中嶋ユキノ、浜田省吾との共作曲も披露した『アコ旅』ファイナル バンドメンバーの演奏とともに伝えたピュアな歌の魅力

 ここで後半に向けオーディエンスとの距離をさらに縮めるように、どこから来たかと尋ねたり、子供の頃の愛唱歌で世代を探ったり。その流れで2021年12月〜2022年1月のNHK『みんなのうた』に起用された「ギターケースの中の僕」を披露。最後の大サビを4人のアカペラで聴かせた。そして『みんなのうた』用に書いたが選ばれなかった曲だと言い、「いつか本当の意味で『みんなのうた』になれば」と「お・ふくろうママの歌」へ。門馬がギターを弾きながら口笛を吹いたり、若森はカホンを叩きながらバードコールを鳴らしたりと、シンプルな曲ながら盛りだくさんなアレンジが楽しく、メンバーの器用さが生きた演奏になった。

 ソロデビュー曲「桜ひとひら」の前には、この曲を出した頃のアルバイト先での悔しさから日本武道館でいつか歌うと誓ったことを話し、当時から変わらない思いを吐露。レパートリーの中では最も多く歌ってきた曲だろうが、ピュアな歌の魅力は変わらないようだ。歌い終えた後の拍手がいつまでも鳴り止まなかった。

 新作リリースの際に受けた取材の中で、「実は、実話」と答えてしまい自分でツボって困ったと話したのは、本サイトでの取材だったらしい(※1)。中嶋も言った通りこの記事にはそのことは書かれていないのだが、取材の席では実際にそういうやり取りをしていた。また、ツアー前の浜田とのメールで「不安でたまらない」と送ったら「“不安”より“フアン”のことを考えよう」と返信が来たとか。そんな話で和ませてオーディエンスにスタンディングを促し、軽快な「夏のせい」へ。待ってましたと立ち上がりハンドクラップするオーディエンスの楽しそうな顔が照明で照らされた。

 中嶋がキーボードを離れアコギを持った「HAPPINESS」では門馬と小川も前に出て、ファンキーに曲を盛り上げた。中嶋と門馬がギターを持って背中合わせにポーズするなどバンドらしいシーンも見せ、60年代ポップス風の「なんでなの!?」ではオーディエンスとのコール&レスポンスが止まらない。この場にいた人は皆、ライブらしいライブが戻ってきたと実感したに違いない。

 「皆で歌を歌える日がくるなんて本当に嬉しい。ありがとうございました」とお礼を述べて歌い始めたのは浜田と共作した「新しい空の下で」。自分のことを歌詞にしたらとの浜田のアドバイスから書いたという歌詞は、生きること、愛することを掘り下げながら止まらずに進むことを歌っている。スケール感のあるバンドの演奏とともに、この日のハイライトとなった曲でライブはフィナーレを迎えた。

 アンコールは、下を向かず上を見ようと軽やかに歌う「斜め45度」、シンガロングで盛り上がった「ALL FOR ONE」、そしてライブの余韻と終わらぬ恋を描いた浜田との共作曲「時がたっても」。最後まで気持ちのこもった歌と演奏に大きな拍手が送られた。拍手と声援に手を繋いで応えた4人は、名残惜しそうに、だが満足そうにツアー最後のステージを後にした。

※1:https://realsound.jp/2023/03/post-1286556.html

■バンドメンバー
中嶋ユキノ (Vo/Key/Gt)
若森さちこ(Per/Cho)
門馬由哉(Gt/Cho)
小川悠斗(Ba/Cho)

■セットリスト
01.はじまりの鐘
02.伝わんないと意味がない
03.All or Nothing
04.虹
05.誰かにそっと
06.好きで好きで
07.時計の針
08.ギターケースの中の僕
09.お・ふくろうママの歌
10.桜ひとひら
11.夏のせい
12.HAPPINESS
13.なんでなの!?
14.新しい空の下で

EN1.斜め45度
EN2.ALL FOR ONE
EN3.時がたっても

中嶋ユキノ、浜田省吾との運命的な出会いから『新しい空の下で』に至るまで “今”を重ねていった先にある未来

シンガーソングライターの中嶋ユキノがミニアルバム『新しい空の下で』をリリースする。2003年から川嶋あいのバックコーラスを務めて…

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