Paleduskが広げる“自由な感情を爆発できるエリア” 常識を砕く野心、BMTHとの共作も語る

 新世代のヘヴィミュージックを牽引している福岡発のバンド Paledusk。メタルコアやラウドロックからの影響をベースに、ヒップホップやダンスミュージックを大胆に取り入れてめくるめく展開へと昇華。カオティックながらも華やかでキャッチーな、見たことのない音楽世界を生み出している至高のバンドだ。まさに様々な趣向性のミュージックラバーが集い、踊り狂えるような理想のテーマパーク。絶えず変化と進化を遂げていくのがヘヴィミュージックであるならば、もはやヘヴィミュージックという枠組みさえ不要なほど自由自在に駆け回るPaleduskの音楽は、逆説的に今もっとも必要とされるヘヴィミュージックの在り方だということもできる。

 豪Greyscale Recordsや米SharpTone Recordsなど、海外の名門レーベルとも次々にサインしているPaleduskは、どんな意志と野望を持って音を鳴らしているのだろうか。精力的な海外公演の手応えやBring Me The Horizonとのコライトに至るまで、フロントマン KAITO(Vo)とコンポーザー DAIDAI(Gt)に話を聞いた。(信太卓実)

Paledusk / PALEHELL (Official Music Video)

「メタルと総称しないのは、出会えるドアが重くなるのが嫌だから」(KAITO)

ーーラウドロックやメタルコアが培ってきたヘヴィな肉体性だけでなく、ネットシーンやDTM以降の編集性も含めて、かなりハイブリッドに凝縮されているバンドだと思うんです。ご自身たちではPaleduskの音楽をどう感じていますか。

DAIDAI:ヘヴィミュージックの常識を広げていくサウンドを意識して作ってます。勝手なわがままなんですけど、いろんな音楽を聴いていく中で「もっとこうしたらいいのにな」って思うことも多くて、「だったらジャンルレスでいいところを集めた音楽を自分で作っちゃおう」って思ったのが始まりで。自由なスタンスで、音源によってスタイルが変わっていくようなアーティストがドンピシャ好きだったんで、自分もそれに従って作っている感じですね。

ーーDAIDAIさんの曲作りの始まり自体が、今のPaleduskのアイデンティティになっているわけですね。どういう音楽ルーツを辿ってそうなっていったんですか?

DAIDAI:もともと小学生の頃はORANGE RANGEとかをよく聴いてたんですけど、家庭教師の先生にその話をしたら「ラップ調のロックならこれも好きかもよ?」ってLinkin Parkをオススメされて。でもその時はよくわからなかったんです。そしたら今度は中学の担任がバンドでギター弾いてる人で、ハードロックとかを教わったんですよ。マキシマム ザ ホルモンも好きになったことで、Linkin Parkのよさにもだんだん気づき始めて、同時にポップソングもいろんなジャンルを好きになっていったんですけど、ギターやりたい欲が高まってコピーしてみたら、自分が下手すぎて弾きたい曲が全然弾けなかったんです。ギターを始めて半年経っても、フルで弾けた曲があまりなかったくらいで。だったらもう、苦手だなって思うパートがない曲を自分で作っちゃおうと。それがすごく楽しくなって、今もその延長戦でやっている感じですね。新しいおもちゃを手に入れたみたいな感覚でずっとやってます。

ーーそういったサウンド面はもちろん、Paleduskにはみんなで歌えるような合唱パートもよく入っているじゃないですか。ジャンルを超えるだけでなく、垣根なく聴き手が歌の中に入ってこれる感覚もあるんじゃないかと思いました。

KAITO:そうですね。僕がバンドでやりたいのって、テーマパークみたいなことなんですよ。観に来る人にとって、いろんな感情のセクションがあるライブができたらいいなって。怒りとか悲しみとか幸せとか感動とか、全部詰まっているパッケージがPaleduskのライブだったらいいよなって思ってます。

ーーそう思ったきっかけは何だったんでしょう?

KAITO:中学生の頃サッカーをやってたんですけど、腰を痛めてできなくなってしまって。「どうしよう暇だな」と思ってたところで、友達にバンドやらないかって誘われて、歌も下手だし楽器も弾けないけど、シャウトならできると思ってやることにしたんです。で、バンド始めたての頃に、地元のハードコアバンドの人がやってる洋服屋に行ったら「ライブ観に来いよ」って誘われて、ライブハウスでそのバンドのステージを目撃したんですよ。そしたら、あまりに自分が無知だったこともあって、その非日常な光景を見て食らってしまって。それから一気にバンドに夢中になって、ちゃんと決断する間もないほど自然に続けてる感じで。なんの前情報もないバンドのライブを観てそういう感覚に陥ったから、自分でバンドをやる時も、自分たちを好きでいてくれるお客さんに対していいライブをするのはもちろんですけど、たまたまその場にいた人とか、よく知らないけど初めて来たっていうお客さんのこともめちゃくちゃ考えるべきだよなって思うようになったのが大きいです。

 そうなってくると、そもそもこんな訳わかんない音楽をやってるバンドだからこそ、見た目だけで「メタルだな」とか「ハードコアだな」って思い込まれないように、初見の人に対して間口を広く持たせておきたい。自己表現を押しつけないで楽しんでもらえたら一番いいっていうか。自分たちのことをメタルと総称しないのも、本当は聴いたらハマれるかもしれないのに、メタルバンドと言うことで、僕らと出会えるはずのドアが重くて開けにくいものになってしまうのが嫌だからで。

KAITO

ーーなるほど。

KAITO:どんなに美味い飯を作っても、汚い店構えだったら人が入ってきてくれないじゃないですか。これは諦めじゃなくて、壊したいと思ってるから言えるんですけど、メタルとかハードコアのシーンって音楽は素晴らしいんだけど、先人のバンドがやってきた見た目やアートワークをなぞっているから新しいリスナーが入りにくくて、スーパーな存在になれたバンドがずっといないっていう。僕らはアンダーグラウンド大好きですけど、執着があるわけじゃないんで、バンドへの入り口をちゃんと広くしたいなってことを考えてますね。

ーーHideyoshiさんやSuchさんなど、ラッパーや歌い手のシーンともシームレスに繋がってるし、ヒップホップフェスの『THE HOPE』にも出演しているじゃないですか。そのあたりも入り口を広げるマインドの延長線上にある感覚なんでしょうか。

KAITO:そうですね。よく思うんですけど、日本でシーンやジャンル間のボーダーを作ってるのは、実はお客さんよりアーティストなんじゃないかって気がしてて。ステージで「ジャンルなんて関係ねえ」と言うバンドもいるけど、そもそもそんなことを気にして観に来る人はあまりいないはずなのに、そういうことを言われちゃうと、「このジャンルとこのジャンルはなんか違うんだ」って無意識に認識してしまうというか。そう思われないように、俺らはいい音楽さえあればシンプルにOKでいいんじゃねえかって感じです。

Paledusk - BBB feat. Such (Official Music Video)

「凸凹感がある、各々が輝く戦隊ヒーローでいいんじゃないか」(DAIDAI)

ーー曲作りでも、従来の国内バンドは海外進出に合わせて“どう海外仕様の曲にするか”で試行錯誤してきた歴史がありますけど、Paleduskははじめからその境目もない気がします。一つひとつがちゃんと国内で受け入れられて、そのまま海外に出ても盛り上がっていると思うんですけど、国内外の境目については、曲作りの際どれくらい意識しているんですか。

DAIDAI:「あの国で聴かれるためにこうしよう」っていうのは確かに考えてないですね。1つあるのは、Paleduskってすごいカオスな展開の曲でも、キャッチーなフレーズがちゃんと入っていることで。激しくテンポチェンジしまくっててもスネアの位置がおかしくない、わかりやすいリズムっていうんですかね。「人類みんながノれるな」って思えるくらいの自由さとかキャッチーさは意識してるかもしれないです。

ーーDAIDAIさんにとって人類がノれる音楽の理想ってどんなものですか。

DAIDAI:ジミ・ヘンドリックスの「Bold as Love」っていう曲ですかね。ポップスとしてもロックとしてもすごいなって思うし、自分はエモの要素も感じていて。時代関係なく色褪せない凄まじい音楽だなって思います。

ーージャンルレスっていう言葉がない時代からそれを体現していたと。

DAIDAI:そうですね。ジミヘンはギタリストとしても大好きなんですけど、「本当に1本のギター!?」って思うようなコード間のオブリだったり、ソロを弾く時のトーン、感情が向くままに乗った時のインプロは彼の真骨頂だと思うし、誰の追随も許さない、真似できない表現力だからこそ、勝つとか負けるとかの次元じゃないところまで本当に行けたギタリストだなって。自分もそれが理想で、音楽を作る者として「あいつは勝ち負けの世界から抜けたな」って思われるような無敵な存在になれればいいなって思ってます。

DAIDAI

ーーそういうソングライティングの個性の1つとして、Paleduskには従来のメタルやロックから逸脱したギターソロの気持ちよさがありますよね。ある意味では王道の弾き方なんだけど、聴かせ方が新しいというか。

DAIDAI:昔聴いたものの影響は間違いなくありますね。ギターソロのある音楽ばっかり聴いていたし、バラエティに富んだライブになるのでギターソロは大好きです。でも別にギターソロを絶対入れようと思って作っているわけでもなくて、曲のフロー的にあった方が感動的だなって思った時は入れているというか。

ーー前の世代のラウドロックバンドはニューメタルやスクリーモの影響が強かったから、あまりギターソロを入れない傾向でしたけど、そこともいい意味で違っていますし。

DAIDAI:やっぱり他と違うことをしたいっていうのが根底にあったんですよ。ハードロックとかメタルのイメージって、ボーカルが真ん中にいて、後ろの楽器隊が分厚い壁みたいに思われている気がするんですけど、そのイメージってちょっともったいないなと思ってて。もっと各々が輝く戦隊ヒーローであっていいんじゃないか、メンバーに凸凹感がある方が面白いんじゃないかと思ったので、こういう音楽でもみんなが映えるポイントがある曲にしたいなって。曲調とか、ギターソロもそういうものの1つなんですけど。

ーー面白いです。今言っていただいたことはPaleduskのビジュアルイメージにも通ずるかもしれないですね。

KAITO:楽曲と一緒で、服装も好きなものを着たらいいと思うし、自分で好きなものを選ぶってことが一番重要なんじゃないかと思っていて。真っ黒でメタルっぽい格好が本当に好きで、カッコよく着こなしてるならいいと思うんですけど、「メタルやるからとりあえず黒いの着とこう」っていうのはダサいなって。僕の中では“好きな服を着てライブする”ってことはセットなので。だってダサい服着てライブして、「物販買ってくれ!」って言うのは意味わかんないじゃないですか。みんなに買ってほしいし、カッコいいって思われたいから、曲もライブも物販もMVも全部一緒だと思ってます。

ーーKAITOさんにとって、今特に刺激になっているのはどういうアーティストなんですか。

KAITO:うーん……今の僕らのシーンに最強の影響をもたらしたという意味では、やっぱりBring Me The Horizon(以下、BMTH)ですかね。僕らが唯一見ることができている、現在進行形でトップクラスまで大きくなっていってるバンド。リンキン(Linkin Park)はチェスター(・ベニントン)がいなくなってしまったし、リンプ(Limp Bizkit)やKoRnやSlipknotは知った頃にはもう殿堂入りしてましたけど、BMTHだけはまだ天井まで行ってない状態で見れているから。そこはすげえなって思う。最初は「シャウト下手だな」とか思ってたけど、他のシャウトが上手いだけのボーカルよりも、オリヴァー(・サイクス)のこの声にしかないものをもっと聴きたいって思うようになっていって。それはチェスターやフレッド(・ダースト)にもあるんですけど、僕もボーカルとしてそうならなきゃいけないなって。もちろん声の個性にはめちゃくちゃ自信があるんですけど、みんなにモノマネされるほどのアイコンになるのは、シンガーとしてすごく重要なんじゃないかなって思います。オリヴァーは、顔を知らなくても食らうような声を、あの顔で出してるっていうすごさ(笑)。

DAIDAI:会ってもめっちゃイケメンですからね。

PALEDUSK - WIND BACK (Official Music Video)

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