V系シーン特有の暴れ方、ヘドバンの楽しさ 現役バンギャが考える「満身創痍でやる理由」
また、たくさんのエネルギーを使うヘドバンは、「自分はライブを楽しんでいる」とステージに示す方法の一つでもある。たとえば、DEZERTの「切断」は、一曲の中で約11秒から37秒間のヘドバンタイムが7回繰り返される曲で、合計すると、4分22秒間のうち約2分14秒間と、実に曲の半分以上の時間をヘドバンに費やすことになる。しかも、この曲はワンマンライブの終盤に披露されることが多いため、観客はすでに疲労困憊の状態だが、終盤だからこそ、ここまで積み重ねてきたライブの感動を昇華させるために頭を振らずにはいられなくなる。つまり、この曲におけるヘドバンは、この日のライブに対する観客からのアンサーにもなっているのだ。
楽曲によっては、ヘドバンすることで楽曲の放つメッセージに連帯し、一体感を楽しむこともできる。たとえば、アルルカンの「omit」は、気に入らない他者への不平不満を吐き出すような楽曲で、ヘドバンの他にも、〈ああはなりたくない〉という歌詞に合わせて中指を立てる振り付けがある。この曲に合わせてヘドバンすることで、バンドを含めた会場にいる全員と共に、日常生活で生まれた怒りを一気に発散する爽快感が味わえる。
このように、一言でヘドバンと言っても、バンドや楽曲によって様々な楽しみ方ができる。コロナ禍に入って以来、身体接触の可能性があるモッシュ全般や逆ダイ(逆ダイブ。ステージに向かって観客が飛ぶ行為)などが禁止される中、ヘドバンはほとんどのライブで許可されていた。2023年に入ってライブでの声出しが解禁され始め、少しずつ以前の空気感を取り戻しつつあるが、この3年間でヴィジュアル系バンドのライブにおける激しさや楽しさが失われなかったのは、ヘドバンがなくならなかったことが大きい。
なお、番組で「2日連続でライブに行くと首が動かなくなる」と答えるバンギャがいたように、ヘドバンが身体に多大な負担をかけていることは言うまでもない。そのため、「ヘドバンっていいよ!」などとは決しておすすめできないが、ヘドバンを楽しむ気持ちが多少なりとも伝われば幸いである。そして、長くヘドバンを楽しむためには、どれだけ煽られても決して無理をしないこと、ライブ前の準備運動やライブ後のアフターケアを行うことが大切であることも記しておきたい。
※1:https://realsound.jp/2021/10/post-877128.html
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