SUGARLUNG、2人体制ならではの柔軟さがバンドの強みに 2ndミニアルバム『Desert or Ocean』やライブへの思いを語る
ここから各地に届けていきたいーー2ndミニアルバム『Desert or Ocean』全曲解説
——では、2ndミニアルバム『Desert or Ocean』について聞かせてください。”砂漠と海”をタイトルに冠したのはどうしてですか?
エザキ:2曲目の「Answer」のMVを砂丘で撮影したんですが、その映像とリンクさせたくて。“砂漠を歩んできた”という表現が合っているかわからないけど、そういう思いをタイトルに入れたかったんですよね。そのたどり着く先が“Ocean”だといいなと。
——リアルな体験が刻まれた題名なんですね。
エザキ:そうですね。今回のミニアルバムは“再出発”がテーマなんですけど、そこにもちなんだタイトルになっていると思います。
——1曲目の「ENCORE」は疾走感に溢れたサウンドと広がりのあるメロディを軸にしたアッパーチューン。
エザキ:何曲か同時に制作を進めていた時期があって、その日の作業の終わりごろに「もう1曲作りたいな」と思って。頭にパッと浮かんだサビのメロディを口ずさみながらワンフレーズ作ってイシカワに聴かせたら、「シンプルすぎじゃない?」って言われたんですよ。自分としては「え、めっちゃいいと思うんだけど」という感じだったので、お構いなしに制作を進めて、1曲作っちゃったんです(笑)。そしたらイシカワも「いいかもね」って言ってくれて。
イシカワ:「ENCORE」みたいな邦楽ロックっぽいメロディの曲はあまりやったことがなかったので、最初聴いたときは、違和感というか、ギャップみたいなものを感じたんですよね。でも、制作が進むなかで「新鮮だな」と思うようになって。
エザキ:よかった(笑)。歌詞はまさに“再出発”のイメージですね。この曲、ライブの最後によくやってるんですよ。「ここからそれぞれの道をがんばって進んで、その先でまた会おうぜ」という。シンプルかつ強いメッセージを込めた曲になったと思います。
——続く「Answer」(『魔女に言われたい夜〜正直過ぎる品定め〜』エンディングテーマ)は、鋭利なギターサウンドが炸裂するエモーショナルなロックチューン。
エザキ:ライブで必ず演奏する「Stay What You Are」という曲があるんですが、その第2弾が欲しいと思って作ったのが、「Answer」ですね。ギターのブリッジミュートと歌から始まるというイメージがあったんですけど、イシカワの先輩でもある竹内亮太郎さんにアレンジに関わっていただいて、自分たちにはないエッセンスも加わりました。
イシカワ:僕、出身が大阪なんですけど、竹内さんはその頃からライブハウスの先輩だったんです。「Answer」のアレンジに関しては、「頭のなかで鳴ってるんだけど、より良くしたい」と思っていて。竹内さんに「間奏はギターソロじゃなくて、アンサンブルでカッコよくしたいです」と相談したら、この形になったんですよ。すごく勉強になりました。
——〈僕の正解の意味は変わらず今を鳴らしてる〉というフレーズにもグッときました。
エザキ:すごくライブ映えする曲になったと思います。「Answer」があるからこそ、セトリが締まるというか。すごく大事な曲になりましたね。
——3曲目の「rain down, lay back」はスピード感のあるビート、透明な鋭さを感じさせるサウンドが印象的でした。
イシカワ:この曲は僕が土台を作ったんですよ。今までのSUGARLUNGにはなかったというか、「こういう曲をやってないのはもったいないな」と思って提案したら採用されて。
エザキ:最初から疾走感のある楽曲って、確かにあまりやってなかったんですよね。早くライブで演奏したいです。
イシカワ:歌詞は大変だったんですけどね。最後の最後まで書けなくて、歌入れ直前まで引っ張っちゃって。
エザキ:毎回そうなんですけどね。歌詞はイシカワが担当、僕が曲の土台を作ることが多いんですけど、歌詞はいつもレコーディングの当日に上がってくる(笑)。特にこの曲の歌詞はだいぶ悩んでたよね。
イシカワ:そうだね。何だろう、ポジティブでもネガティブでもない、リアルなところを書きたかったんですよね。
——「melody」はタイトル通り、メロディの良さが際立っている楽曲だなと。
エザキ:この曲の原型は、イシカワが7年くらい前に作ったんですよ。それを自分たちでバンドアレンジして、さらにハジメタルさんにアレンジャーとして入っていただいて、また違った要素を入れてもらって。まさにタイトル通りなんですが、1回聴くと忘れられないメロディだし、ライブで歌っていても「届いてるな」というのが明確にわかるんですよ。
——イシカワさんとしては、「いつか形にしたい」という自信の楽曲だったんでしょうか?
イシカワ:前身バンドが終わって、新しいバンドをやろうと思っていた時期に作った曲なんです。SUGARLUNGを組んで、6年くらい前にも1回提出したんですけど、そのときはスルーされて。
エザキ:(笑)。
イシカワ:そのときはもっとロック的なものを追求していたから、メロディアスな曲はハジかれたのかも。その後、いろんな経験を踏まえて、今だから形にできた曲だと思いますね。
——「スターゲイザー」はドラマティックな旋律を軸にした楽曲。ラウドなサウンドとサビの解放感が気持ちいいな、と。
イシカワ:この曲も「rain down, lay back」と同じく、「SUGARLUNGにこういう曲があってもいいのにな」と思って書いた曲ですね。最初はサビのパートだけ持っていったのかな。
エザキ:二人で制作して、歌詞ができて、タイトルを決めたときに情景がパッと浮かんできて。メロディも歌詞もそうですけど、きらびやかなイメージがあるというか。けっこう音は重めなんですけど、バランスがいいんですよね。
——〈飛び込んだ新世界/君を待つのはどんな色だった?〉もそうですが、イマジネーションを刺激される歌詞だなと。これは想像上のストーリーがもとになってるんですか?
イシカワ:〈引き裂いたレコード〉という歌詞があるんですけど、実際にそんなことはしないので(笑)、もちろん実体験ではないですね。でも、心情は出てるのかな……。この曲も歌入れ当日に書き上げたんですけど、いちばん気に入ってる歌詞かもしれないです。
——続く「アムネシア」はピアノと歌だけで構成されたバラード。
エザキ:全編ピアノだけですね。他の6曲が出来上がって、「もう1曲、変化球になるような曲がほしいな」と思って。ピアノでデモを作った曲があったので、急ピッチで仕上げました。イシカワには「これは記憶喪失の歌だよ」と伝えて、歌詞を書いてもらって。
イシカワ:確か「記憶喪失と失恋」というテーマだったと思います。10代の頃の失恋とか、忘れられない恋愛を思い返して、そこからさらに膨らませて書きました。
エザキ:曲を作った時点ではテーマはなかったんだけど、メロディがすごく悲しい感じで。そのなかにも思い出が蘇るような感じがあるな、と。
ーーなるほど。それにしてもピアノと歌だけでアレンジするって、ロックバンドとしてはかなり思い切ってますよね。
エザキ:最初はビートも入れようかと思ったんですけど、ちょっと着飾ってるというか、身の丈に合ってない気がして。ピアノだけにしたほうが僕の歌も映えるだろうし、引き算のアレンジにしました。
イシカワ:その曲に合っているアレンジが一番だと思うので。僕のパートはギターですけど、何でもやりたいという気持ちが強いんですよ。ベースやシンベも弾きたいし。
——ミニアルバムの最後は「ショウメイ」。「アムネシア」から一転、生々しいギターサウンドが軸になっています。
エザキ:まさに。ボーカル、ギター、ベースのシンプルな構成だからこそ、歌が前に出ていけるような楽曲になっていて。作っているときから「この曲は最後に入れたい」と思ってました。その時点から「テーマは“ショウメイ”だな」と。いろんな意味があると思うんですよ。たとえば存在証明だったり。
——ステージの照明とか。
エザキ:そうですね。ガムシャラというか、必死で足掻いているような曲にしたいという気持ちもありました。
イシカワ:僕のなかでは1曲目の「ENCORE」の歌詞と同じようなことを歌っている気がして。「ENCORE」が陽だとしたら、「ショウメイ」は影なのかなと。共通したテーマであっても、ストーリーや感じ方がこんなに変わるのはすごく面白いし、嬉しさもありましたね。
エザキ:曲と曲のつながりを考えるのも楽しいんですよね。最近はサブスクでシャッフルしながら聴く機会も多いと思いますけど、CDで曲順通りに聴く醍醐味もあると思っていて。自分たちもCDで音楽を聴いてきた世代なので、そこにもこだわっていきたいです。
——6月以降もライブが続きます。次の展開はどうなりそうですか?
エザキ:『Desert or Ocean』の曲を各地に届けたいですし、2人とも夏フェスが大好きなので、フェスの常連になれるロックバンドになりたいです。アコースティック編成もやれるし、できることは全部やりたいですね。とにかく歌が大好きなんですよ、僕は。求めてくれる人がいる場所にどんどん出ていって、それが大きくなっていけばいいなと思ってます。
イシカワ:今回のミニアルバムはライブ映えするアッパーな曲が多いので、まずはいろんなライブハウスを回りたいと思ってます。もちろんフェスにも出たいし、将来的にはSUGARLUNGの冠で野外フェスをやりたいんですよね。
——大きな会場が似合いそうな曲が多いですからね。ライブの規模が大きくなれば、支えてくれているファンのみなさんへの恩返しにもなるだろうし。
エザキ:そうですね。思うように活動できない時期も応援してくれたし、当たり前ですけど、聴いてくれる人がいないと成り立たないんだなと実感することも多くて。特にワンマンライブのときは、音楽を続けることの喜びを感じました。よく「歌い続けてね」って言われるんですよ。もちろんずっと歌い続けるし、「みんなで一緒にデカいところに行こうぜ」という気持ちもあって。そのときは「応援していてよかったでしょ」と言いたいですね。
■リリース情報
2nd Mini Album『Desert or Ocean』
2023年5月24日(水)発売
価格/品番:1,650円(税込)/ PCCI000000012
※タワーレコード限定流通
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