『ぼっち・ざ・ろっく!』結束バンドが持つ楽曲の魅力は? アニメ&ロックファンを惹きつける邦楽バンド特有の“青臭いエモさ”

  このように、とりわけこの作品を特別なものにしている要因は、邦楽ロック由来のアプローチをアウトラインとしながらも、声優によるボーカルやクオリティの非常に高い演奏といった一見すると親和性を見いだすことの難しい要素を混ぜ合わせたるつぼ感ではないだろうか。

 全14曲の収録曲のなかでも、特にこのるつぼ感を抱かせるのが「ギターと孤独と蒼い惑星」と「青春コンプレックス」である。どちらも演奏テクニックとボーカルの存在感が共存しながら、相乗効果を生み出し、邦楽ロックの香りがするエモーショナルな景色を見せてくれる。そして、存在感のあるギターは、旋律を口ずさめそうなほどキャッチーであるのと同時に何度聴き返しても色褪せないほど複雑で奥深いのだ。

 また、歌詞に注目してみると「ギターと孤独と蒼い惑星」の〈殴り書きみたいな音 出せない状態で叫んだよ〉や「青春コンプレックス」の〈打ち鳴らせ 痛みの先へ さあいこう 大暴走獰猛な鼓動を/衝動的感情 吠えてみろ!〉のような、音楽へ向けられた初期衝動が隠すことなく綴られており、その不器用さも含めてエモーショナルさや青臭さをさらに演出してくれる。

 現在の日本における「ロック」や「バンド」といったキーワードから想起するサウンドイメージを裏切ることなく、既存のジャンルに当てはめきれない心地の良い違和感をはらんだ新しいロックのかたちを提示したアルバム『結束バンド』。そして、この作品のヒットは、2020年代になり2000年代以降の邦楽ロックの持つ独特なサウンドや雰囲気が、ひとつの型として概念化され始めたことの証左ではないだろうか。

 このように20年ほど前に蒔かれた種が、今になって新しく芽を出し花を咲かせていることを考えると、ロックの血筋は途絶えることなく、これからも生き続けていくことを確信させてくれる。

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