「ふたたび(with 大塚 愛)」はすごく自然な曲

――実際の曲制作は、どのように進めていったんですか？

大塚：なんとなく骨組みを作って、足らないところを水野くんに手伝ってもらって。

水野：最初はアイデアを出し合って、そこからスタジオに入って、キーボードを2台並べて、その場で歌詞を書いて……みたいな感じでした。その前に「どういう曲を作ろうか」という話をしてましたね。「キャピキャピしてないほうがいいんじゃないか」みたいな。

大塚：NGと正解を言い合って、「ここの位置に2人はいるべきだよね」みたいなものとか「これは違うよね」っていうものを明確にしてたよね。たとえばアレンジをどこまで華やかにするのかとか。「この2人でこれをやるとサムいよね」とか。

水野：あとは『ONCE ダブリンの街角で』という映画のイメージもありましたね。ちょっと切ない感じのラブストーリーなんですけど、その映画に、男性のストリートミュージシャンと女性のシンガーが楽器屋さんでセッションする場面があって。その風景がすごく温かくて良くて、せっかく男女で作るならこういう感じでできないかなみたいなことをポロッと言って。そういうところからイメージを決めていった感じですね。で、『ONCE ダブリンの街角で』の話を蔦谷（好位置）さんにしたら、蔦谷さんもすごく盛り上がって熱くなってました。

――蔦谷さんにアレンジとサウンドプロデュースをお願いしたのは？

大塚：「誰にする？」という話になって。私は以前から蔦谷さんと関わってみたいと思っていて。水野くんもいるから断られないんじゃないかなと思って名前を出しました。

水野：もともと誰かに預けてみようという話はしてましたね。せっかくだからもう一人仲間を呼ぼうというか。蔦谷さんは大塚さんのこと好きだったよね。「大塚さんの夢、見たことあります」って中学生みたいな告白してた（笑）。

――そこから蔦谷さんとも方向性を共有しながら作っていった。

大塚：そうですね。「これは嫌だ」っていうものをしっかり伝えたかな。

水野：淡々としたところはモチーフとして大事だから、そこは保ってほしいと言ったりしました。でも最初からすごく良かったと思います。

――歌詞に関してはどうでしょう？　どういうところから書いていったんでしょうか。

大塚：最初のデモのときについていた歌詞がほぼそのままなんですけど。そこからどういう設定にするか、水野くんはスタジオに入ってから全部書いてたよね。

水野：1コーラス目の言葉がハメてあって。その言葉のニュアンスでどういう景色を見たいかも、なんとなくイメージできたので、せっかくデュエットだから手紙を送り合うような形にしようということで、2番は僕が書いて。で、出したら「こういうところが男はダメなんだよね」とか言われたりして（笑）。そんなやりとりをして、楽しみながら書いてました。

大塚：私のものづくりって、だいたいサビから書いていて。タイアップがあるかないかでも変わるんですけど、今回はコラボというのもあって、あまり煮詰めすぎると範囲が狭くなっちゃうので。設定を定めず、メロディが持ってる言葉を拾い集めて、水野くんと私が歌ってる画だけを頭に置きながら書いてました。

――結果、仕上がった曲は、成熟した男女の関係から生まれるものが抽出されている感じがしました。

大塚：私は今回やってみて、男の人の方がロマンチストだなって感じました。どんなに男性の気持ちを装って書いても全然書けてなかったんだなってわかったというか。こんな言葉を入れてくるんだというか、私は絶対自分では恥ずかしくて書けないっていうところもあって。

――たとえばどの部分の歌詞ですか？

大塚：〈何度でも　愛になる〉とか〈愛は音も無く　積もるから〉みたいなのは、私は絶対言わないです。で、二人で声を重ねて歌うって、激エロじゃないですか。すごくエロいんですよ。

水野：声が毛深いって言われましたね。

大塚：水野くんって、声がすごくダンディなんです。今までのいきものがかりのアー写で見ていた水野くんのイメージと声がイコールじゃなくて。みんなびっくりすると思います。男らしいし、二人で声を重ねたらすごくエロいんですよね。

――なるほど。

大塚：あとはAメロの〈振り返らず　信じてた〉とか〈はぐれていく心を 呼び止めてよ〉って、全部他人行儀で。これは「男の人はあるあるだな」と思いました。

水野：「お前が呼べよ」ってスタジオで言われましたね（笑）。

大塚：ドラマでよく見るんですけど、よく女の人が「もう帰る！」って言って帰るじゃないですか。で、だいたい男の人は追いかけないんですよ。「追っかけろよ！」って。「だからすれ違ったんだな、この二人」って思いました。この曲、歌詞が立体的なんですよね。私、湊かなえさんの作品が好きなんですけど、湊かなえさんの作品って、一人の目線だけじゃなくて、登場人物の全部が主人公で、いろんな目線があって、過去があって現在があって、すごく立体的な物語になっているんです。そういう感じもこの曲にありますね。

――いきものがかりは吉岡聖恵さんがボーカリストですけど、HIROBAでは水野さんが自分で歌う曲もあるし、この曲は大塚さんとのデュエットであるわけですよね。「ボーカリスト・水野良樹」について、大塚さんはどう見ていましたか？

大塚：最初に水野くんが一人で歌った「幸せのままで、死んでくれ」を聴かせてもらった時にどえらいびっくりしましたね。「毛深い！」って（笑）。そこまでどんな人かを知らなかったので、歌から想像する人柄と今まで知っている感じがあまりにイコールじゃなかった。「ええ！？」っていうびっくりと、なんでこんなに歌うまいの？　とか、この声でこの歌い方の人が今まであの曲を作ってたの？　とか、いろいろ思ったけど、とりあえず「すごくいいんじゃない？」みたいな感じで。その後いろんなやりとりをする中で、すごく男らしい人なんだなって感じたので、そこから今は歌声と本人のイメージはイコールですね。

――大塚さんが歌声から感じた直感が、一緒に作業して見えた人柄と同じだったと。

大塚：声とイコールでしたね。エロいかどうかはちょっと存じ上げないですけど（笑）。

――水野さんとしてはどうでしょう？

水野：今回の大塚さんとの曲は、そもそも僕が歌わなくてもいいと思ってたんです。でも、大塚さんの声があって、だからこそカウンターとして僕がいるというのをできないかなと思ってました。蔦谷さんも現場で言ってたけど、大塚さんの声って、やっぱり華があるんです。みんなの視点が行くような声の強さを持っている。だからこそ僕がサイドにいても際立たされるというか。そういうことを今回は狙っていたと思います。

――大塚さんとのデュエットによって表現の幅が広がった感じはありますか。

水野：そうですね。一緒に歌わせてもらったから輝かせてもらってる部分もあるし、ありがたかったですね。自然なところに収まったと思います。

――最後に水野さんにとって、アルバムの中で、この「ふたたび(with 大塚 愛)」という曲はどんな位置づけになるものと言えますか？

水野：他の曲もある中で失礼な言い方になってしまうかもしれないけど、一番自然でいられるところではあるかもしれないですね。自分のホームグラウンドな感じでやれたかなって気はします。同い年で、「ある景色を見た」ってすごく面白い表現だなと思ったけど、そういうわかり合える部分がある人と楽しく作れた。『HIROBA』というアルバムの中でも、すごく自然な曲なんじゃないかなと思います。

■リリース情報
2023年2月15日（水）発売
『HIROBA』
・iTunesプレオーダーキャンペーン：https://www.sonymusic.co.jp/event/103066
・Apple MusicのPre-add、SpotifyのPre-save：https://paps.engagement.grooveforce.jp/lp/?id=2023012508472445JlsVYagHBJ&openExternalBrowser=1

初回仕様限定盤[CD+BD]
ESCL-5728～9 ¥4,180（税込）
・三方背スリーブケース仕様（初回仕様のみ）

購入はこちら：https://erj.lnk.to/Hdz67a

収録内容
[Disc1：CD]
01.ただ いま (with 橋本愛)
02.透明稼業 (feat. 最果タヒ, 崎山蒼志 & 長谷川白紙)
03.哀歌 (feat. 皆川博子, 吉澤嘉代子 & 世武裕子)
04.光る野原 (feat. 彩瀬まる, 伊藤沙莉 & 横山裕章)
05.ふたたび (with 大塚 愛)
06.幸せのままで、死んでくれ
07.僕は君を問わない (with 高橋 優)
08.ステラ2021 (feat. 重松清, 柄本佑 & トオミヨウ)
09.I
10.南極に咲く花へ (feat. 宮内悠介, 坂本真綾 & 江口亮)
11.凪 (with 高橋優)
12.YOU (with 小田和正)
13.星屑のバトン

[Disc2：Blu-ray]
01.ただ いま (with 橋本愛) Music Video
02.ふたたび (with 大塚 愛) Music Video
03.Making of HIROBA SONGS

店舗別購入特典
HIROBA応援店…オリジナルしおり
Sony Music Shop…オリジナルアナザージャケット
HMV全店（HMV&BOOKS online含む／一部店舗を除く）…オリジナルA5クリアファイル
Amazon.co.jp…Amazon.co.jp限定イベント申込用デジタルシリアルコード+メガジャケ / メガジャケ
楽天ブックス…オリジナル缶バッジ
セブンネットショッピング…オリジナルミニスマホスタンドキーホルダー
※数に限りがありますので、なくなり次第終了となります。
※上記店舗以外での配布はございません。
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Amazon HIROBA 特集ページ：https://www.amazon.co.jp/hiroba
アルバム「HIROBA」キャンペーンページ：https://www.sonymusic.co.jp/event/103066
アルバム「HIROBA」全曲試聴トレーラー：https://youtu.be/ADtD86ZpKjc