ALI、怒涛の1stアルバム制作&ツアーで掴んだバンドとしての自信 孤独と向き合った日本語詞への手応えも語る

「LONELY LONELY」はドラァグクイーンとの接点が活きた1曲に

――そういう意味でALIっていうチームの進化はどうなんですか?

LEO:もともとALIは人数が多かったけど、今メンバーが3人になったことで、サポートを含めて10人近くいるっていう状態になって。いろんなことでお互いにストレスをかけているから、そういったことをケアしながら、もっと俺らも売れていかないとなって。そういうプレッシャーは常にあります……プレッシャーというより責任かな。もっともっと、食わせられるように大きくなっていかないとっていう焦りは生まれますね。

――CÉSARさんはチームALIにおける自分のポジショニングをどういうふうに考えています?

CÉSAR:現状にそんなに納得してるわけじゃないんで、さらにもっと自分のレベルを上げて活躍できたらなと思ってますね。とはいえ、入りたての頃に比べたら、だいぶなりたい自分になってこれたかなって。周りからの助言もあったり、LEOさんも別のサポートの現場に来てくれて「もっとこう動けよ」とか言ってくれたりして。それにはめっちゃ感謝してます。

LEO:2人でヒロトとマーシー(ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロト&真島昌利)みたいになれると思うので、そうなりたいんですよね。

CÉSAR:そこを目指して頑張っている感じです。

――LUTHFIさんはどうですか?

LUTHFI:LEOと出会ってからはたぶん7年くらい経つんですけど、僕のことをどう思ってるんだろうっていうのがずっと分からなかったんです。でも最近は「ALIにいていいんだ」って思えてるので、自信を持てるようになってきました。

LEO:誇りを持ってやれる一員になれたってことだよね。

――チキンも食べられるようになったし。

CÉSAR:LUTHFIさん、ライブではだいぶひょうきんさが出てきて、めっちゃファンから愛されてますね。

――さっきのLEOさんの歌の話もそうですけど、ALIらしさがかなりでき上がってきたから、その上でこの3人がどういうふうにステージに立つのか。それを作っていくんだろうなって。

LEO:日常の過ごし方から、メディアの出方まで、全部そうですね。

――それはフィーチャリングなしで日本語で歌う「LONELY LONELY」という曲にも繋がりますよね。その第一歩としてめちゃくちゃいいタイミングと座組だったんじゃないかなって思うんですけど、これはドラマの話をもらったところから制作が始まったんですか?

LEO:そうですね。アルバムを作り終えて「次は何やろう?」ってなったときに、Daft Punk『Random Access Memories』みたいな、1つのジャンルに縛ったものにしようと思ったんですよ。1stアルバムのときは分数の限界まで曲を入れて、音楽の宇宙図書館みたいなものを作りたいと思ってたんだけど、次はちゃんと何年も聴けるムードのあるアルバムを作りたいねって話していて、そのスタートが「LONELY LONELY」だったんです。ドラマからは日本語で歌ってほしいっていうオーダーが来てたんですよ。俺もこの曲に関しては日本語がいいと思ってたので、谷中(敦)さんに作詞をお願いして。

――日本語がいいと思うっていうのは、どういう理由だったんですか?

LEO:去年『紅白』(NHK紅白歌合戦)を観たんですよ。スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)も出てたし、安全地帯とか鈴木雅之さんとか、ソウルフルに歌ってるオヤジってかっこいいなと思って。日本語で歌いたいと思ったのも、そのノリです。俺も60歳くらいで『紅白』出たいなと心から思ったんですよ。自然にそう思ったからやってみたっていうか。

――そんなこと、今まで思ってなかったですよね?

LEO:思ってない……いや、思ってたけど(笑)、出たら「もっとカマしてやる!」って思ってた。でも少しずつ年齢も重ねてきて、いろんなことを見てきた結果そう思った。だから、ヒット曲を日本語で1つ作りたいなって思ったんですよね。

――谷中さんが参加することになったのは?

LEO:いつか一緒にやろうっていう約束を果たしてくれたんです。でも最初は忙しくて難しそうだったんだよね。でも、やれるように頑張って調整してくれて、2週間くらいしたら「できそう」ということになって。そこから毎日メールのやりとりをしながら1文字ずつ書いていきました。面白かったですよ。実は最初、谷中さんから送られてきたものは、ちょっと俺のイメージとは違っている部分もあったんです。でも意図を伝えたら、谷中さんもそれをちゃんと汲んでもう一回書いてくれて。

CÉSAR:歌録りの当日も来てくれて、録りながら書き直してくれたりもしました。

――そうやって会話しながら作ったっていうのことが、すごく伝わる曲になってると思いますね。あと、主題歌が決定したときのコメント(※1)を読むと、LEOさんはドラァグクイーンのカルチャーともすごく近いところにいたそうですね。そういう巡り合わせも面白いなと。

LEO:そうそう。もう亡くなったんですけど、メラニーちゃんっていうドラァグクイーンの人が、俺にとって育ての親みたいな人なんですよ。うち、母ちゃんがパリピだったし、夜の仕事していて、父親は出ていっていなかったので。母ちゃんと一緒にパーティやってるような友達がいつも家に来て、俺の面倒を見てくれたんですよ。その中のメラニーちゃんがいて、豊胸したてのときに触らせてもらったり(笑)。18~19歳くらいのときに、ちょっと社会勉強でバイトをしたくて、メラニーちゃんの店で働いたりもしていたんですよ。

――へえ。

LEO:そういう水商売の店って、つまんない客が来ると基本カラオケになるんですよ。カラオケタイムになるとボーイの俺が呼ばれて「この子は歌やってます」って歌わされる。そういう生活をしてたんです。メラニーちゃんは病気で亡くなっちゃったんだけど、『自由な女神 -バックステージ・イン・ニューヨーク-』の脚本がドラァグクイーンのカルチャーについての話だったから、そういう個人的な思いも曲に乗せました。

――そういうオファーがこのタイミングで舞い込んでくるっていうのもすごいですよね。

LEO:ドラマサイドは何も知らなかったわけですからね。

ALI - LONELY LONELY

孤独であるすべての人々とALI自身を称えた歌詞

――CÉSARさんはこの曲にはどんなふうに取り組みましたか?

CÉSAR:僕はギタリストとしてめちゃくちゃディスコに向き合ってやった感じですね。昔からディスコは大好きで、LEOさんと同じようにディスコとかソウルとかのレコードを掘ってるような少年だったんですけど、ああいう耳に残るリフをずっと弾くような曲を作りたかったんです。カッティングじゃない方向性のギターでディスコに挑もうと思ってリフを考えたりとか。昔のディスコとかソウルって、ギターが別の次元にいるような曲が多いなって思い返しながら作ったりとか。面白い曲ができたんじゃないかなと思いますね。

――LUTHFIさんは?

CÉSAR:英語の歌詞とか一緒に作ってたよね。

LUTHFI:でもほとんどカットになった(笑)。

LEO:大体、英語の歌詞は(LUTHFIと)2人で作るんですよ。けど、ツアー中に作ったこともあって、精神が結構ヘトヘトで。その中でLUTHFIが作ってきた歌詞がマジでよくなくて、1フレーズしか採用しなかった。「お前、精神磨いてこい」って言って(笑)。今回は反省だね。

――サウンド面は?

LUTHFI:フレーズがシンプルだけど、boboさんはすごくグルーヴに厳しいドラマーなので、シンプルだからこその難しさがありました。レコーディング中も怒られながらやっていましたね。それが体験できたのが勉強になりました。

LEO:スタジオでboboさんがベースを取って「こうだよ」って。めちゃくちゃ愛情持ってやってくれました。

――「LONELY LONELY」という曲名通り、孤独がひとつのテーマになっているじゃないですか。当然、ドラマの内容に寄り添っているものだと思うんだけど、それ以上の何かがあったんですか。

LEO:俺、メラニーちゃんとかが、華々しい世界にいながらもいろんなものを抱えて生きているところを見てきたんですよ。なりたい自分になるには自分を受け入れることも必要だし、ときには自分と戦いながら生きることも必要で。俺自身もメンバーもそうだと思うけど、それってやっぱり孤独だし、体も疲れる。その孤独を称えたいなと思ったんですよね。そういう意味をタイトルに込めた。最初、谷中さんはそれも変えたほうがいいんじゃないかって意見をくれたんですけど、そこだけは譲らなかったですね。世界中みんな結局は孤独だし、そういうものを称えたいなって。

――〈you〉っていう存在に向けて歌っているじゃないですか。僕はその〈you〉というのはALI自身だなってすごく思ったんですよね。ALIも今のシーンの中ですごくオリジナルなことをやっているからこそ、孤独に戦っているバンドなんだろうなって。

LEO:そうですね。観客に向けても言ってるけど、俺ら自身に対しても言っていて。俺らって、日本よりもメキシコとか海外の方がファンが多いんですよ。台湾とか行ってもめちゃくちゃライブが盛り上がっていたりして。そういうところで日本は負けてるなっていつも思うんです。俺らはずっと東京にいるけど、「本当は東京ってもっとすごいはずじゃん!」ってやっぱり思うし、そこで負けたくないなって思う。

――日本語で歌うってことについてはこれからもやっていくんですか?

LEO:やっていきたいとは思うんですけど、そうは言っても自然に湧いてくるものなので、なかなか難しいですね。そんなに慣れてることじゃないから。「LONELY LONELY」も、日本語バージョンと海外の人に向けた英語バージョン、両方作ったんですよ。俺は日本語の方が俺は好きだけど、英語バージョンの方が好きっていう人もいたよね。

CÉSAR:英語の方がALIらしいっていうのはありますし。

LEO:だから、自然に両方やれるといいなと思ってますね。

ALI LIVE AT BLUE NOTE TOKYO『LOVE, MUSIC AND DANCE 2022』"DANCE YOU, MATILDA" "VIM"

※1:https://youtu.be/PTSB3S3jZu0

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