G-FREAK FACTORY、新体制ならではのグルーヴ 守るための反骨心を貫いたツアーファイナル
そして、まさかの驚きをもたらしたのは終盤の「ダディ・ダーリン」。節分だったこの日、茂木が何度も「今日は“鬼”は来ないぞ」と念を押していたにも関わらず、2番に入ったところで、鬼の面を被ったTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)がサプライズ登場。昨年の『山人音楽祭 2023』での珍事を彷彿とさせるかのように〈平和を願うそんな気持ちは〉以降のパートを一文ずつ語るように歌い上げ、最後は「鬼退治とか言ってるやつらを、返り討ちしにきた」と言って笑いを巻き起こした。
TOSHI-LOWは「いつかこの曲を笑って歌えたらいいね」と茂木に伝えていたそうだが、その提案はもしかすると「ダディ・ダーリン」の芯を強烈に食っているのではないかと、ライブを観て感じた。他国で戦争が起こっている最中の日本、あるいは北陸で震災が起こった横の関東は、今のところ平和だ。今までの「ダディ・ダーリン」には、平和と呼べるのかわからない平和を謳歌することに対してシニカルな視座が混じっていたが、この日はそれだけでなく、〈平和に気づかないほど毎日は平和〉であることを思いっきり受け入れた上で、笑いも交えて届けられたように思えた。もちろん、そんな平和がいつか破られるかもしれないという危機意識は根底にある。けど、だからこそ「今この瞬間思いきり笑いたい」という気持ちと、平和を脅かすものに抗っていこうとする気持ちには、全く矛盾がない。不動の代表曲「ダディ・ダーリン」はレベルミュージックだからこそ、その想いを正しく表現するべく、聴かせ方が更新されていくのかもしれない。それは志を共にするTOSHI-LOWと歌うことで起きた変化でもあるだろう。ジャンルも境遇も越えて、心でつながる音楽を鳴らしてきたからこそ、絶えずアクティブな存在であり続けるG-FREAKとBRAHMAN。両者が今もステージで手を取り合っていることの意義は大きい。
『山人音楽祭 2024』の開催がアナウンスされ、絆と居場所の広がりに胸を躍らせたアンコール。ラスト1曲「GOOD OLD SHINY DAYS」で、あの跳ねるようなイントロが鳴り始めると、知らない観客同士が肩を組み、輪になって踊っている光景が目に焼きついた。“同じ空間を共有している”という事実だけで、どんな相手ともつながり合うことができるライブハウス。そんなライブハウスこそがあるべき居場所だと信じて音を鳴らしてきたG-FREAK FACTORY。一歩外に出れば胸が痛むニュースばかりで、逃げ場だったはずのSNSさえ落ち着かない空間になってしまった昨今、G-FREAKとロックファンが守り続けてきたライブハウスは、やはり安息の場所なのだということを再確認できた。
ライブハウスは決してステージ上から正解を押しつける場ではなく、一人ひとりが音楽と言葉を受け取り、解釈して、それぞれの生活に持ち帰るための場所である。中身のない“正解”ばかりが横行し、議論が前へ進まない時代に、やはりライブハウスという生身の現場が希望であることは間違いない。それを守り、闘い続けるG-FREAK FACTORYがいる限り、きっとこれからも不安に負けることはない。アツいライブの余韻に浸った帰り道、そんなことを思った。
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