香取慎吾、初挑戦の縦型ドラマで伝えたモノづくりにおいて大切なこと 3年ぶりに帰ってくる『仮装大賞』に寄せて

 たとえば、香取にとってそれは、撮影現場やアトリエなどにあるダンボールの裏にイラストを描くことだったのかもしれない。また、誰に見せるわけでもなく描き続けてきたスケッチブックもあった。ドラマの撮影直前まで控室で仮眠を取っていた話があちこちで語り草となっている香取。そんな多忙な日々を過ごす彼としては、少しの時間があれば睡眠に当てたほうがよっぽど「意味」があったかもしれない。

 でも、そんな貴重な時間を割いてでも絵を描き続けてきた。当時は、何の「意味」も見出すことはなかったかもしれない。しかし、だからこそ見る側の心を動かす。そこに香取がどうしても描かずにはいられなかったエネルギーが宿っているからだ。そして、そのエネルギーが大きなうねりとなって、時を経て個展開催という新しい「意味」がついてくる。

 時折、香取が仕事に対して「遊び」という言葉を使っているのも、もしかしたら最初から「意味」の部分にとらわれないようにするためかもしれない。意味がないけれど楽しいからやる。それがどれだけ尊いことか。そして、その原動力こそが、人々を熱くさせるのかを知っているからかもしれない。

 考えてみれば、創作活動のみならず、伝統的なお祭りも、エンタメと呼ばれるもの全般的にも言えそうだ。数字的な「意味」を突き詰めれば、「無駄なこと」と言われてしまってもおかしくない。しかし、その時間があるからこそ、私たちの人生は豊かになっていく。

 香取が諭した「意味がないけれど、めちゃくちゃ楽しいこと」は、生活の至るところにある。この数年間、そこから離れてしまった私たちにとって、2023年の締めくくりに開催される『仮装大賞』を楽しむというのは、そんな大切なことをあらためて噛みしめる瞬間になるのではないだろうか。

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