SIRUP、Yo-Sea、林和希、Furui Riho、aimi……ジャパニーズR&B、2023年トピックから知る現在地

 去る2023年は、近年でも貴重なジャパニーズR&Bの当たり年だった。レトロやY2Kのムーブメントも受けてか、アーティストそれぞれが例年以上にR&Bという音楽に自覚的で、良い作品を残そうと切磋琢磨しているようにさえ感じられた。今回は、そんなたくましさ溢れる2023年のジャパニーズR&Bを主要なアーティスト/作品のピックアップで振り返る。数多あるトピックを掻い摘む形での紹介にはなるが、ジャパニーズR&Bの現在地を知る一助にしていただければ幸いである。

 まず特筆すべきは、メロディアスな楽曲が豊作であった点。たとえば、宇多田ヒカル「First Love」のカバーも上々だった藤田織也の「Mask In Love」は、コロナ禍で誰もが経験したマスク生活のもどかしさと、それをも乗り越えんとする健気な愛を郷愁たっぷりに歌った秀作である。また、沖縄出身のシンガーソングライターYo-Seaも、1stアルバムのリードを飾った「Moonlight」で故郷の海さながらの爽快なムードメイクを甘酸っぱい旋律と絡めながら実現させた。ちなみにこの2曲には、YouTubeでの人気も芳しいMatt Cabが制作に関わっているという共通点がある。快いメロディを求める人は2024年、彼に注目しておくと良いだろう。

藤田織也 - Mask In Love (OFFICIAL VIDEO)
Yo-Sea - Moonlight【Official Video】

 ソロアルバムを通じてオーセンティックなR&Bマナーを貫いたのは、DOBERMAN INFINITYのボーカリストとして存在感を放つKAZUKIこと林和希。「Wow」「One Day」といったメロウネスと色気滴るミドル群は元より、歌謡曲にも通ずる歯がゆいストーリーが展開するスロウ「そうじゃないの」では和製R&Bに生きる彼ならではの高潔な美学が感じられ、ひときわグッとくるものがあった。

林 和希 -「Wow」MV ( Solo Album「I」収録)
One Day
そうじゃないの

 フレッシュな面々の中では、Furui Riho、Sincereあたりのメロディセンスが特に冴えていただろうか。Furui RihoはA.G.Oがサウンドプロデュースを請け負った「ピンクの髪」を筆頭に、持ち味である愛すべき毒っ気とソリッドな音楽性を発揮したシングルを連発。一度聴いたら忘れられない緩急ある構成も手伝い、着実にファンを増やした印象がある。フューチャーファンク採用の「water」など多彩に芸を凝らしたSincereも、気品ある歌声を生かして順調な活動を展開。個人的には小気味よいサウンドが無類の幸福感を運ぶ「Keeps Beating」を全力で推したい。

Furui Riho - ピンクの髪 (Official Music Video)
Sincere - water【Official Video】
Sincere - Keeps Beating【Official Video】

 韓国の音楽プロデューサーJAKOPSとavexの共同プロジェクトから生まれたXGは、年初のリリース作「SHOOTING STAR」「LEFT RIGHT」を皮切りに大胆不敵なクオリティでマーケットを猛進。日本どころか世界を席巻している彼女たちだが、この冬届けられたR&Bバラード「WINTER WITHOUT YOU」が氷のように高い透明度を有する美しい逸品だったので、本稿でも主要作品として記しておく。

XG - SHOOTING STAR (Official Music Video)
XG - LEFT RIGHT (Official Music Video)
XG - WINTER WITHOUT YOU (Official Music Video)

 同じく視線を海外へと向けるBMSGからも昨年、REIKOなる有力アーティストがデビューを果たした。BE:FIRSTを輩出したボーイズグループ発掘オーディション『THE FIRST』で見出されたニューカマーとあって、歌唱、ダンスともにすでに卓越した完成度を誇る。まずは2000年代のダンサブルなグルーヴを引き連れたデビュー作「BUTTERFLY」で、その実力を体感すべし。

REIKO 'BUTTERFLY' Music Video

 昨年10月に1stシングル「nYc」を発表するやいなや耳目を集めたのは、23歳の新星Nephew。ニューヨークはブルックリンで生活を営む彼は、現地で得たであろう泥臭いストリートマインドと、近代のスタンダードであるオルタナティブな感覚を今様のゆとりあるフロウでアウトプットする。初のミックステープに『RNB ERA』と冠したあたりからも、日本のR&B史を動かしていこうとする強い熱意が見て取れた。

Nephew / nYc (Prod. MaffYuu from Phony PPL)

 続いて、作品ひいてはシーン全体の盛り上がりに欠かせないコラボレーションについて。秀逸な共演を挙げればきりがないが、この一年のコラボ活動が足掛かりとなってネクストステージに突入したと断言できるアーティストが二組存在する。SIRUPとaimiだ。

 SIRUPは、昨年大流行したUKガラージ風のビートにまたがった「FINE LINE」(Skaai, uin)、旧知の仲であるiriを招いたトロピカルな「umi tsuki」など、発表した多くの楽曲でコラボレーションを展開。「UMAMI」では台湾のシンガーソングライターThe Craneと、「2MANYTIMES」ではオーストラリアの新鋭、コーディ・ジョンとそれぞれ優雅なチルアウトに興じるなど海外アーティストとの交流も重ね、より遊び心と将来性に富んだキャリアへと変遷を遂げたように思う。

SIRUP - FINE LINE feat. Skaai (Prod. uin) (Official Music Video)
SIRUP - umi tsuki feat. iri (Prod. Chaki Zulu) (Official Music Video)
SIRUP, The Crane & whoosh - UMAMI (Official Music Video)

 一方のaimiは、自らの呼びかけによってEMI MARIAやJASMINEといったジャパニーズR&Bの先輩格にあたるアーティストと共同作品をドロップ。「得られたことはめちゃくちゃ多かった(※1)」と自身が振り返るこれらのコラボレーションでは、相手方の音楽性とセルフケアを重んじるaimiの柔らかいメッセージが格別のシナジーを生んだ。日本のR&Bを盛り上げるためのイベント『STAY READY』ではオーガナイズを務めるなど、バイタリティ豊かな彼女が築いた功績はあまりにも大きい。

How's The Weather?
Risk It All
(wanna vibe) with you - aimi (Lyric Video)

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