SIX LOUNGE、「THE FIRST TAKE」でも歌われた「リカ」はなぜ話題に? 剥き出しの想いを届ける純粋なラブソングの魅力
9月20日に4作目のアルバム『FANFARE』をリリースした大分県発の3ピースバンド SIX LOUNGE。昨年レコード会社を移籍して以降初めてのアルバムとなった同作は、環境を変えて心機一転、ギアを入れて走り続ける今の彼らの充実ぶりを物語る力作だ。その『FANFARE』に先立って、彼らが一躍注目を集めるきっかけとなったのが、アルバムにも収録されている「リカ」という楽曲である。今年3月に『Love Music』(フジテレビ系)に出演したaikoが「すごい!と思った恋愛ソングの歌詞」のひとつとしてこの楽曲を挙げ、それをきっかけにSNS上では同曲を使った動画が拡散、Spotifyのバイラルチャートでトップ10入りを果たし話題となった。
ファンならばご存じの通り、この「リカ」は新曲ではない。2015年、彼らがホームとするライブハウス、大分T.O.P.Sのコンピレーション『T.O.P.S V.A. SCRAMBLE3』に収められたのが最初で、翌年リリースされた記念すべきSIX LOUNGEの1stアルバム『東雲』にも収録された。つまり超初期の楽曲である。歌詞は今と変わらずナガマツシンタロウ(Dr)によるものだが、作曲は2015年に脱退した元メンバーの清田尚吾(現Set Free)である(ちなみに清田のXでのつぶやきによると、この曲は当時高校生だった彼がSIX LOUNGEで唯一作曲したものだという/※1)。SNSを通して過去の楽曲が掘り起こされヒットするという現象は今や珍しくなくなったが、それにしても8年も前の楽曲がリアルタイムで盛り上がっていくのを目撃するというのはなかなか不思議な感覚だ。「リカ」という楽曲がそれだけ普遍的で、時代を超えるインパクトと魅力を持っていたということだろう。
「リカ」の魅力は『Love Music』でaikoが指摘した通り、歌詞に込められた“狂気”と言っていいほどの愛のありようだ。〈僕〉と〈リカ〉の恋愛を描いたラブソングであることは間違いないのだが、その愛情の表現の仕方がちょっと度を越しているのである。〈リカ、君だけは幸せにさせないよ/一緒に地獄をみよう/2人だけ〉というフレーズは、一度聴いたら耳にこびりつくような強烈さである。
だが、この曲はそんな歪さやグロテスクさゆえに人々の耳目を引いたわけではないだろう。もっと言えば、その歪さが突き抜けた純粋さゆえのものだということが、シンプルなメロディやヤマグチユウモリ(Gt/Vo)の歌からはっきりと伝わってくるからこそ、「リカ」は多くの人の心を打ったのだと思う。剥き出しの人の気持ちというのは、客観的に見ればあまりにも生々しく、時にグロテスクにすら映る。まさにこの曲に引っかかったaikoの描く恋愛がそうであるように。〈一緒に地獄をみよう〉というのは一切をかなぐり捨てて「いくところまでいってしまおう」という覚悟であり、他のすべてがどうでもよくなるほどに愛してしまっているということだ。
その純粋すぎる純粋さは、実はSIX LOUNGEがずっと歌い続けてきたことだ。〈死ぬときは君の隣さ夢まで〉と終わる名曲「メリールー」然り、〈気が触れて 歯止めのない 愛をくれ〉と歌う「愛の荒野」然り、ナガマツの歌詞は常に「いくところまでいく」愛の姿を描き出してきた。それがヤマグチの包容力のある声で歌われることで、SIX LOUNGEの音楽は成立してきたのである。それは最新作『FANFARE』でも変わっていない。シングル『キタカゼ』のカップリングとしてリリースされていた「骨」の〈あなたがもし白い骨になっても/大好きだよあたしはあなたの事〉という壮絶な愛の宣言も、「エバーグリーン」の〈ただ僕は君を抱きしめてたいよ/もう全てが終わるまで離れないでいよう〉という決心もそう。SIX LOUNGEの愛は常に「すべてが終わる」という風景とセットで、だからこそいつだって壮絶に燃え上がっている。その意味で「リカ」は、SIX LOUNGEという表現の核そのものだったわけで、それが時を経て受け入れられていったという事実は、彼ら自身にとっても感慨深いものがあったのではないかと思う。