斉藤和義、デビュー30周年特別企画! 30の質問で紐解く、生活や趣味にまつわる“見たことのない一面”

「音楽シリーズ」

12.レコーディングではよくパーカッションを使っていますが、特に好きな楽器はありますか?

斉藤:最近はタンバリン。タンバリンにも実はいろいろな種類があるんですけど、特にヴィンテージものに凝ってます。それこそ、この間はThe Beatlesのリンゴ・スターが使っていたのと同じ、Ludwig(ラディック)というメーカーの1960年代製のタンバリンをようやく見つけて。つくりは他のタンバリンと同じなのに、音を鳴らしてみるとやっぱり違っていて、ちゃんとThe Beatlesらしい音がするんですよ。シャカシャカと音が鳴る部分の鉄の分量や木枠の材質だったりが、音の違いに関係していると思うんですけど。ヴィンテージものを手に入れてからは、そればっかり使っていますね。

13.ギターで一番好きなパーツは?

斉藤:やっぱりピックアップですかね。ピックアップは大きく2種類あって、Fenderの作ったシングルコイルというものと、それを2つくっつけてGibsonが作ったハムバッカーというものがあるんですけど。Fenderのほうはチャキーンという鋭めな音、Gibsonのほうは太い音がします。それぞれに良さがあって、どっちも好きですね。ピックアップもヴィンテージものは音が違って、これがまたいいんですよ。1950年代製のギターについていたピックアップなんかは値段が数百万円することもあるんですけど、中に入っている磁石の強さやコイルの巻き数によって音が全然違う。持っているギターのピックアップをそういうヴィンテージ品につけ替える作業は、自分でもよくやっていますね。

14. 好きなギターのコードとその理由を教えてください。

斉藤:何ですかね……結構、日によって変わるんですよね。でも、手癖でよく押さえちゃう、響きの好きなコードはあります。普通のローコードでGを押さえたときに2弦の3フレットも一緒に押さえるやつとか、ローコードのCで1弦の3フレットも押さえるやつなんかは微妙にニュアンスが変わるので、いつも使ってますね。音楽理論がよく分からないので、正確なコード名は分からないんですけど、自分の中では勝手に「Gスペシャル」とか「ウルトラC」とかって呼んでます(笑)。

15. ギターピックで好きなものやお気に入りのものはありますか?

斉藤:好きなピックも結構変わりますね。今使ってるやつは気に入ってるんですけど、輸入が止まって手に入らなくなっちゃってて、新しいピックを作ってもらってます。この間10種類くらいサンプルをもらって、いろいろ弾き比べてやっと選んだピックで。形としてはいわゆるおにぎり型というやつです。ピックは沼にハマると大変なんですよね。どれも一長一短なので、「形がもう1mm小さかったらいいのに」とか「アコギにはいいけど、エレキだとちょっと弾きづらいな」とか「音はいいけど、減りが早くてすぐダメになっちゃうな」とか。いろいろあるんです。

16. ドラムセットで一番好きなものは?

斉藤:結構、全体が好きですけどね。細かいことを言うと、シンバルやハイハットを置くスタンドに凝ってます。これもヴィンテージだと音が違うんですよ。小さいシンバルを重ねたハイハットを支えるハイハットスタンドは、The Rolling Stonesのチャーリー・ワッツが使っていたSlingerland(スリンガーランド)というメーカーの1960年代製のものを自分で持っているんですけど、今の製品とは違ってつくりがすごくシンプル。でも、だからこそ音がいい。最近のレコーディングは、このハイハットスタンドしか使ってないですね。

 あとはシンバルを置くシンバルスタンドも、The Beatlesのリンゴ・スターが使っているLudwigの製品はつくりがすごく細かいんだけど、中身が全部真鍮(しんちゅう)なので重くて、シンバルが気持ちよく鳴る。ドラムのことはそんなに知らないですけど、ヴィンテージものは「確かに音が違うな」と分かるくらい違います。一時期、ドラマーといろいろ話す中でピンときたものを、海外のオークションとかで買い揃えましたね。

17. 多重録音をする際のマストアイテムは?

斉藤:リズムマシンです。一人で録るとき、軸となるリズムやテンポを作るためによく使ってます。最近はパソコンのソフトでもクリック音を出せるものがたくさんありますけど、それだとなんだかノれないので、自分で音楽を作るときはリズムマシンで簡単にパターンを組んじゃいます。それに合わせてベースとかを録音して、最後に生ドラムを叩いて差し替えたり、そのまま音を活かしたりすることもありますね。

 ドラムマシンも古いものと新しいもの、いろいろあって。1980年代の初期ぐらいに出たLinnDrum(リンドラム)っていう、世界初のドラムマシンを生み出したブランドの機材を持ってるんですけど、これが今聴くと何とも言えない味わいがあってすごくいいんですよ。本当のドラムの音をサンプリングして、それがパッドに割り振られて自分で好きなようにパターンを組めるんですが、当時はマシン全体の容量が少ないので、バスドラムとスネア、ハイハットの音はあっても、クラッシュシンバルとか一部の音は入っていないんです。すごくローファイでチープな音がするんだけど、逆にその感じや特有のグルーヴ感は、今の機材では全然出ない。

 そういえば、マイケル・ジャクソンの「Billie Jean」にも、このLinnDrumが使われているので、以前同じようにリズムを組んでみたことがあって。「全く同じだ!」って感心しました。

18. 多重録音の楽しい点と大変な点を教えてください。

斉藤:楽しいのは、やっぱり全部を自分ひとりでやること。ギターを弾いても、ベースを弾いても、ドラムを叩いても、全部自分の中のリズム感になるというか。自分の中のテンポの癖みたいなものがあって、ちょっとよれたり、走ったりしても、一人で録ると不思議と全部揃うんですよ。それがおもしろい。ただ、そうはいってもバンドで演奏すると、それはそれでまた楽曲の空気が変わってくるので。両方とも、違ったおもしろさがありますよね。

 逆に大変なことはその裏返しで、全部ひとりでやらないといけないことですかね。バンドでやれば「せーの」でバーンと曲の全部ができ上がるけど、多重録音は本当にプラモデルを組み立てるようにちょっとずつ楽曲を作らないといけないんで。まずは鼻歌を入れて、アコギ、エレキ、ベースを入れて、キーボードを入れて、パーカッションを入れて、ほかのシンセも入れてみようとか、順番にやっていくので、時間がかかる。でも、やりがいというか、でき上がったときの充実感もでかいんですよね。

19. 体験したことのない楽器で、弾いてみたいものはありますか?

斉藤:もうあんまり新しい楽器を始めようと思うことはなくて、ギターとかピアノとか、今やっている楽器をもうちょっとうまく弾けるようになりたいですね。最近は、ずっと使っていた古いアップライトピアノの鍵盤が上がらなくなったりして故障が増えてきたので、新しいアコースティックピアノを探しているところで。どこかにいいピアノがないかなあと思ってます。

関連記事