NOMELON NOLEMON、2人が正面衝突して生まれたアルバム『ルール』 結成から2年、ユニットとしての今を語る

ノーメロ、ユニットとしての今

 ボカロPとしても活動するツミキと、シンガーソングライターとしても活動するみきまりあによる2人組ユニット、NOMELON NOLEMONが2ndフルアルバム『ルール』を発売した。

 今作は、ルールは守るものでも壊すものでもなく「ルールは作るもの」というテーマを掲げ、自分らしく生きることを力強く歌い上げた一枚。一聴してシンセサウンドが鮮やかな曲から、シティポップ調の作品、激しいロックナンバーまで幅広く、ユニットとして充実したアルバムになったと言えるだろう。7月には初の野外フェス『JOIN ALIVE 2023』にも出演し、その勢いは増すばかり。

 両者とも作曲ができ、歌うこともできる。そんな2人が正面衝突したら何が生まれるか。NOMELON NOLEMON(以下、ノーメロ)はポップカルチャーの既存のルールや常識に囚われない。結成から3年目に突入したノーメロがいま、世の中に投げ掛けるものとは何だろうか。(荻原梓)

ツミキとみきまりあが正面衝突した時に何が生まれるかが持ち味

NOMELON NOLEMON ツミキ
NOMELON NOLEMON ツミキ

ーー2021年の結成から2年ほど経ちましたが、ここまでの手応えはどうですか?

ツミキ:積み上げてきたものが過不足なく順当に評価されてきたという実感はあります。思っていたよりあんまりとか、思っていた以上にということもなく、自分の思い描いていたものが着々といろんな人に伝わっていることが実感できてます。

ーー変にドカンとヒットしてしまうのも大変ですからね。

ツミキ:別にそれはそれで悪いことだとは思わないんですけど、自分はリスナーを選んで音楽をやっているという感覚も多少あって。大衆に向けてやっているものではもちろんあるんですけど、あくまで一人ひとりに対面で音楽を届けたいと思っているので、それは守ってこられたなと。飛び級や階段飛ばしをせずにこられたのは、僕的にはすごく良いことだったと思います。

ーーそれはまりあさんも一緒ですか?

みきまりあ:そうですね。2年間やってきて、ちゃんと作品として形になってるのはすごく嬉しいですし、SNSで私たちの楽曲を拡散してくれる方もだんだんと増えているのを実感してます。ノーメロの輪がじわじわと広がってる感じは素直に嬉しいですね。

ーー7月には北海道の野外フェス『JOIN ALIVE 2023』にも出演していました。

ツミキ:初めての参戦だったんですけど、リハーサルから観てくださる方もいたり、音を出すにつれて人が増えていくのが嬉しくて。その現象を見ながら「自分がやってきたことは間違ってなかった」と思いました。ステージで鳴ってる音を聞きつけて人が集まってくるような音楽を、自分はちゃんと演奏できてるんだと安心できたというか。

みきまりあ:私も歌いながら人がどんどん集まってくるのを実感できて嬉しかったし、なにより、野外ライブってこんなに開放的なんだと思って。心も開放的になれて、貴重な体験ができたと思います。

ーーツミキさんにとっては、このユニットはボカロとは違ってある意味で生身の人間をプロデュースする側面もあるのかなと思うのですが、そのあたりはどのような意識で取り組んでいますか?

ツミキ:ボーカロイドをやっている時は自分が歌った通りのものを歌ってくれるのが初音ミクで、それを使った音楽をやることで、自分の純度100%の音楽を届けられる感覚があったんですけど、ノーメロに関しては僕とまりあが半分半分で、自分がプロデュースしているという感覚は正直ないんです。それよりも、ツミキとみきまりあが正面衝突した時に何が生まれるかがノーメロの持ち味だと思うので、どっちがどうとか、プロデューサーみたいな役回りではないですね。

ーーその正面衝突というのは、良い意味でも悪い意味でもということですよね?

ツミキ:そうですね。めちゃくちゃ喧嘩もしますし、だけどそうやってお互いがぶつかって傷をつけ合ってきた証が今の作品なので、衝突しつつもいい方向に進んできたのは良かったと思いますし、僕自身こういうユニットを組んだのが初めてだったので、僕からは出てこないワードや音楽を、自分たちの作品として昇華できるので、そういうところ(正面衝突すること)の面白さはこの2年間ですごく感じてます。

ーーまりあさんはソロでシンガーソングライターとしても活動しているなかで、ノーメロにはどのような意識で臨んでいますか?

みきまりあ:シンガーソングライターの活動は日々感じたことを等身大のまま形にすることが多いんですけど、ノーメロは2人で作っているユニットなので、その時その時によって曲に寄り添えるように歌おうという意識は常にあります。

ーーコミュニケーションしながらの物作りに楽しさを感じたり?

みきまりあ:そうですね。今までずっと一人で音楽をやってきてバンドも一切やったことがなかったので、人と一緒に一つのものを作るということが初めてなんです。だから衝突することもあるけど、それよりも楽しい時間の方が多いので、やっていてよかったなと思います。

ーーどんな時にやりがいを感じますか?

ツミキ:僕は楽曲が誕生した瞬間に一番感じることが多いです。もちろんお客さんに聴いてもらう瞬間もそうなんですけど、2人で「こんなものが生まれると思ってなかった」って言いながら聴く瞬間が好きで。それってやっぱり2人でやってないと生まれない、出会えない感覚なので、いつもそこでガッツポーズしますね。

ーー自分一人で完結した活動をしていると、最初から完成品が頭の中で想像できてしまう面はありますよね。

ツミキ:そうなんですよ。一人だと自分の脳みそにあるものをどれだけ純度高くアウトプットできるかなんですけど、ノーメロは予想外のところから槍が飛んでくる感じが面白い。

ーー相方のまりあさんがいろんな槍を飛ばしてくると。

ツミキ:そうですね。いつもとんでもないことを言ってきたりするので。

みきまりあ:そんなことない、そんなことない!

一同:(笑)。

みきまりあ:でもそれは私も同じで、ソロじゃ歌わない曲調や歌ったことないメロディに挑戦することもできて、すごくやりがいを感じますし、ライブとかでもみんなと一緒に感動を分かち合える瞬間に達成感を感じてます。

ーー人と関わり合いながら楽しく物作りできた2年間だったということですね。そんな期間を経て完成した2ndアルバム『ルール』ですが、今作の構想はいつ頃からあったのでしょう?

ツミキ:2022年の1月にリリースした1stアルバム『POP』を作り終えた時に、僕ら2人で音楽的に感動した瞬間があって。その瞬間から2枚目を作ろうと決めてました。それでどんなアルバムを作ろうかとEPを作ったり、シングルをリリースしながら見つけたものが『ルール』というテーマです。このアルバムでは「自分たちのルールを新しく作る」ということを掲げてます。一般的に「ルールは守るもの」であって、そのアンチテーゼは「ルールは壊すもの」だと思いますけど、僕らが提示したいのは「ルールは作るもの」だということ。一人ひとりがそれぞれの新しいルールを作って、そのルールを大事にしていけばいいんじゃないかと思ってるんです。だから僕らなりのルールをみんなに提示して、それを応援してもらいたい。ポップスカルチャーにある既存のルールに囚われず、自分たちが新しく作り替えることを目指したアルバムになってます。

ーーまさにその「ルール」とタイトルされた1曲目では〈あたしはあたしらしく生きる〉と力強く歌われています。

みきまりあ:自分らしく生きていくことって、誰かに囚われずに生きていくことでもあると思うので、それは今回のアルバムのコンセプトに通じる部分だと思います。でも、そもそも自分らしく生きることって難しいことだと私は思ってて。自分らしく生きることを見失う瞬間って、生きていれば誰しも必ずあることだと思うんです。だからツミキさんが歌詞を書いてくれた時に、このフレーズを歌うのはかなりの覚悟が必要だと思いました。

ツミキ:時代がどんどん鬱屈とした空気に包まれていってる気がしていて。コロナもあったり、SNSでの誹謗中傷があったりで、これから自分がぼやけていくような時代が広がっていく気がしてるんです。それが僕、すごく怖くて。自分を表現することはいいんですけど、自分を見失いながら表現してしまうと、自分から遠ざかっていくだけだと思うんです。でも僕はそうはなりたくないし、僕の音楽を聴いてくれてる人にとって、自分を見失った表現をするということが間違った認識だと思ってほしい。匿名性が上がって簡単に何でもネットに書き込めるような、本来の自分ではない姿で表現してる今の時代に違和感を感じてます。

みきまりあ:私は「自分らしく生きています」と宣言できるほどの自信はないけれど、このフレーズに勇気づけられた一人なので、自分が歌うことで誰かに届いたらいいなと思ってますし、音楽のなかだけでも自分らしくいることで誰かに伝わるんじゃないかなと思います。

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