Karin. 高校生デビューから『純猥談』ブレイクを経て訪れた転換期 他者との繋がりが導くシンガーソングライターとしての新境地

 3月1日、シンガーソングライター Karin.の4thアルバム『私達の幸せは』がリリースされた。今作は、彼女が20代になってから初めて制作したアルバムだ。この記事では、これまでのKarin.の歩みを振り返りつつ、彼女のキャリアにおいて大きな転換点となった『私達の幸せは』について深堀りしていく。

Karin.「初恋は」Music Video

 Karin.は、無垢な歌声を誇るシンガーだが、彼女が綴る嘘のない言葉は、容赦がないほどに鋭く胸の内の心情を切り取っている。10代でリリースした作品には、一人称視点を通して歌詞が綴られている楽曲が多く、それらはまるで彼女自身が抱える等身大の心情をありのまま映し出す鏡のようであった。自分自身が置かれている孤独とまっすぐに向き合いながら、懸命に居場所を探し続けるような蒼い切実さが各楽曲に込められていて、次第にそうした彼女の音楽は数多くのリスナーから共感を集め始めていく。

 2020年12月、性愛にまつわる体験談の投稿サービス『純猥談』から生まれた2作目の短編映画『私たちの過ごした8年間は何だったんだろうね』の主題歌として、2019年リリースの「青春脱衣所」が起用されたことで、彼女の知名度は一気に押し上げられることになった。『純猥談』に寄せられる様々な体験談には、「まるで自分の話のようだ」という反響が続々と寄せられ、その共感の輪は瞬く間に大きくなっていった。無数の体験談の中から厳選して書籍化した『純猥談 一度寝ただけの女になりたくなかった』、および、その第二弾『純猥談 私もただの女の子なんだ』が大ヒットを記録したため、ネット上や書店などで一度は『純猥談』という言葉を目にしたことがある人も多いと思う。

 立て続けに、Karin.が2021年10月にリリースした楽曲「二人なら」が、同月に公開された3作目の短編映画『私もただの女の子なんだ』の主題歌に起用された。Karin.が高校生の時に制作した「青春脱衣所」とは異なり、「二人なら」は『純猥談』とのコラボを見据えて制作された楽曲である。『私もただの女の子なんだ』は、生活のため風俗で働く女子大学生が主人公の物語。〈こんな私が愛してもいいのかなって/不安も残り香になって〉という一節が狂おしいほどに深く胸を締めつけるが、その後に続く〈今までずっと一人で生きてきたものを/壊しちゃおうよ/君と二人なら要らないね〉という一節が晴れやかな余韻をもたらしてくれる。同曲は、恋する者たちが胸に抱く繊細でアンビバレントな心情に丁寧に輪郭を与えてみせた楽曲として、短編映画のヒットと相まって大きな支持を集めた。

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