IVE、「Kitsch」で示す自信と自己愛　デビューから一貫したコンセプトの打ち出し方

　韓国でのデビューから1年が経ち、日本はもちろん、世界でもそのファンダムを広げているIVE。1stフルアルバム『I've IVE』が4月10日にリリースされるのに先駆け、収録曲「Kitsch」のMVが、公式YouTubeチャンネルにて公開された。今回も独自の世界観を描き出しながら、メンバーの魅力を存分に引き出す楽曲に。改めて、IVEのこれまでの楽曲と新曲「Kitsch」の歌詞に描かれた世界観を振り返りながら、彼女たちが表現してきたコンセプトについて考察したい。

　IVEは2021年12月のデビュー以来、日韓で合計5枚のシングルをリリースしている。その中に収録された楽曲では、「I HAVE＝IVE」を意味するグループ名の持つ「私、そして私たちが持っているものを、IVEらしく堂々とした姿で見せる（※1）」という自信と自己愛に満ちた彼女たちならではのテーマが、歌詞の随所に描かれてきた。

　例えば、デビュー曲の「ELEVEN」。この曲の歌詞では、恋に落ちた少女の心が幻想的な色に染まっていく様子が描かれている。しかし、そこで歌われているのは、相手に想いを寄せ、大きく揺れ動く心情に苦しさや切なさを感じるような従来の恋愛ソングの世界観ではない。初めて誰かを本気で好きになったとき、自分を取り巻く世界が色鮮やかに見えた。そして、誰かを想い、輝いている自分が好き。そんな気持ちが描かれているのである。そのような表現は、〈난 몰랐어 내 맘이 이리 다채로운지（知らなかった 私の心がこんなにも色鮮やかなんだってこと）〉〈내 앞에 있는 너를　그 눈에 비친 나를　사랑하게 됐거든（目の前にいる君を 君の瞳に映る私を 愛するようになったの）〉（※3）というフレーズから読み取ることができる。

　また、2ndシングル曲「LOVE DIVE」は、「ELEVEN」の世界観を継承。サビ前の〈Narcissistic, my god i love it（自分の姿にうっとり見とれる時間も、大好きなの）〉という言葉と、鏡を見るようなダンスの振付が印象的で、恋愛を描いた歌詞の中で「自己愛」が明確に表現された。

　そして、2ndシングルのカップリング曲「ROYAL」では、「王族らしい、堂々とした」という意味を持つタイトル通り、「ELEVEN」で描いた自信に満ちた少女の美しさと自己愛をさらにビビッドに表現。〈누구보다 환하게 빛나는 그런 나인걸（誰よりも明るく輝く それは私）〉〈가장 너다운 걸 보여줄 때 that’s royal　네게 중요한 건 언제나 be yourself　어떤 순간에도 자신 있게 나아가 난（あなたが一番あなたらしくいられるとき that’s royal あなたにとって大切なのは いつもあなたらしくいること どんなときも自信を持って進むの）〉という歌詞からも分かる通り、「自分を愛して堂々と生きることで、自分らしく輝ける」というメッセージが込められている。

　3rdシングルのタイトル曲「After Like」では、恋に落ちたときの自分がアップダウンの激しい状態になってしまうことを認めながら、相手を愛する気持ちを華やかに表現。さらに、カップリング曲「My Satisfaction」も「ROYAL」と同様の路線で歌詞が書かれており、〈누구보다도 나를 믿어 난 나를 빛나게 해（誰よりも自分を信じる 私は私を輝かせるの）〉〈난 나만의 wannabe 난 날 위한 masterpiece（今の私は私がなりたい姿そのもの 自分にとっての傑作なの）〉といった数々の印象的なフレーズが登場している。以前、インタビューでWONYOUNG（ウォニョン）が「私たちが大切にしている“ラブ マイセルフ”の精神や歌詞に込められた前向きなメッセージ」とIVEの特徴を語っていたように（※2）、「My Satisfaction」では非常にポジティブなナルシシズムが描かれている。