太陽とシスコムーン、ごまっとう、W（ダブルユー）……ハロー！プロジェクトMV一挙公開で再度注目を集める名曲たち

　モーニング娘。、ソロ、W、カントリー娘。、メロン記念日、ハロー！プロジェクト・キッズ（後の℃-ute）、Berryz工房という、2004年当時のハロプロメンバー総勢46人によって結成された全員集合ユニットがH.P.オールスターズだ。

　2000～2005年の毎年夏、ハロプロでは各グループのメンバーを選抜／交錯させたユニットの楽曲を同時リリースする“シャッフルユニット”という企画が行われていた。ただし2004年のみそれがなく、代替として年末にこのH.P.オールスターズが結成された。以降、ハロプロメンバー全員集合ユニット企画は2011年のハロー！プロジェクト モベキマス、2018年のハロプロ・オールスターズと、ちょうど7年ごとに行われている。次は2025年だろうかと期待されている。

　アイドルの集合体であるハロプロそれ自体が1曲に凝縮された「ALL FOR ONE & ONE FOR ALL!」。その歌い出しはモーニング娘。1期メンバーの中澤裕子・飯田圭織・安倍なつみ、続いて2期メンバーの保田圭・矢口真里、続いて3期メンバーの後藤真希と同時期のハロプロメンバー・稲葉貴子（元太陽とシスコムーン）、アヤカ（ココナッツ娘。）……と、つまりハロプロの歴史が歌割とリンクした構造になっている。そしてサビでは全員によるユニゾンとなり、ハロプロファンにとってこれ以上のもてなしはない。

　歌割だけでなく、曲調や歌詞もポジティブ感あふれるオーソドックスだが力強いものであり、〈夢を抱け　誰にも言うな　口にすれば　叶わぬらしい〉というフレーズ等、つんく♂哲学がきっちりと盛り込まれている。ハロプロ全体の一大テーマ曲、もしくは国歌と呼んで差し支えないだろう。

　2023年現在の視点からこのMVを観て思うことは、ここに映っている46人全員がハロプロを卒業している（正確に言えば、℃-uteが解散した2017年の時点で全員卒業）にもかかわらずハロプロは存続し続けているという、その凄さだろう。

　モーニング娘。第7期メンバーの久住小春は、アニメ『きらりん☆レボリューション』（テレビ東京系）の月島きらり starring 久住小春として、主題歌、キャラクターソングを矢継ぎ早にリリースしていた。

　「チャンス！」は4thシングル曲で、デビュー曲「恋☆カナ」に続き作曲者はヒットメーカーの織田哲郎。初期の楽曲もいいのだが、月島きらり starring 久住小春については、キャリアを積んでいくほど成長が如実にうかがえ、独特の声質に磨きがかかっていく様子がよくわかる。

　本曲の歌衣装は、最初のワンピースにギミックが仕込んであり、留め具を外すことでドレスに早着替えする。MVでもそれが確認できるし、当時のライブでもその場で実行していた。この変身ギミックにより1曲中でのエンタメストーリー感が演出され、『きらレボ』楽曲パフォーマンスの要になっていた。

　モーニング娘。が「LOVEマシーン」のブレイクにより国民的アイドルとなった2000年代、多くの男性ファンとはまた別のファン層が心惹かれていたのはミニモニ。であり、アニメタイアップの『きらりん☆レボリューション』だろう。その時の記憶を持った少女たちが成長して、現在の女性比率高めのハロプロファン層形成の一要因になったのではないか――そんなことを、この「チャンス！」をはじめとした『きらレボ』楽曲のYouTubeコメント欄での女性ファンの書き込みを読んで感じた。

　ハロプロ正規メンバーへの昇格を目指して日々レッスンに励んでいるハロプロ研修生。この「おへその国からこんにちは」はDVDシングルという形式でリリースされたもので、当時の研修生メンバー総勢28名が一挙集合して歌い踊る楽曲となっている。〈「なあみんな、へそんとこよろしく！」〉というフレーズから始まるシュールかつユーモラスな楽曲は、つんく♂独自のセンスが炸裂している。

　2013年12月のリリースから約10年経った現在から見ると非常に興味深いのは、今はハロプロ正規グループで活動しているメンバーの研修生当時の姿を確認できるというところだろう。

　現役ハロプロメンバーではモーニング娘。'23の牧野真莉愛・羽賀朱音、アンジュルムの佐々木莉佳子、Juice=Juiceの段原瑠々、つばきファクトリーの山岸理子・新沼希空・岸本ゆめの、BEYOOOOONDSの一岡伶奈がいる。卒業したメンバーでは元モーニング娘。の加賀楓、元アンジュルムの室田瑞希、元カントリー・ガールズの山木梨沙、元こぶしファクトリーの浜浦彩乃、他にも多数の顔ぶれが並んでいる。

　それだけではなく、ハロプロ正規メンバーへ昇格することなく途中で辞めていったメンバーたちの姿もここには含まれている。そういったドラマ性が1曲の映像として凝縮されているのが、このMVの最大の魅力だろう。前述したH.P.オールスターズ「ALL FOR ONE & ONE FOR ALL!」のハロプロ研修生版と言うこともできる。

　以上、お勧めMVを6本紹介した。リリース当時にリアルタイムで触れた層には懐かしく、初めて観る層には新鮮で、いずれにせよ“ハロプロ沼”にハマるには絶好の機会となるだろう今回の企画、存分に楽しんでいきたい。