AIに関する音楽団体協議会、『AIと著作権に関する考え方について(素案)』に対し文化庁へ意見提出

 『AIに関する音楽団体協議会』が、文化審議会著作権分科会法制度小委員会がとりまとめた『AIと著作権に関する考え方について(素案)』に関する意見募集に対して、2月10日に意見を提出した。

 同協議会は、音楽に関わるクリエイターやアーティストとともに活動している9団体で構成。今回は、「調和のとれた生成AIの利活用の枠組みの実現が不可欠であり、そのためには透明性の確保が欠かせない」「作風の類似する生成物を大量に出力することにより、クリエイターやアーティストの活躍の場が狭められることがあってはならない」「AI学習の素材に海賊版等の権利侵害複製物を使うことは禁止するべき」「アーティストの肖像や声を再現して生成されたディープフェイクコンテンツに対する早急な対策を講じるべき」「現行の著作権法のもとでは、営利目的の生成AIを開発するための学習利用に対して、権利者がその意思を反映させることはできない」などの意見が提出された。

項目名と意見

1.はじめに

意見:調和のとれた生成AIの利活用の枠組みの実現が不可欠であり、そのためには透明性の確保が欠かせません。
生成AIの様々な技術やサービスが文化芸術、コンテンツビジネスの健全な普及発展に寄与するためには、創造のサイクルとの調和がとれた利活用の枠組みの実現が不可欠です。素案では、G7サミットにおける「広島AIプロセス」の中で、広島プロセス国際指針・国際行動規範で触れられているAIの透明性に関することが具体的に記載されておりません(2頁)。例えば、何をAI学習の素材として利用したかなどの透明性が確保されなければ、権利侵害が生じたときに、クリエイターやアーティストが立証することは困難であり負担が大きすぎると考えます。生成AIの透明性確保のための実効性ある対策が不可欠です。

5.各論点について

(1)学習・開発段階:エ(イ)「アイデア等が類似するにとどまるものが大量に生成されることについて」

意見:作風の類似する生成物を大量に出力することにより、クリエイターやアーティストの活躍の場が狭められることがあってはなりません。
生成AIは、クリエイターやアーティストが心血を注いで生み出した音楽コンテンツを人間とは桁違いの規模、スピードで学習することができます。生成AIが急速に高性能化し普及していく中で、質の高い生成物が人間とは桁違いの量とスピードで低コストに大量生成されるようになれば、クリエイターやアーティストは自らが生み出したコンテンツを学習して性能を高めた生成AIによって活躍の場が狭められることも考えられます。素案で記載された意見のとおり、作風が類似するにとどまるものが大量に生成されることにより、「特定のクリエイター又は著作物に対する需要が、AI生成物によって代替されてしまうような事態が生じる場合、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当し得る」(20頁)という考え方を明記すべきです。

エ(オ)「海賊版等の権利侵害複製物をAI学習のために複製することについて」

意見:AI学習の素材に海賊版等の権利侵害複製物を使うことは禁止するべきです。
素案では、「海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行うといった行為は、厳にこれを慎むべき」(24頁)としていますが、これでは不適法ではないというメッセージを発信することになってしまい、権利者の利益が不当に損なわれる懸念があります。AI学習の素材に海賊版等の権利侵害複製物を使うことは「権利者の利益を不当に害することとなる」旨を明記すべきです。

(4)その他の論点について

コ「学習に用いた著作物等の開示が求められる場合について」

意見:「1.はじめに」に対する意見と同じ

6.最後に

意見:アーティストの肖像や声を再現して生成されたディープフェイクコンテンツに対する早急な対策を講じるべきです。
素案では、「著作者人格権や著作隣接権とAIとの関係において検討すべき点の有無やその内容に関する検討も含め、様々な技術の動向や、諸外国の著作権制度との調和、他の知的財産法制における議論の動向なども見据えつつ議論を継続していくことが必要である」(37 頁)としています。とりわけ、アーティストの肖像や声を再現したディープフェイクコンテンツが現実の問題として被害を生じさせており、アーティストを保護するための実効的かつ簡便な救済制度を早急に確立すべく、様々な動向を踏まえた検討の継続が不可欠と考えます。

意見:現行の著作権法のもとでは、第30条の4の規定により、営利目的の生成AIを開発するための学習利用に対して、権利者がその意思を反映させることはできません。
素案では、「AIをはじめとする新たな技術への対応については、著作権法の基本原理や、法第30条の4をはじめとする各規定の立法趣旨といった観点からの総論的な課題を含め、中長期的に議論を行っていくことが必要と考えられる。」(37頁)としています。少なくとも営利目的のAI開発のための学習利用について、権利者が意思を反映するための選択の機会を設けることについて早急な検討が必要と考えます。

以上

■「AIに関する音楽団体協議会」参加団体(団体名は五十音順)
一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会(ACPC)
一般社団法人 日本音楽作家団体協議会(FCA)
一般社団法人 日本音楽事業者協会(JAME)
一般社団法人 日本音楽出版社協会(MPA)
一般社団法人 日本音楽制作者連盟(FMPJ)
一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)
公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター(CPRA)
一般社団法人 日本レコード協会(RIAJ)
株式会社 NexTone(ネクストーン)

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