SixTONES『THE VIBES』“ほぼ”全曲レビュー 喜怒哀楽さまざまな気持ちに寄り添うアルバムに
3rdアルバム『声』のリリースを皮切りに自身最大規模のアリーナツアー『慣声の法則』と、その追加公演に位置づけられたグループ初の単独ドーム公演『慣声の法則 in DOME』を開催し、くわえて『ABARERO』『こっから』『CREAK』のシングル3枚をリリースするなど、とてつもない熱量と濃度で2023年を駆け抜けたSixTONES。2020年1月のデビュー以来、コロナ禍の影響でライブでの観客による声出しが制限され続けていた彼らだが、今年は自らの声をファンに直接伝えるため、そして念願だったファンの声を受け止めるため、ライブをはじめさまざまな活動を行ってきた。そんな生身の“声”にこだわり、外へ外へと働きかけていたSixTONESが次のテーマに掲げるのは“気持ち”、すなわち“VIBES”である。さまざまなシチュエーションで気持ちを高めてくれる“GOOD VIBES”な楽曲を詰め込んだ4thアルバム『THE VIBES』。来年1月10日のリリースを前にYouTubeで公開された“ほぼ”全曲視聴ダイジェスト映像『4th Album「THE VIBES」nonSTop digeST』によって全貌が見えてきたこのアルバムの収録曲を1曲ずつチェックしていこう。
まず、アルバムの顔となるオープニングナンバーは、ドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)主題歌で10thシングル表題曲の「こっから」。ヒップホップと生バンドのエッセンスをかけあわせた熱烈なエールソングだ。まさにアルバムは「こっから」始まると言わんばかりのファンファーレにも似た高揚感である。2曲目「Alright」は、どんなことも〈最後に笑えばAlright〉と笑い飛ばしたくなる自己肯定が高めなファンキーナンバー。2曲目にしてすでに熱気が高まっているのを感じるなか、3曲目には、本アルバムのリード曲「アンセム」。12月13日放送の『2023 FNS歌謡祭 第2夜』(フジテレビ系)でテレビ初披露となったこの楽曲のパフォーマンスを目にして思い知らされたのは、メンバーのラップスキルの高さだ。小気味よいラップパートのマイクリレーで際立つのは、メンバーそれぞれが磨き上げたフロウ(歌いまわし)の個性である。場合によっては単調に聞こえてしまいかねないラップのマイクリレーを見事にカラフルに彩りながらメンバー全員でグルーヴを生み出していくのだ。Wu-Tang ClanやNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのようなヒップホップグループをも思わせる個性と個性による相乗効果である。ここでアルバムの流れは少しダークな雰囲気に。
4曲目にセットされているのは9thシングル曲「ABARERO」。七変化するEDMサウンドと太くヘヴィなビートが不穏に響く、壮大なヒップホップチューンである。続く5曲目は、ミクスチャーロックの要素を取り入れた「Something from Nothing」。ふつふつ湧き上がるマグマのような歪んだギターが感情むき出しに暴れまわる。ここまでアッパーな楽曲が続いたアルバム前半戦から打って変わって6曲目には、人恋しい冬の季節にぴったりなバラードナンバー「Only Holy」。アルバムも中盤に差し掛かり、繰り返されるフレーズがクセになる4つ打ちのダンサブルな楽曲「DON-DON-DON」から、高速アッパーチューン「Bang Bang Banginʼ」へ。煽るようなクラップが一気にボルテージを高めていく。この2曲によるアグレッシブな中盤パートから、少し肩の力を抜いて開放的な雰囲気で“テイク・イット・イージー”の精神を楽曲にした「SPECIAL」。そして徐々に落ち着いてきた鼓動に爽やかに響く希望に満ちた10曲目の「Seize The Day」。ここからは、ラストスパート。ジャージークラブからの影響を感じるビートにオートチューンを使ったスペーシーなボーカルを乗せた11曲目「TOP SECRET」。12曲目には、11thシングルでオシドラサタデー『ノッキンオン・ロックドドア』(テレビ朝日系)主題歌の「CREAK」。荘厳なストリングスをフィーチャーしたスリリングなダンスナンバーだ。