森雪之丞、詩集発売は「自分に喝を入れるつもりで」 “人生を変えた”布袋寅泰との出会いも明かす

 その後、出版記念朗読イベントがスタート。代官山蔦屋書店のイベントスペースには、森のトークと詩の朗読を聞きたいと集ったファンが大勢駆けつけて満席に。森は観客に向けて、これまでの活動と詩集に込めた思いを静かに語りかけた後、いよいよ詩の朗読パートへと移行した。

 まずは、森が詩集より「逃亡のような追跡」を朴訥な声で滔々と語り始めると、続けて牧野が「二月の文学」を静かに、でもひとつひとつの言葉を噛みしめるように読み上げていく。そして、猪塚が「例えば闇を太陽の形に切り取ること」を朗読。詩に描かれた“君”に向けた確かな想いの輪郭をあぶり出すかのように、深みのある声で言葉を紡ぎ出していく。礒部は「腐らない果実」を担当。時にパッと花が咲いたような明るい声で、時に切なさをぐっと押し殺しているかのような声で、言葉を空間に押し出していき、会場に詩が描こうとした恋の素晴らしさと儚さを見事に表現した。そして、森が最後に「SOKOに居た」というミステリアスながらも韻のおもしろさが織り込まれた詩を朗読。会場に駆けつけた観客は、手元にある詩集をじっくりと眺めながら、詩の世界観に思い思いに浸っていた。

 朗読が終わると、礒部は「自分がどこを読むか知らされる前に(詩集を)読んでみて、すごくお気に入りの詩があったんです。それがまさに『腐らない果実』で、すごくうれしくて」「言葉の情景が広がることがすごく楽しくて」「こんなにお客さんもすごく集中して聞いてくださって、なんて贅沢な時間なんだろうと、楽しませていただきました」とコメント。それを受けて森は「『腐らない果実』は景色をすごく細かく描いた」「この世界で腐らないものはなんだろうと考えながら、それを景色の中にはめ込んだ作品です」と、詩の世界観と制作時の思考過程を観客に明かした。

 牧野は森が作詞した「私と世界」を歌った経験があり、同楽曲の世界観なども説明しながら、今回のイベントに参加した喜びをコメント。普段は俳優として活動する猪塚は「詩を読むのは初めてなので」「なかなか新鮮な経験をさせていただきました」と語った。

 続けて、戯曲詩の朗読へ。「太陽のある国」「哲学するピーターパン」「Art oh heArt」「カーニバルの魔術師」「夢と旅の図式」の5編が披露された。森と牧野、礒部、猪塚がそれぞれ詩の中の役を演じる様は圧巻。目の前に詩の世界観が映像として浮かび上がってくるような、森が紡いだ言葉の豊かさと底深いパワーに心を打たれた時間となった。

 イベントの最後に、森は来場者に感謝の気持ちを語った。欧米のロックアーティストの逸話から、書店で詩を詠むことに憧れがあったという森は「言葉というものでこうやって、表現を楽しむことができたのなら、それはとても素敵な、神様からもらった贈り物なのかもしれないなと思います」と森らしい言葉でファンに語りかけ、トーク&リーディングイベントは盛況のうちに幕を閉じた。

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