ザ・キッド・ラロイ、時代と共振するジャンルレスな表現性 来日決定&アルバムも間近な“着飾らないスター”の新境地

 今はまだアルバムの全貌が見えない状態だが、上記の3曲からは現在のラロイがどのような状態になっているのかをある程度は感じ取ることができる。「Love Again」「Kids Are Growing Up (Part 1)」から垣間見えるのは、今やすっかりスターとなったラロイがもう戻ることのできない過去を見つめる姿だ。アコースティックギターをかき鳴らしながら失った愛を嘆く「Love Again」も非常に切ない仕上がりだが、サイケデリックで美しいトラックが印象的な「Kids Are Growing Up (Part 1)」で淡々と語られていく、絶大な成功を手に入れたのにも関わらず、むしろ昔よりもストレスを感じている現状を憂う姿には特に魅入られてしまう。幼い頃に憧れていたラッパーに自らがなった今、想像していたのとは違う現実と対峙していることへの戸惑いが生々しく描かれている。だが、一方の「I Guess It’s Love?」はAtlantic Starr「Am I Dreaming」(1980年)を彷彿とさせるウォームな手触りが最高のトラックで、彼自身も大きな影響を受けたというカニエ・ウェストの初期の作風を彷彿とさせる仕上がりだ。リリックにおいても、かつてこれほどまでにラロイがポジティブに愛を描いたことがあっただろうかという幸福感に満ちたものとなっており、不安を感じる一方で安心できる場所もちゃんとあるのだろうということが窺える。

The Kid LAROI - Love Again (Official Video)
The Kid LAROI - Kids Are Growing Up (Part 1) (Official Video)

 デビュー初期から彼を追いかけていた筆者にとって、今なおザ・キッド・ラロイに対しては「ジュース・ワールドの後継者」という印象が強い。それは、スタイルや音楽性という意味ではなく、ジュース・ワールドが一切飾ることなく自らの感情をエモーショナルに描ききってみせたように、ラロイもまた、虚勢を張ることなく、常にその時々の感情をありのままに剥き出しにして表現してきたということだ。「STAY」で絶大な成功を収めてもなお、どういうわけか感じてしまっている戸惑いをこのタイミングで身も蓋もなく表現するし、一方で大切な愛は全力で称えてみせる。そのリアルな姿勢こそが、TikTokや『フォートナイト』といったある種のギミック以上に、今の時代と最も共振するものであり、だからこそ、ラロイはジャスティン・ビーバーをも巻き込みながらスターダムへと駆け上がっていったのだ。その姿勢はリリースされる楽曲を聴く限りでは今なお全く変わっていない。来る『The First Time』は、そんな彼が今の自分自身をしっかりと見つめ、アルバムとして定義するという極めて重要な作品になることだろう。だからこそ、その到着が楽しみでならないのだ。

The Kid LAROI - I GUESS IT'S LOVE? (Official Video)

 また、嬉しいことに、ラロイは今年の『SUMMER SONIC 2023』への出演もアナウンスされたばかり。恐らくアルバムを引っ提げての登場という最高のタイミングとなるため、こちらも見逃せない。

※1:https://twitter.com/thekidlaroi/status/1624206791390408704

■リリース情報
ザ・キッド・ラロイ 
近日発売予定のデビューアルバム『The First Time』収録予定曲が配信中

<各曲ダウンロード&ストリーミング>
「I Guess It’s Love?」
https://TKL.lnk.to/IGuessItsLove 

「Kids Are Growing Up (Pt.1)」
https://VA.lnk.to/TheKidLAROIKAGUIA 

「Love Again」
https://TKL.lnk.to/LoveAgain

「I Can’t Go Back To The Way It Was(Intro)」
https://TKL.lnk.to/ICantGoBackToTheWayItWasIntro

ソニー・ミュージックによるザ・キッド・ラロイ公式サイト 

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