TOMORROW X TOGETHERが歩みを進める新たな時代 最新ワールドツアーソウル公演を振り返る
VTRの物語の中では、禁断の飲み物を口にし、救いから絶望へと堕ちていく青年達の姿が描かれ始める。そこから続くダークで優雅な「Opening Sequence」のパフォーマンスは、「ファンの思い入れを感じた」ということでTAEHYUN・HUENINGKAIの"マンネライン"、SOOBIN・BEOMGYUの"親友ズ"のコンビによるカップルダンスとYEONJUNのソロダンスが加わった新たなバージョンで披露された。
「Anti-Romantic」「Eternally」としっとりとしてエモーショナルな楽曲が続き、休息から戦いへと会場の雰囲気がよりダークなものへと変わっていく。
初恋の喪失による絶望の感情を激しく歌った「Good Boy Gone Bad」、ラテンのリズムに乗せて若い世代特有の自意識と諦観を歌った「Tinnitus (Wanna be a rock)」、甘い誘惑に身を委ねるような、ドリーミーで怪しくスウィートな「Devil by the Window」と、どこか退廃的な雰囲気のパフォーマンスが続いた。
VTRの後は雰囲気が一変し、少しセクシーな印象のジャケット姿で「Angel Or Devil」、1stコンサートの『ACT:BOY』以来の披露となった「Ice Cream」など、明るく可愛らしい雰囲気のパフォーマンスを見せてくれた。MCでは、YEONJUNが振り付けに参加し、ファンと一緒に踊ることを想定して作ったというメンバー全員参加の「Happy Fools (feat. Coi Leray)」のダンスについて説明するくだりも。そこでコンサートを見に来ていたTOMORROW X TOGETHERの産みの親でもあるパン・シヒョクにBEOMGYUがダンスを促し、シヒョクがはにかみながら踊って見せるというレアな場面も見ることができた。
会場全体がタイトルの通りハッピーな雰囲気に包まれた「Happy Fools」の後は、「いつも僕たちを信じて支えてくれるMOAがいるからこそ、僕たちは自信を持って進めます。皆さんが僕たちを思ってくれる以上に僕たちも皆さんのことを思っていることを忘れないでくださいね」と、メンバーそれぞれがファンであるMOAと支えてくれる人たちへの感謝を述べた。
ラストは今年1月にカムバックがしたばかりの楽曲「Sugar Rush Ride」のフレッシュなパフォーマンスと共に、コンサート本編の幕が閉じた。
VTRでは「SWEET MIRAGE(甘い蜃気楼)」の文字が消え、「Farawell To Sweet Sweet Mirage」の文字と、幻の中でもがく少年たちが、何かが間違っていると本来の目的を思い出す様が描写された。ひとときの逃避である甘い誘惑に別れを告げる時が来たようだ。
最新アルバム『The Name Chapter: Temptation』のFarawellバージョンのコンセプトのような白いシャツに身を包んだメンバーが登場すると、パフォーマンスとしては初披露となる「Farewell, Neverland」でアンコールと共に新しい物語の始まりを告げた。
アンコール2曲目は、今回のコンサートのためにサプライズで用意された新曲「Blue Spring」。「僕達の青春が始まったのが3月4日(デビュー日)」と語っていた通り、デビュー前までの春とはかけ離れていたブルーな日々がMOAと出会ったことで「青春」になったという歌詞はメンバー全員書かれたもので、曲中のギターはBEOMGYUが弾いている。歌詞には今までの曲のタイトルが織り込まれているなど、メンバー達の手でファンへの感謝が込められた、ファンのための楽曲だ。
ラストの曲はデビューEP『The Dream Chapter: STAR』に収録されている「Our Summer」。暑く辛い夏の日に「君」が現れ、「君と僕」が「僕たち」に変わっていった。どこにいてもどんな季節でも、僕たちが一緒ならそこはもう輝く夏の季節になるという、「Blue Spring」とも通じるような爽やかで心温まる一曲だ。曲の終わりに「想像し続けるなら 信じ続けるなら 私たちは永遠に一緒だよ」というスローガンとともにMOAからの合唱が贈られ、メンバー達も目を潤ませていた。
星(STAR)の世界を魔法(MAGIC)で高く飛び続けた、永遠(Eternity)に続くと思われた夢(DREAM)の時代から、混沌(CHAOS)を迎えたTOMORROW X TOGETHERの旅路は、冷え切った(FREEZE)闘争と逃避(FIGHT OR ESCAPE)の時代を経験し、疲れ切って甘い誘惑(TEMPTATION)に溺れていた。しかし、そこからも逃れて(FARAWELL)ふわふわとした少年時代の夢の世界から地に足をつけ、自分の足で現実を歩いていこうとするという時代に突入するようだ。「目も開けられない風と落下の速度で恐怖に閉じ込められたとしても、MOAがいる限り、消えない星の約束がある限り僕は恐れない」というモノローグの通り、ファンと共に成長し歩んでいくというTOMORROW X TOGETHERのコンセプトと在り方が確立されたように感じられる公演だった。
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