、最後のひとりになるまで隅々までステージを駆け回って感謝を伝えていたYUTAの一礼だ。単身で韓国に渡り、SM ENTERTAINMENT初の日本人メンバーとしてデビューして以降、さまざまな苦節を乗り越えてデビュー8年目を迎えた彼が、記念すべき10回目の開催となった東京ドーム公演で見せたその姿には、言葉では表現しきれないたくさんの想いが詰まっているように感じられた。

 今や幅広い世代が所属するSM ENTERTAINMENT だが、今回の『SMTOWN』が、世代を超えて関係性を深めるひとつのきっかけにもなったのではないだろうか。K-POPシーンの歴史を語るうえでは欠かせない彼らは、今年も世界に向けたさまざまなIPの創出を予定している。常に新時代の扉を開き、第一線を走り続けるSM ENTERTAINMENTが届けるエンターテインメントの行き先に、要注目だ。

※1:https://youtu.be/SsM4QeEdGEM

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