プリンス、マイケル、ビヨンセ……『スーパーボウル』ハーフタイムショーが社会に残してきたもの リアーナは音楽活動再開か

 日本時間の2月13日に『第57回スーパーボウル』が開催される。今年のハーフタイムショーにはリアーナの出演が発表されており、音楽シーンへの復活が期待されている。リアーナは2016年の『ANT』以来アルバムをリリースしておらず、2022年にリリースした「Lift Me Up」(映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』主題歌)が6年ぶりの新曲となった。その「Lift Me Up」、そして『スーパーボウル』ハーフタイムショーに出演することにより、リアーナは本格的に音楽活動を再開すると考えられる。

 NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)と『スーパーボウル』ハーフタイムショーはここ数年で徐々に変化を遂げてきている。2016年にはコリン・キャパニック選手が人種差別や警官からの不当な扱い/暴力に対する平和的な抗議を目的として、試合前の国歌斉唱で起立を拒否したことが話題になった。その結果、コリン・キャパニック選手は所属チームのSan Francisco 49ersから実質解雇された形になり、そのNFLの対応は社会問題にもなった。多くのアーティストがコリン・キャパニック選手をサポートし、NFLの多様性と社会的公正を考慮しない対応に対してストライキを敢行していた。2019年にはリアーナ、カーディ・Bがハーフタイムショーのオファーを拒否し、Maroon 5が出演。さらに、2020年にはジョージ・フロイド氏の事件を受けて、NFLは公式SNSアカウントで「私たちNFLは、以前選手たちの言葉に耳を傾けなかったことが間違っていたと認めます。そして全ての選手が抗議の声をあげ、平和的に抗議することを奨励します」と謝罪をした(※1)。

 2019年のMaroon 5のハーフタイムショーが不評に終わったNFLは、同年にジェイ・Zが率いるロック・ネイションとパートナーシップ契約を組み、ロック・ネイションがアーティスト選考やパフォーマンスのクリエイティブディレクションを指導すると発表した。コリン・キャパニック選手をサポートしていたジェイ・Zは、この契約がコリン・キャパニックを裏切る形になるのではないかと批判された際に、契約前にコリン・キャパニックとも話したと明かしている。また、ジェイ・Zは「NFLの問題は、ヒップホップが世界で最も人気なジャンルになって20年以上経つのに、まだヒップホップを流行り物だと思っていることだ」とコメントしている(※2)。ここ数年のNFLの変化を踏まえて、印象的な『スーパーボウル』ハーフタイムショー・パフォーマンスを5つ紹介したい。

Dr. Dre、Snoop Dogg、メアリー・J.ブライジ、ケンドリック・ラマー、Eminem(2022年)

 Dr. Dre、Snoop Dogg、メアリー・J.ブライジ、ケンドリック・ラマー、Eminem、そしてサプライズゲストとして50 Centとアンダーソン・パークが出演した2022年の『スーパーボウル』ハーフタイムショー。ヒップホップアーティストがハーフタイムショーに出演したのは初であり、文化的にも大きなインパクトを残した。ステージには、Dr. Dreの出身地 コンプトンの有名飲食店の看板、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアのメモリアルのレプリカ、そしてDr. DreがDJとしてのキャリアをスタートさせたクラブ Eve After Darkの看板もあり、コンプトンへの愛が込められたステージとなった。また、Eminemがパフォーマンス中に跪き、コリン・キャパニックへの敬意を払ったことも話題になった。

Dr. Dre, Snoop Dogg, Eminem, Mary J. Blige, Kendrick Lamar & 50 Cent FULL Pepsi SB LVI Halftime Show

プリンス(2007年)

 マイアミで行われた2007年の『スーパーボウル』に出演したプリンス。多くのメディアのハーフタイムショーランキングでも1位を獲得しているアイコニックなパフォーマンスは、大雨のなかで行われた。自身のヒット曲「1999」「Let’s Go Crazy」「Baby I'm A Star」「Purple Rain」以外にも、Queenの「We Will Rock You」、The Jimi Hendrix Experienceバージョンの「All Along The Watch Tower」、Foo Fightersの「Best Of You」のマッシュアップを披露。当時のハーフタイムショーのプロダクションデザイナーは、プリンスに「大雨が降っているけど大丈夫か?」と質問したところ、プリンスは「もっと強く降らせることはできるか?」と答えたという(※3)。大雨のなかで披露した「Purple Rain」のギターソロはまさに伝説的であり、まるで大雨が演出の一部のようにも思えた瞬間であった。

 Foo Fightersのデイヴ・グロールは、プリンスが「Best Of You」をカバーしたことについて、「衝撃的で、感情が溢れ出てきた。マイアミの大雨のように涙がキーボードに落ちて、この瞬間が自分の音楽キャリアにおいて最も誇れる瞬間であることに気がついた。部屋で一人でThe Beatlesの楽曲を練習していたことも、ヨーロッパ中を寒い車でツアーしたことも、手から血が出るほどドラムを練習したことも、全部この瞬間に報われた。人類で最も偉大なパフォーマーが、自分の曲を1億人以上の視聴者の前でカバーをしている」とコメントしており、プリンスが自分の曲をカバーしたことを「人生で最も偉大な実績」と歓喜していた(※4)。

Prince - Super Bowl XLI 🏈 | Halftime Show 2007 FULL SHOW HD

マイケル・ジャクソン(1993年)

 マイケル・ジャクソンが出演した1993年のハーフタイムショーは、『スーパーボウル』史上初の世界的スターのライブと言ってもいいだろう。ハーフタイムショーは1992年まで、アーティストによるライブというよりどちらかというとオリンピックの開会式のように、複数のパフォーマーが一挙に出演する形式であった。1989年にはエルヴィス・プレスリーのものまね芸人がマジックを披露したり、1991年にはディズニーキャラクターが大勢登場したり、今とは全く違うものであった。

 そのなかで、マイケル・ジャクソンが新世代のハーフタイムショーの幕開けを務めた。マイケルは、ステージに登場するやいなや90秒間微動だにせず、その間もファンが叫び続けるシーンはまさに伝説となっている。その後「Billie Jean」と「Black or White」を披露し、子供たちと「We Are The World」と「Heal the World」を合唱した。

Michael Jackson Super Bowl 1993 Performance HD

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